ロボカップ出場経験を活かして、全方向に自由に動かせる3輪オムニホイールロボットを考えた

福岡県立宗像高等学校 電気物理部

(2014年7月取材)

左から桒野智大君(3年)、佐々木陸人君(3年)、平松亨隆君(3年)、森洋樹君(2年)
左から桒野智大君(3年)、佐々木陸人君(3年)、平松亨隆君(3年)、森洋樹君(2年)

◆部員数21人(1年生8人、2年生4人、3年生9人)

◆答えてくれた人 平松享隆君 3年生

 

■研究内容 「3輪全方位移動ロボットの制御に関する研究」

私たちは、4輪オムニホイール(※)のロボットを製作して、ロボットサッカーのコンテスト「ロボカップ」に出場しています。全国大会に6回、世界大会にも4回出場しています。今回の研究では、ロボットがそのままの姿勢ですべての方向に移動できる3輪のロボットの制御方法について力学的に研究しました。

※オムニホイール:進行方向だけでなく、それに対し垂直な方向にも回転できる小さなホイールのついたタイヤ


先行研究の文献では、3輪オムニホイールロボットの速度をVとしたい時に、各ホイールの速度Vnはそれぞれのホイール方向成分にすればよいとありますが、ロボットの重心の位置については触れられていません。そこで、重心位置のずれを考慮しなくてよいかを考えました。


まず実験用ロボットを作り、ロボットを自由に運動させるために、速度や加速度とモーターのPWM値(モーターにバッテリーの電圧を何%かけるかという数値)の関係を調べました。



次に、ロボットの重心の位置がずれている場合、真横に動かす動作をさせる時に、前輪のPWM値をどの程度調整しなければならないかを、「力のモーメントの作用」と「摩擦力の変化による作用」の2つの理論をもとに、実験を通して考えました。

赤い点が重心。例えば、「力のモーメントの作用」においては、重心が-3cmずれるとPWM値は31%
赤い点が重心。例えば、「力のモーメントの作用」においては、重心が-3cmずれるとPWM値は31%
両者の作用が打ち消し合って、下記のグラフになると仮説
両者の作用が打ち消し合って、下記のグラフになると仮説

さらに、前後のプレートにおもりを分けて乗せることで重心の位置を変化させることができるロボット2を作り、重心位置のずれとPWM値の調整量の関係を実際に測定しました。

その結果、ロボットを作る際、重心位置をロボットの中央付近(直径の20%程度)の範囲におさめれば、ロボットの重心位置のズレを考慮せずプログラミングできることがわかりました。

 

このことから3輪のオムニホイールロボットでは、単純な速度による制御理論に基づいて制御しても、ロボットを自由に動かせることがわかりました。


■研究を始めた理由・経緯は?

 

ロボカップサッカーの4輪ロボットは、経費がかかる、軽量化が難しいなどの課題や、科学的な根拠なしにプログラミングをしているという問題を抱えていました。そこで4輪から3輪に変えることによって経費削減と軽量化を実現し、さらに力学モデルを作ることにより、ロボットの運動を科学的にとらえることを目指しました。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

平日は放課後に3時間、休日は8時間の活動を1年間続けました。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

記録タイマーを使ってロボットの速度を計測する実験で、ロボットをまっすぐ走らせるという条件を満たすことが難しかったです。結局、成功本数は340本以上になりましたが、失敗したものを含めるとその何倍になるかわかりません。また、理論計算の式がとても複雑で、計算を終えるまでに失敗したものを含めると、12ページにもおよびました。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

ロボットを作ったことのない人々にもわかりやすく説明するために、発表の前日まで発表内容やプレゼンの改訂を行いました。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?

 

ロボカップ中型リーグHibikino-Musashiのチームメンバーの皆様に、速度の調節でロボットを制御する理論についての資料を提供していただきました。

 

■次はどんなテーマの研究をしてみたいですか?

 

落下する紙の運動について研究を行う予定です。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

研究以外では、今回の研究にもあがっている自立型サッカーロボットの製作かサッカーロボットの大会に出場しています。また地域の科学的な催物や子供たちの工作教室に参加しています

 

■総文祭に参加した感想をきかせてください。

 

他校の発表を聞いて、発表レベルの高さだけでなく、研究のテーマの幅広さも感じました。身近な自然現象や、将来私たちにとって必要となるであろう安全ロボットなどに関する研究をした高校もあり、「テーマの見つけ方が上手だなぁ」と感じさせられることも何度もありました。また、私たちのいた発表会場では発表ごとに必ず1人以上は質問しており、またそのレベルが高いものばかりでした。このような研究発表大会を通して、私たち自身の研究や発表の質も向上させていきたいと思っています。

 

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