インターネットを武器に、日本人が、世界中に「買い物」の楽しさと、それを通した豊かさを広める開拓者になった。
楽天株式会社
楽天市場サービス開発・運用部 プロダクトマネジメントグループ
——仕事にはどんな能力や知識が必要だと思いますか。
一番大事なのは「質問する力」だと思います。システム開発は、課題をITで解決する方法を考える仕事ですが、最初から解決策を考えてしまってはいけません。「質問力」を高めるために必要なことは、普段から「疑問に感じること」「簡単に納得しない癖をつけること」です。
物流、金融、交通など、ありとあらゆるものは仕組み化されていて、ITが関わっていないものを見つける方が難しい世の中です。その中で仕組み化されていないものを見つけた時に、なぜ仕組み化されていないのか、仕組み化するとしたらどういうことが必要になるのか、などを考えるのには、「質問する力」が大事です。世の中を知るきっかけにもなりますし、発想力を鍛える練習になるでしょう。
——ITの知識は必要ですか?
もちろん、学生時代に高いプログラミングスキルを修得しておけば有利かもしれませんが、プログラミングの能力は、経験が大きいと思います。
今は、教材も事例も、WEBの中や街中にあふれています。ですから、何に疑問を持って、どういう行動をとるか、何を優先させるかという意識や態度が重要です。「自分を律する(自己管理)能力」、「タイムマネジメント能力」や「情報管理能力」も大事と言えますが、これも意識や態度を向けることで自ずと養われると思います。
——中学・高校時代や大学時代に学んだことで役立っていることはありますか?
これからは日本だけで仕事をすることはますます少なくなるはずです。ですから「世界史」はもちろん、各国の産業の成り立ち、文化、政治的背景などの理解に役立つ「地理」、「倫理(宗教)」、「政治・経済」などはきちんと学んでおくべきです。
また、合理的にものごとを判断するためには「統計」が大切なので、高校では統計を学ぶ基礎となる数学をしっかり勉強しておくとよいと思います。数学は物事をシンプルに考える、ルール化してシステムを設計する、アルゴリズムを考える、プログラムを書くといったことの基礎にもなります。
——勉強以外で役立っていることはありますか?
一緒に仕事をする人と円滑にコミュニケーションをとることは、どんな仕事でも重要です。そのためには、チームでゴールを目指す経験が得られる、部活動や委員会活動は役に立つと思います。
また、社会に出るといろいろな人と一緒に仕事をしなくてはなりません。大学時代、私は留学団体でボランティア活動をしていましたが、仲間はもちろん、社会人の方と接することで、立場の違う人との仕事の進め方や役割分担、学生の限界を知ることができました。みなさんには、高校生、大学生のうちから年齢や国籍などを問わず、いろいろな立場の人と積極的に関わってほしいと思います。そこには確実に知らない世界があり、理解できない問題があり、自らの生活を見直すきっかけとなり、それまでの自分の世界観に少なからず影響を及ぼす新しい刺激となるはずです。
生徒会活動に積極的に参加していました。それもあり、先生に勧められて東京都の奨学金制度を利用して、3年の夏からAFSの派遣生としてアメリカに1年留学しました。帰国後半年遅れで、ひとりで卒業証書をもらいました。留学中はアメリカ人が日本を知らないことに驚くと同時に、自分もアジアについて何も知らなかったことにショックを受けました。
中学時代から、体育の先生になりたかったのですが、アメリカの高校のクラブ活動で「シーズンスポーツ」を体験し、職業にしないでも、いろいろなスポーツを続けていくことのイメージがつき、その進路については白紙にしました。
※AFS=高校生の交換留学の運営団体。実績は約60年、留学先は海外約40ヶ国。
半年の浪人後、総合政策学部に進学しました。留学時代に受けたショックから、アジアについて学ぼうと考え、外国語科目ではインドネシア語を選択しました。具体的な目的もなく学んだインドネシア語が、今や日本以上の市場として注目される国での仕事で使うことになるなど、当時は思いもよらないことでした。
学業以外ではアルティメットというスポーツと、AFSと学内でのボランティアサークルに熱中しました。また、ITや英語力を活用した割の良いアルバイトや、定番の塾講師や家庭教師などもしましたが、肉体労働系の引越し・家具や家電の配送や、日雇いで港湾整備や輸入コンテナからの荷降ろしなど、アルバイトを通じていろんな経験もしました。
コンピュータについてはプログラミングを学ぶと同時にインターネットを広く世の中に普及させることの必要性を痛切に感じていました。そこで、公立の小中学校で当時まだ一般的ではなかったインターネットを普及させるような仕事に就きたいと考え、インターネット関係の事業も展開している大手印刷会社に就職しました。その後、インターネットを利用することで大企業のような宣伝力や販売力がない中小企業にも、大手企業と同じようなビジネスチャンスを提供して社会を活気づけていこうという楽天市場の理念に共感して、楽天に転職しました。
インドネシアを含むASEAN地域において、IT環境は2000年前後の日本に近く、経済発展は日本の1980年代のような勢いがあります。これからも楽天の仕事を通じて、ASEAN地域を支援していきたいと思います。