地球温暖化問題研究

無秩序な資源搾取のグローバル社会を問い直し、新エネルギーと新社会秩序を模索し続ける学問

CO2排出50%削減という新社会への道を探る

生命の死骸、石炭・石油との出合いがすべての始まり

 

人類は生命進化の1つの到達点にいる。人類は、生命の誕生あってこその存在なのだ。そして生命の人類への貢献はほかにもある。1つは太陽エネルギーを固定し、人類の食糧資源になっていること。もう1つは、何十億年にもわたる生命の進化の中で死んでいった生物の大量の死骸が、石油・石炭という形で地中に埋蔵されてことだ。人類史500万年にとって、その死骸の蓄積との偶然の出合いは、とても大きな出来事だったろう。石油・石炭が非常に効率のよい扱いやすいエネルギー源だったからこそ、人類は、このような巨大な文明を作り得た。文明は、人類が何十億年もの生命の営為を搾取し、使い果たすことで成り立っているともいえる。


しかしこのような人間の行動、石油・石炭などの化石燃料を大量に使うことに、問題が出てきた。生物の死骸である有機物を使った後に出る老廃物CO2が大気中にとどまると、太陽の照射によって、地球上に注がれたエネルギーが地表に閉じ込められ、地球が暖かくなってしまうという問題だ。

 

 

人間活動による化石燃料の大量使用が温暖化を生んでいた

 

地球は平均気温15℃で、昼と夜の寒暖の差があまりないのが特色だ。それはCO2の層が大気中に存在するからだ。CO2層は温室のガラスのような役割を果たし、太陽からの光を通すとともに、地表から出る熱を運ぶ赤外線を通さず大気中にとどめる。それゆえCO2層は生命を育む大きな要素ともなる。しかし反面、CO2層はその存在の大きさゆえに、地球上の気温や降水量などのエネルギー循環・移動に大きな影響を与える。


そのCO2が、おそらく化石燃料の大量使用が原因で、急激に増加しつつあるという。気候学者が南極の永久氷に溶け込むCO2濃度を、10世紀から年代を追って調べたところ、1800年代後半を境に急速に増えているという(図1-①②)。そして20世紀の気温変化を調べてみると、100年間で0.6℃上昇し、1990年代は、過去1000年で最も暖かい10年間であったという。また1950年以降に、北極の海氷の厚さは40%も減少しているという事実もわかった。


CO2濃度がこのまま増加すれば、さらに地球上の気温は上昇し甚大な影響が出ると、国連も対策に動き出し、1997年京都で行われた第3回気候変動枠組み条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議)では、法的拘束力をもったCO2などの排出量の削減目標が、国ごとに細かく決められた。CO2の排出と温暖化の現象が、科学の問題から、政治まで含む地球上すべての人間の生活に関わる問題となったのだ。化石燃料というエネルギー消費によって起こる地球温暖化といわれる現象が、人間生活にどのような影響を及ぼすのか、それは阻止できるのか、さらには、温暖化は本当に進行しているのか。これらを問うのが地球温暖化問題であり、その解決を見出そうとするのが地球温暖化問題研究だ。

 

21世紀は異常気象が頻発し環境難民が1億人とも

 

では、地球の温暖化はどんな意味をもつのだろうか。
20世紀の100年間で気温の上昇は0.6℃にすぎないが、このまま推移すると、2050年までで予測値は最高で2.5℃、2100年でも同じく6℃近くになるという(図2)。


もともとCO2そのものに毒性はないから、たとえ温暖化が起こっても、水・エネルギー・経済力があれば問題ないという考え方も少なくない。しかし、1℃の上昇であっても、そこに内在する太陽エネルギーは膨大だ。ペルー沖でわずか0.5℃水温が上昇するエルニーニョ現象でさえ、世界中に異常気象を巻き起こす。それを考えれば、海水温が0.5℃上昇したとされる20世紀後半、この20~30年に頻発した異常気象が温暖化によるものという可能性は強く、さらに上昇率が高くなる21世紀には、台風・干ばつ・豪雪といった異常が一層頻発するかもしれない。2100年には海水位が最高で約1m上昇するとされ、そうなると多くの島や海抜ゼロメートル地帯が水没し、それによる「環境難民」が1億人にもなるといわれる。また、農作物の障害、熱中症の増加やマラリアの拡大、その延長での様々な都市インフラへの影響などを考えると、経済的波紋もはかりしれない。つまり、現代の人類とりわけ先進国は、生命が育み、かつ生命を育んだ環境を自らの欲望のために使い切り、地球環境を崩壊し、絶滅を招く悪業に手を染めているともいえる。

