(2014年7月取材)
◆部員数 36人(1年生14人、2年生12人、3年生10人)
私達の学校は創立137年を数え,校内には多くの樹木や記念碑・慰霊碑があります。校内に生息する動植物の調査をしている時に、ナガサキツノゴケというユニークな形のコケを発見しました。
ツノゴケはコケ植物の仲間で、二酸化炭素(CO2)を葉緑体内に輸送・濃縮するCCM(CO2-concentrating mechanism)と呼ばれる特殊なシステムを持っています。これは、主に水中単細胞植物が獲得したシステムですが、なぜか陸上植物ではツノゴケだけが持っています。これはなぜなのか、遺伝子解析で研究することにしました。
一般的に、ツノゴケには大きな葉緑体が1細胞あたり1~2個含まれ、CCMを持つことで光合成の効率を上げています。これに対して、C3植物(※)などは葉緑体を小さく分裂させ、200個近くまで増やすことで、光合成の効率を上げていると考えられます。
※C3植物:光合成にC3経路を使う植物で、大部分の植物がこれに相当する
水中単細胞生物を含め、一般にCCMを持つ生物は、大きな葉緑素の中に「ピレノイド」という構造体が存在します。その中には、光合成のカルビン・ベンソン回路で炭酸固定反応をつかさどるRubisCOなどの酵素が存在しています。
RubisCOは、RbcSとRbcLというサブユニットがそれぞれ8分子ずつ結合した構造になっています。また、ピレノイドを持っている生物のRubisCOは、それぞれのサブユニットに特徴的なアミノ酸ループが発達しています。
そこで、私達は様々なツノゴケについて、このループ部分の塩基配列を求めてアミノ酸配列に翻訳して、系統樹を作成し、ツノゴケと他の植物を比較しました。
この研究で、RbcS・RbcLともに、植物の種の間では大きく変化しますが、ツノゴケの種の間では長さ・配列ともに類似していることがわかりました。
さらに、ピレノイドを持つニワツノゴケとピレノイドを持たないアナナシツノゴケが系統樹上ではとても近い位置にあったことから、ピレノイドの有無は、遺伝子配列中の比較的小さな違いによって決定されると考えられることがわかりました。
私達は、C3植物の細胞に存在する葉緑体の一つひとつにピレノイドとCCMを付与することで、単位面積あたりの光合成効率をあげることができるのではないかと考えました。つまり、例えば乾燥に比較的強い植物にCCMを導入することができれば、気孔を開ける時間が短くても、効率よく光合成ができるようになる可能性があります。こうすることで、乾燥地や砂漠の緑化も夢ではなくなります。また、デンプン蓄積能力の高いジャガイモにCCMを導入することができれば、収穫量が上がるのではないかと考えられます。
■研究を始めた理由・経緯は?
陸上で唯一ピノレイドを持つツノゴケという不思議な生物に興味を持ったからです。
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
1日あたり約2時間で5年間。先輩から受け継いだ研究です。
■今回の研究で苦労したことは?
遺伝子解析がうまくいかなかったり、研究材料が手に入らなかったり…。(廣田さん)
実験手法が難しく、なかなか思うようにいかなかった。(今田君)
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
発表用のパワポは、なるべく絵を入れてわかりやすくするようにしました。また、RbcSとRbcLでは、遺伝子がコードされている場所が異なるため、塩基配列によってmRNAから抽出するかDNAから抽出するかを変えました。
■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?
「校庭のコケ-野外教室ハンドブック」(紀伊國屋書店)、海外の大学の論文など
■今回の研究は今後も続けていきますか?
この内容は今年度で終了かな…。続けるとしたら、コケの抗菌作用などについて調べていきたいと思います。
■ふだんの活動では何をしていますか?
セトウチマイマイというカタツムリの遺伝子解析をしています。飼育しているカメの餌やりも私達の仕事です!
■総文祭に参加した感想を聞かせてください。
楽しかったです!生徒交流会の企画・運営お疲れさまでした。ありがとうございました。(廣田さん)
全国の高校生たちの研究が見られて楽しかったです。(井藤さん)
とてもおもしろかったです。機会があれば、また参加したいです。(今田君)
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