(2014年7月取材)
◆部員数43人
(1年生9人、2年生9人、3年生25人)
◆答えてくれた人 本田一紗さん(3年生)
ペットボトルロケット(以下、ロケット)の実験は、小学生でもできる簡単なものです。私達は、ただロケットを飛ばすのでなく、災害時の救援物資の運搬に使えないか、ということに着目して、この研究を行いました。
地震や洪水などの災害で孤立した人のために、ヘリコプターで救援物資を運ぶ様子はよく目にします。しかし、ヘリコプターは時間と費用がかかるだけでなく、燃費が悪く、環境に悪影響を及ぼすとも言われています。一方、一般的な作り方でロケットを作ると、50m程度の飛行距離が得られます。そこで、災害時・緊急時の物資運搬の実用に堪えるよう、
・最低100m以上の飛距離を持つ
・物資を救援物資の中でも軽くて取扱いやすいもの(使い捨てカイロや乾パンなど)を運搬できる
という課題を解決するために、燃料タンクの大きさ・打ち上げ角度・水の量・ハネに付ける角度・空気を入れる回数・搭載する物資の重さなどの条件を変化させ、安定した飛行と長い飛距離を確保できる条件を検証しました。
実験の結果から、最も長い飛距離を計測した飛行条件は、水の量600ml、打ち上げ角度60°、ハネにつける角度5度、空気を入れる回数50回でした。この条件下で、100g程度の物資を90m飛行させことが可能でした。
さらに、ここまでの実験で得られた理想機体をもとに、エンジンタンクを連結させた三段式のロケットを製作し、実験の条件は水量1.0L、打ち上げ角度60度、羽につける角度5度、空気圧10気圧で打ち上げたところ、おもりを搭載しない場合、平均182mの飛距離となり、エンジンタンクの拡張によって飛距離は飛躍的に増加しました。
また、おもりを50g搭載した場合は、平均152mの飛距離となり、一段式と比較して40m飛距離を伸ばすことができました。このことから、多段式ロケットはより多くの物資を搭載でき、より遠くに飛行させることが可能になることがわかりました。
また、実験全体を通して、飛行条件を変化させることによって様々な飛距離を得られたことから、必要に応じて飛距離をコントロールできる可能性も示されました。
実用化に向けては、さらに必要距離・高度に応じた飛行と着地の確実性を実現させられるようにすることが課題となります。さらに、人のいるところに着地させるために、現段階では機体の安全な着地のために、パラシュートを搭載するなどの工夫も必要です。今後は、さらに多くの飛行条件下でのデータ収集や、機体の材質・形状の研究・改良に取り組み、運搬手段としてのロケットの有用性を確かなものにしたいと思います。
■研究を始めた理由・経緯は?
部活動でペットボトルロケットを作って飛ばした際に、何かを搭載してみたいと思ったのがきっかけです。実際に飛ばしてみると、予想していた以上に飛距離が長かったため、災害時に活用できるのはないかと考え、研究を始めました。
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
2013年7月頃から1年間。平日に製作や文献調査を行い、休日に半日から一日中飛行実験を行いました。
■今回の研究で苦労したことは?
・飛行実験は、飛んだロケットが人や建物に衝突せず、見晴らしのよいところで行わなければならないので、主に学校近くの河原で行いました。実験をする土日には、行楽の家族連れが集まったりするので、場所の確保がたいへんでした。また、天候条件にも左右されやすいため、土日に天気が悪いと実験ができないこともありました
・実は、2人とも理科が生物選択なので、物理は1年生の時に勉強しただけです。なので、実験に必要な知識は、自分達で勉強し直しながら進めました。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
エンジンタングを三段にしたときの飛距離の飛躍的な伸びに注目してください!
■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?
参考サイト
・大型水ロケットを作ろう―水ロケットのパワーアップ<JAXA宇宙教育センター>
■今回の研究は今後も続けていきますか?
できれば後輩に引き継いでほしいと思っています。
■ふだんの活動では何をしていますか?
昨年はペットボトルロケットの研究と同時に大腸菌の殺菌について研究しています。
■総文祭に参加した感想を聞かせてください。
多くの方々と交流ができて良い経験になりました。とても楽しかったです!