 

 

GDP低下という危惧の中、CO2削減をいかに実現するか

 

その中で、学問としての地球温暖化問題研究は、既成の学問がそれぞれの方法論や立場から、温暖化に潜む問題の分析や解決策、あるいはその問題のもととなる状況認識をするところから、ばらばらに生まれてきた。その最初が、地球科学の中の水気圏科学、とくに気候学による気候変化の指摘だ。それを受けて1988年、UNEP(国連環境計画)とWMO(世界気象機関)によってIPCC(気候変動に関する政府間パネル)という世界の研究者を集めた委員会が作られた。IPCCは90年、95年、2001年に、2100年までの温暖化予測とリスク影響の予測、およびCO2削減提案を行い、それによって学問のフレームが決定づけられ、予測、影響、政策、エネルギー・技術という目標に、各学問分野の研究者が参画することになった。


こんなフレームで始まった研究であるが、その最大のポイントは、95年のIPCC報告で「CO2を直ちに50‐70%削減する必要がある」と提案されたにもかかわらず、その実現をめざした97年の京都会議が、紛糾の末、2008年から2012年の間に先進国全体で5.2%という削減目標で終わったこと、さらにアメリカのように後になって決定内容を拒否する国が出たことだ。CO2排出の1%削減はGDP(国内総生産)も1%下降させるという認識もあり、また代替エネルギー技術もまったく不十分だ。さらには、人間生活への影響のみならず温暖化するという認識自体も予測の域を出ないため、その実行への合意は取りにくい。地球温暖化問題研究はこのような困難な状況の中で、いかにCO2を削減させるか、その削減目標はどんな割合にするか、そのときどんな社会・生活の豊かさ・用いる技術を想定するのか等について、答えを用意しようとする。いわば「温暖化阻止のための社会・環境工学」だ。

 

 

炭素税という政策を考えつつも、CO2の出ない車を作り

限られた資源のうまい利用法を生み出そう

 

温暖化阻止のための社会・環境工学の特色は、その枠組みが緩やかで学際性があり、研究者たちの多くが温暖化研究以外の専門分野を自分の主専攻の学問にもつ、ということだ。とりわけ影響リスクやエネルギー・技術の研究でその傾向が強く、たとえば燃料電池や水素自動車の研究では、機械工学、材料工学、応用化学、電気工学等の学問での活躍が目立つ研究者が多い。また、とくに文系の研究で、単なる分析にとどまらない、政策決定の参考となるような成果が求められることも、従来の学問の考え方と異なる。経済学ではここから、実際に人間に行動をさせる実験経済学という新分野も発展した。さらに、水素自動車の工学的研究にモチベーションを与える社会的仕掛けとして、一般車のCO2排出に課税する炭素税を考案したりもする。つまり具体的な対策技術を研究する一方で、その研究の価値を高める社会科学も研究する柔軟さと多様さをもつ。この多様さゆえに、分野を越えた研究者の共同プロジェクトも一般的。文系・理系の枠を越えることも多く、広い視野での知識が培われる。これは必ずしも1つの専門を究めた研究者だけでなく、学生であっても先端的な成果を上げられる可能性にもなっている。


京都議定書は、会議から6年経った2003年9月現在、発効はロシアの批准を待つのみになった。日本も08年からの5年間で1990年のレベルから6%削減という目標を達成しなければならない。そこでは本格的に新技術が求められ、また、排出権取引や炭素税などでは文系スペシャリストへのニーズも高まるだろう。さらに森林ビジネスなど、これまでにない環境系ビジネスも生まれることになろう。そしてこの学問は近い将来、地球温暖化とエネルギーを考える中で、温暖化ばかりでなく、残り40年といわれる石油や、世界共有の資源をどのように分かち合うのか、新たな世界像と、拠って立つ倫理までも考える学問となるに違いない。

 

トップアスリート ~鉄人・達人・ホープ 

  気候モデル研究


●鉄人
住 明正  
1948生 東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構
【気候力学】地球温暖化は実際に起きているが、いたずらに恐れるべきではないということを証明するためには、温暖化問題予測のツールとして信頼できる気候モデルが必要だ。そのため、限界のあった従来型の数値モデルではなく新しいモデルを開発し、気候変動のメカニズムを追求している。その一方で温暖化に伴う政治経済的な対応策や、情報提供の方法などについても考察を進めている。気象庁予報部の勤務経験もあり、日本の気候予測研究を今日のレベルへと大きく前進させた功労者である。


