オリジナルpH万能指示薬でゲル化実験。さらに新たな酸化還元万能指示薬の実用化をめざす

福岡県立修猷館高等学校 化学部

(2014年7月取材)

左から宇田颯くん(3年)、中水流雄大くん(3年)、家入祐輔くん(3年)
左から宇田颯くん(3年)、中水流雄大くん(3年)、家入祐輔くん(3年)

◆部員数 10人(うち1年生6人、2年生1人、3年生3人)

◆答えてくれた人 家入祐輔くん(3年生)

 

■研究内容 「指示薬の研究」

私達は、昨年度(2013年)までBTB、チモールブルー、フェノールフタレイン、メチルレッドをエタノールに溶かしたpH 万能指示薬を開発して、二酸化炭素の吸収過程の追跡や、降雨のpH測定に利用するという研究を行ってきました。

 


今回はこのpH万能指示薬を使って、ケイ酸ゲルのゲル化条件を調べました。さらに、新たに酸化還元万能指示薬の開発にも挑戦しました。

 

ケイ酸ナトリウム(水ガラス)に酸を加えると、水ガラス内のケイ酸が縮合重合を起こしてゲル化し、ケイ酸ゲルができます。


これはpH変化によるものですが、固体にpHメーターは使いづらいので、この反応が起こる際のpHは、pHメーターでは測れません。そこで、昨年度までに開発していた修猷館オリジナルpH万能指示薬(pH1~12それぞれで色の分かれるpH指示薬)を用いてゲル化の仕組み、適正pHを調査しました。


ゲル化にかかる時間を調べるとpH8~10の中性から塩基性にかけての範囲で最も早くゲル化しました。pH1~2で約1週間、pH3では約2日でゲル化しましたが、pH13以上はゲル化しませんでした。

 

 


この実験で、偶然pH万能指示薬を多量に加えると、ゲル化が速くなることに気づきました。これはpH万能指示薬中のエタノールの影響ではないかと考え、検証実験を行ったところ、やはりエタノールを加えた方が速くゲル化することが明らかになりました。これは、エタノールの脱水作用に関係があると考えられます。


また、ゲル化の速度は水やエタノールに対するケイ酸の溶解度と関係があるのではないかと考え、検証実験を行ったところ、最も溶けやすい溶媒のpHとゲル化が速かったpHはほぼ一致しました。


さらに今年は、pH万能指示薬をヒントに、酸化還元反応で色の変わる物質を用いて、特定の還元剤(=ハロゲン化物イオン)の検出を試みました。

 

そして、過マンガン酸カリウムとニクロム酸カリウムの二種混合酸化還元指示薬を用いることで、ハロゲン化物イオンを検出できるようになりました。(下図は、塩化物イオンとヨウ化物イオンでの反応の違い)

二種混合酸化還元指示薬を加えた際の塩化物イオンの反応
二種混合酸化還元指示薬を加えた際の塩化物イオンの反応
二種混合酸化還元指示薬を加えた際のヨウ化物イオンの反応
二種混合酸化還元指示薬を加えた際のヨウ化物イオンの反応

また、二種混合酸化還元指示薬では見極めが難しい、臭化物イオンとヨウ化物イオンについても、鉄(III)イオンとチオシアン酸カリウムを併用することで区別できるようになりました。つまり、二種混合酸化還元指示薬と、チオシアン酸カリウムと鉄イオンの混合溶液を、二段階に分けて用いることで、各ハロゲン化物イオンの検出が可能になりました。


■研究を始めた理由・経緯は?

 

ケイ酸ゲルのゲル化については、化学の授業に出てきたので実際にやってみました。そこで水ガラスに酸を加える量によって、ゲル化の速さが異なることに気づき、いろいろな条件で実験してみました。酸化還元万能指示薬をつくろうとしたきかっけは、部のミーティング中に「pH万能指示薬があるのなら、どうして酸化還元の万能指示薬がないのか」いう疑問が出てきたことです。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

ケイ酸ゲルの研究に9か月、酸化還元万能指示薬の開発に半年くらいです。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

ケイ酸ゲルのゲル化は、実はとても複雑な要素がからまって起こるもので、単にpHによるものではありません。その複雑さを、いかに簡単に分かりやすく相手に伝えるかに苦労しました。酸化還元万能指示薬については参考文献がなく、ほとんどが手探りでした。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

ケイ酸ゲルのゲル化過程は、pHメーターでは調べることはできません。しかし我校の開発のpH万能指示薬を用いることで、その過程を発色によって目で観察することができました。酸化還元万能指示薬は、まずこれが私達のオリジナルであるという点。そして、肉眼で見てどのハロゲンが検出できたかを知ることができる点に注目してほしいです!

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究?

 

『吸光光度法ノウハウ ケイ酸・リン酸・硝酸塩の定量分析』奥修著(技報堂出版)

『化学の新研究』卜部吉庸(三省堂)

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

続けて行きます。ケイ酸ゲルについては、次は、同じゲル化を起こすアルミニウムイオンなど金属イオンでやってみたいと思います。酸化還元指示薬は、さらに改良して実用化を目指したいと思います。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

主に研究をやっています。何か科学系のイベントがあれば参加して、化学、生物、物理、地学の知識を吸収しています。

 

■総文祭に参加した感想を聞かせてください。

 

やはりレベルの高い研究が多く驚きました。また、九州から離れて遠くまで遠征できたのも、日頃の努力がむくわれたと実感することにつながったので、とてもうれしかったです。全国レベルの大会に出場したことは今後の生活の自信になり、研究者をめざす気持ちが高まりました。この総文祭は充実した3日間であり、今までやってきた部活動がとても充実していたことを実感させてくれました。

 

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