(2014年7月取材)
発表する石倉彩美さん(3年)
月の色が昼間は白っぽく、夜は黄色っぽく見える理由を明らかにしたいと思い、研究を行いました。
まず、昼間と夜とで月の色が違って見えるのは自分自身の思い込み、もしくは人間の目の錯覚なのではないかということを反証するために、同じ日に昼間から夜にかけて一定時間間隔で月の写真を撮影し、画像データをJPGとRAW画像で分析して、数値上で月の色を比較しました。この時は同じ日に撮影したので、大気の状態は同じと考えられます。また高度もほぼ同じなので、高度による色の変化もないと考えられます。(下記はJPG画像分析の結果)
色の成分の多い順に、昼間は青→緑→赤、夜は赤→緑→青と色の割合が異なり、実際に月の色は昼間と夜とで異なっていることが確認できました。
さらに色の成分ごとの数値を比較して昼間と夜との色の差を求めると、図3のような色になりました。この色は青空の色に似ているので、なぜ昼間と夜との差が青空になるのかを考えました。
月の色は、夜は図4のようになり、私達が見る光は散乱しにくい赤の割合が高くなっています。昼間はこの現象に加えて図5のような太陽の大気散乱が加わるため、私達が見る光は白っぽく見えるのではないかと考えました。
さらに、昼間の月は散乱によって減少した青や緑の光が青空によって補われて白っぽく見えますが、夜の月は太陽の光がないために青や緑が補われないので、黄色っぽく見えるのではないかと考えました。式で表すと下記のようになります。
夜の月+(太陽の大気散乱)=昼の月…(1)
昼の月-(太陽の大気散乱)=夜の月…(2)
これを確かめるために、前の実験で撮影した月の写真を40分おきに抽出し、画像加工ソフトを使って色成分の減算・加算処理を行いました。減算処理ではそれぞれの写真の空の色を写真全体から引き、加算処理では空の色が15:49の写真と同じになるように、写真全体に色を足しました。
JPG画像分析で色がばらついたのは、JPGでは色の正確な情報が失われているため、処理の中でズレが生じたためと考えられます。
RAW画像分析では、昼の月を減算処理すると夜の月のような画像が、夜の月を加算処理すると昼の月のような画像が得られました。つまり、(1)(2)の式は正しいと考えられます。
これらの結果から、月の色が昼間は白っぽく、夜は黄色っぽく見える理由は、昼間は散乱によって減少した青や緑の光が青空によって補われて白く見えますが、夜は太陽の光がなく、散乱した青や緑が補われないために黄色く見えるためであることがわかりました。
■研究を始めた理由・経緯は?
以前から月の色が昼間と夜で違って見えることを不思議に思っていたので、この色の違いを科学的に解明したいと考えました。
■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究?
・協力:ぐんま天文台
・使用ソフト:すばる画像解析ソフトMakali`i
天体画像処理ソフトウェアStellaImage7(AstroArts社製)
天文シミュレーションソフトウェア ステラナビゲーター9(AstriAets社製)
■総文祭に参加した感想をおしえてください。
月の色の不思議について、月の写真の解析により、太陽光の地球大気による散乱の有無が関与しているという結論を導き、この現象の再実験を成功させました。いばらき総文祭という全国大会で、この研究内容を多くの人に、わかりやすく伝わるようにプレゼンテーションを行い、優秀賞をいただけたことは、私にとって大きな自信となりました。また、記念講演では、宇宙飛行士の古川さんに直接質問ができ、とても嬉しかったです。他校の興味深い発表を聞いたり、全国の高校生と協力してゲームに挑戦する交流会に参加したりして、同じように科学に関心を持つ友人もできました。最先端の研究所の見学も勉強になりました。様々な経験ができた思い出に残る3日間でした。
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『星のかけらを採りにいく―宇宙塵と小惑星探査』
著者 矢野 創先生 (JAXA宇宙科学研究所)