●達人
松野太郎
1934生 海洋研究開発機構/元北海道大学
【水気圏科学】地球の自転によって大気中に引き起こされる圧力波は、気圧の変動を招き冷夏や暑夏の原因になる。この圧力波の解析で、国際的にも著名。現在は文部科学省のプロジェクト「地球フロンティア研究システム」のリーダーとして、地球環境の変動の予測モデルを構築中。


●達人
真鍋淑郎
1931生  プリンストン大学
【水気圏科学】1976年に世界初の地球温暖化のモデルを作り、その名を馳せる。日本にまだ大型コンピュータがなかった時代に渡米し、コンピュータを駆使した気候モデル研究を続けてきた。


●達人
木村龍治
1941年生 元東京大学海洋研究所
【地球流体力学】地球の大気や海洋の流体現象をさまざまな室内実験を用いてわかりやすく紹介する。地球物理学の重鎮竹内均が修士論文を見て「日本の地球物理学に凄いスターが現れた」と言ったという伝説の持ち主。ユニークな語り口で学生にも人気。


●鉄人
中島映至
1950生 東京大学 大気海洋研究所 気候システム研究系 気候モデリング研究部門
【水気圏科学】大気中の埃(エアロゾル)は太陽の光を反射したり、雲ができやすくしたりするため、地球を寒冷化させる。このエアロゾルの種類による温暖化・寒冷化への影響をモデリングと観測の両面から研究。高校時代はF.L.ライトの写真集が好きで、研究者にならなかったら建築家になっていたとも。


●鉄人
木元昌秀
1957生  東京大学 大気海洋研究所 気候システム研究系 気候変動現象研究部門
【水気圏科学】水が地球の大気水圏を様々な形で循環する過程を、流体力学・熱力学などに基づいて数値的にシミュレートする画期的な大気大循環モデルを開発。統計では明らかになりにくいメカニズムを数値実験から分析し、長期予測モデルの精度向上に役立てようとしている。


 

  気候メカニズム研究


●鉄人
福田正己 

1944生 元北海道大学、アラスカ大学
【凍土学、氷雪学】シベリアの真ん中、ヤクーツクに広がる針葉樹林(タイガ)に観察小屋を建て、日ロ40人の研究者とともに森林火災とCO2の関係を探る研究を1999年から続けている。詳細なデータ分析の結果、火災の頻発によるCO2の発生が、温暖化の原因になる可能性があることを示唆。さらに火災の結果、地中に閉じ込められていたメタンが大気中に出てくるので、温暖化にさらに拍車をかける危険があることも指摘した。火災の発生をとらえるために人工衛星からの撮影も行うが、ベースはあくまでフィールド調査。東京大院生時代に宗谷丘陵で地質調査を行ったのを皮切りにアラスカ、カナダ、南極と極寒の地を渡り歩き、永久凍土の研究を続けた。シベリアへはショウユとワサビを必ず持って行き、トナカイの刺し身に舌鼓を打つ。


●鉄人
中澤高清 

1947生  東北大学 客員教授、海洋研究開発機構
【高層気象学】海外の計測結果に頼っていたCO2濃度の計測法を独自に開発。精度の高いデータを世界に発信し、それまで遅れていた計測の分野で日本が世界と肩を並べることになった。1979年以来、月に一度の割合で、航空機による日本上空の温室効果ガスの観測を続けているほか、日本とオーストラリアや北米間を往復する定期コンテナ船に依頼して大気採集を実施し大気成分の分析をするなど多くの手法で正確なデータを収集する。世界的に見ても早い段階から温室効果ガスの研究に取り組み始めた。当初は、研究手法はすべて自分で考えねばならなかったという苦労も。


●鉄人
中根周歩
1947生   元広島大学 
【森林生態学】カナダの亜寒帯林で、土壌の水分や温度、落ち葉の量や腐る量などのデータから森林と大気間のCO2収支を表す式を作成。温暖化の影響でCO2を吸収する森林が発生源に変わり、温暖化を更に加速させる可能性をモデル計算で明らかにした。全国の学校が参加して酸性雨の観測を行う「100校プロジェクト」を積極的に支援する。


