(2014年7月取材)
◆部員数 10人(うち1年生7人、2年生2人、3年生1人)
◆答えてくれた人 渡邉緩也くん(3年生)、今村洋介くん(2年生)
一列に並べられた、糸の長さの違う振り子たち(振り子集団)を一斉に運動させると、波のように並んだり、数本の列に並んだりと、時間の経過によって様々な模様を描き出します。そして、運動開始から60秒後、振り子集団は一列並びます。「振り子集団が60秒後に一列に並ぶ」ということは、「それぞれの振り子は60秒間で整数回振動する」ということと同じであると気付き、60秒間の振動回数をx(整数)と置きました。それにより、振り子集団の不思議な模様の物理的・数学的な解析に成功しました。
(1)整数論的アプローチ:
[例] 60秒間でx回振動するということは、30秒間ではx/2回振動します。xが偶数ならばx/2は「整数」、xが奇数ならばx/2は「整数+0.5」となり、30秒後の振動回数は2パターンあるとわかります。
(2)単振動の公式によるアプローチ:
振り子の運動を単振動と見なすと、振り子の変位yは
y=Acos2π(x/60)t
と表せます(Aは振幅、tは運動開始からの時間)。表計算ソフトでこの公式を用いて、どの時刻にどんな模様が描かれるか、シミュレーションしました。
実験によって得られた実際の模様と、シミュレーションによって得られたグラフを、運動開始7秒後、20秒後、30秒後の3つの場合について示すと、両者はほぼ一致しています。また、その他のあらゆる時刻でも両者は一致します。
そして、振り子は7秒後の図で明らかなように、正弦波上に並ぶと考えられます。これは、変位がy=Acos2π(x/60)t
という式で表されることからも言えます。ただし、振り子はあらゆる時刻で正弦波上に並んではいるが、時刻ごとにその波長は異なります。そのため、時刻ごとに様々な模様が描かれるのです。また、波形の性質上、20秒後付近や30秒後付近では、振り子は正弦波上というより複数本の線上に並んでいるように見えます。振り子集団の模様を人の目が正弦波として認識できる時刻とそうでない時刻があるが、その境界はあいまいなので、それを求める論理的な方法は今後研究したいと思っています。
■研究を始めた理由・経緯は?
YouTube上で振り子集団の動画を見て、その不思議で美しい模様に興味を持ちました。「どのように振り子集団を製作するのか」「模様にはどのような規則性があるのか」などは記されていなかったため、自分達で研究していこうと決めました。
そのYouTubeはこちら→「Pendulum Waves」
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
「1日あたり2時間半で週2日で1年間」が原則だが、レポート提出前などは「1日あたり4時間」になったり、「週5日」になったりもする。各自家に仕事を持ち帰ることもあります。
■今回の研究で苦労したことは?
・振り子を実際に作るとき、0.1mm単位で調整するのが大変でした。(今村くん)
・理論が完成するまでは、四六時中振り子のことを考えていました。土浦第一高校は2年生から物理の授業が始まるため、研究当初2年生だった私は、限られた物理の知識で振り子に立ち向かうことになり、苦労しました。理論が完成したあとは、その理論がシンプルすぎるように感じて、「本当にこれでいいのか」「物理の研究とはどうあるべきか」などいろいろ考え込んでしまいました。(渡邉くん)
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
まずは振り子集団の動画をインターネット等で見て、その不思議さや美しさを感じてください。こんなにも不思議で美しい現象を、私達物理実験部の研究は、数式を用いて物理的に解析することに成功しました!
■今回の研究は今後も続けていきますか?
今後続けるかどうかはまだはっきりとは決めていません。続けるとしたら、振り子集団を竹串で一列に連結した「連結振り子」の運動の研究を行いたい。違うテーマとして、「Stick Bomb」と呼ばれる、弾けるドミノの不思議な動きの正体を研究したいと思っています。
→Stick Bombの動画はこちら
■ふだんの活動では何をしていますか?
研究(「実験」と「理論を作るための議論」)がメインですが、空いた時間にはまた別の物理や数学のトークで盛り上がります。どのくらい盛り上がるのかというと、いつの間にか黒板が数式や図で埋め尽くされていたり、気が付かないうちに完全下校時刻の夜8時になっていたりするほどです。物理チャレンジや数学オリンピックの問題を持ち寄って解くこともあります。日本で一番物理を楽しんでいる部活と言っていいと思います!!
■総文祭に参加した感想は?
・各県を代表する数々の研究の面白さに驚きました。そうした研究の中で優秀賞を頂けたことは本当に嬉しい。このことは、多くの人が私達の研究発表を通して物理の面白さ、奥深さを感じてくれた証拠であると思うので、誇りを持ちたいと思います。最優秀賞に一歩及ばなかったのは悔しかったので、より成長していきたいです。研究発表以外のイベントもこの上なく充実していました。できることなら、あと何回でも出場したいと思いました。総文祭という科学を活発に楽しめる場に参加できたことに感謝し、これからも物理を熱心に勉強しようと思います。(渡邉くん)
・今回の総文祭では、全国大会という場でしか味わえない空気が満ち溢れている中、研究という営みのまた違った側面が見られました。実験室での調査だけでなく、実際に発表し、全国から来たレベルの高い人達とお互いに刺激し合い、交流を深めるという全く新しく、この上なく楽しい経験ができました。「物理実験部をやっていて本当に良かった」と思えた瞬間でした。(今村くん)
※渡邉くんと今村くんの発表は、物理部門の優秀賞を受賞しました。