●達人
田中正之
1935生 東北工業大学工学部 環境エネルギー学科 特任教授、東北大学名誉教授
【大気放射学】温室効果ガスとエアロゾル(大気中の微細粒子)の研究を続けてきた。北半球と南半球では北半球の方がCO2が多いという計測結果を世界で初めて示したほか、地球エネルギー収支の計算法の開発などに大きな業績がある。


●達人
角皆静男
1938生 北海道大学名誉教授
【地球化学】大陸棚が大気中のCO2を大量に吸収して外洋に押し出していることを発見、「大陸棚ポンプ」を提唱。海洋におけるCO2の挙動や温暖化との関わりの先駆的研究となった。

 

  影響リスク研究


●鉄人
三村信男 

1949生 茨城大学  広域水圏環境科学教育研究センター、地球変動適応科学研究機関
【地球環境工学】温暖化による海面上昇で南太平洋島国・ツバルが水没するという発表は衝撃的であると同時に、世の中の関心を温暖化に引きつけるきっかけとなった。現在起きている急激な海水の浸入は必ずしも温暖化によるものではないが、温暖化が進めば事態は一層深刻になる。しかも、水没以前に問題なのは、地下水を井戸で汲み上げている島では、海面上昇によって地中の圧力が高くなると水がたまらなくなり、生活用水が得られないため人が住めなくなることだ。このように水没のみならず海岸侵食が居住地域や社会資本に与える影響を総合的に評価する手法を開発し、日本と中国、南太平洋の島国が温暖化で受ける被害を定量的に示し、被害を防ぐための対策費も見積もれるモデルを作った。アカデミックな研究だけでなく、具体的な対策を講じるために政府研究会の座長を務めるなど、今最も精力的な温暖化研究者の1人。


●達人
西岡秀三
1939生 地球環境戦略研究機関
【環境システム分析】日本でいち早く温暖化の影響リスクに問題意識を持ち、気候、農業、海洋など影響が予想される分野の専門家にリスク研究の必要性を説く。研究者を組織化して研究を進める一方、研究や評価の方法を確立しようと尽力する中心的存在。法律家志望だった高校時代、世界初の人工衛星スプートニクのニュースを見て「これからは科学技術の時代だ」と理系に転向。


●達人
吉野正敏
1928生 筑波大学名誉教授
【気候学】偏西風のようなスケールの大きな風から、季節風、関西の六甲おろしなど局地的に吹く風まで、世界各地の風と気候について研究。気候変化とそれが農業に及ぼす影響に造詣が深い。


●鉄人
及川武久
1942生 筑波大学名誉教授
【植物生態学】特殊なビニルハウスで、温度とCO2濃度を変化させると植物の成長がどう変化するかを測定、また全世界の陸上を6万カ所に区切った生態系モデルを作り、各地点の植生の生産力が温暖化でどう変化するかシミュレーション実験を行い、将来的な生態系の変化が起きることを検証している。中国で砂漠化と植生の関連の調査も行う。


●鉄人
花木啓祐
1952生 東京大学 工学部/工学研究科 都市工学専攻
【都市環境工学】都市の消費によって生じるさまざまな製品やサービスの環境負荷を、ライフサイクル全体を通して総合的に評価するライフサイクルアセスメントの考え方を現実の場に取り入れることを提唱。温室効果ガスの排出をはじめとした環境負荷が小さく、同時に質の高い環境を保った都市構造や、汚染された環境の修復技術を研究するなど“都市を守る”研究を行っている。


●鉄人
柳 哲雄
1948生 九州大学 応用力学研究所 
【海洋物理】地球環境に影響の大きい海流を研究。海流の変化やダイナミクス、海水に溶け込んだ物質の輸送のしくみなどを探求してきた。海中の植物プランクトンの移動を追跡して画像化に成功し、水産資源の動きを知る海の桜前線として注目された。

 

  政策研究


●鉄人
松岡 譲 
1950生 京都大学 工学部 地球工学科 工学研究科 都市環境工学専攻
【環境システム工学】もともと土木系出身で水道工学を専門としていたが、工場や家庭の排水が水質汚染を引き起こす仕組みを解明するためにモデルを作ったのが、モデラーとしての第一歩。気候変動の結果の水循環の変化から経済まで、様々な分野で数理モデルを構築している。研究当初は日本に気候変動モデルの研究者がいなかったので世界中の研究者に指導を受けに飛び回ったが、現在は世界中から注目を集める存在に。


●達人
佐和隆光
1942生  京都大学名誉教授、滋賀大学
【計量経済学】市場経済万能の風潮に異を唱え、環境と福祉の可能性を提言。温暖化防止には炭素税が有効という強い信念でガソリン1リットルあたり2円、年間1兆円の税収を温暖化防止のための技術開発に充てることを提案。政府の委員会役員や要職を数多く務め、発言力も大きい。

 

●達人
森 俊介
1953生 東京理科大学 理工学部 経営工学科
【エネルギーシステム】地球を8地域に分割し、エネルギー・資源、経済活動、土地利用、食料需給なども考慮し、CO2が多く出るとどれだけ損失が出て、今どんな対策が有効かがわかる最適化型のモデルを開発した。

 

●鉄人
山口光恒
1939生 東京大学 先端科学技術研究センター
【途上国協力】国ごとに決まっているCO2の排出権を売買しあい、途上国を援助しながら地球全体として排出を抑えるクリーン・デベロップメント・システムを推進。企業の立場から環境問題に関わった経験や、多数の環境国際会議に出席した経験を生かし、実現可能な環境政策を探る。


●鉄人
西條辰義
1952生 大阪大学 社会経済研究所
【実験経済学】CO2の排出権取引について、取引が実際に成り立つかどうかを炭素税のかけ方など綿密な設定をした実験によって検証している。最近は風力エネルギーの可能性についても研究。
 

  エネルギー・技術研究


●鉄人
清水 浩 

1947生 慶應義塾大学 環境情報学部 環境情報学科
【電気自動車】国立公害研究所(現・国立環境研究所)で大気中の汚染物質を調べる装置の開発や測定をしていたが、幹線道路の深刻な汚染を前に汚染を根本的に改善する「武器」を作りたいと一念発起。独学で機械工学や電気工学を学び、子供の頃から大好きだった自動車の開発に着手。従来の電気自動車は、ガソリン車のエンジンをモーターに置き換えただけのものがほとんどだったが、動力源が電気モーターであることに着目。国立環境研究所と自動車・ハイテクメーカーとの共同研究で開発した、タイヤのなかにモーターを入れた8輪車「KAZ」で時速300キロの世界記録を作った。自動車関連などの企業との産学連携で、本格的な製造・販売まで行うベンチャービジネスも本格的に始動。超低燃費でCO2を排出せず、乗り心地も抜群の電気自動車の普及をめざす。


●鉄人
山地憲治
1950生 東京大学名誉教授、地球環境産業技術研究機構
【エネルギーシステム分析】バイオマス等の新エネルギー利用技術から排出権取引や核燃料サクル等の政策・経済問題までエネルギー学の全てを体現するかのような、広範な専門領域と卓越した知見は右に出る者がない。温暖化が話題になる前からこの問題に注目し解決を模索していただけに、一時の風潮にあおられない骨太の提言は現実味があり、現在日本のエネルギー行政・業界ともに最も影響力を持つ。


●達人
茅 陽一 
1934生 地球環境産業技術研究機構/元慶応義塾大学
【システム工学】平成元年からIPCCの日本政府代表団顧問を努め、現在は地球環境産業技術研究機構で、CO2海洋閉じ込めなどのプロジェクトを主宰している。現在はエネルギー業界の相談役として、エネルギーの効率化など政策研究も含めた幅広い提言を行う。


●達人
平田 賢 
1931生 芝浦工業大学 /東京大学名誉教授
【システム工学】日本のエネルギー体系を石油よりCO2排出量の少ない天然ガスに転換することを提唱。切り替えや導入に当たってのコストや効率のよい使い方などを綿密に計算している。


●鉄人
牛山 泉 
1942生 足利工業大学 工学部 創生工学科
【風力発電】風力発電で世界的に知られる。エネルギー量の見積方法から、風車技術、構造設計、送電網につなげる系統連結まで、風力エネルギーの利用技術研究を網羅。風車のあるところなら世界各国どこへでも訪れるバイタリティーで、開発途上国での技術援助はライフワークの1つ。


●鉄人
柏木孝夫 
1946生 東京工業大学 ソリューション研究機構
【エネルギー工学】CO2の削減に最適なシステムや技術の組み合わせのシミュレーションで実績。従来のエネルギーシステムに、いかに環境負荷の少ないものを組みこんでいくか、都市の省エネルギーを総合的に研究している。経済産業省の顧問的な役割も。

 

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