(2014年7月取材)
◆部員数23人 (1年生11人、2年生7人、3年生5人)
◆答えてくれた人 徳網沙也加さん(3年生)
私達は、ここ何年か水の硬度(Ca2+(カルシウムイオン)、Mg2+(マグネシウムイオン)を炭酸カルシウムに換算したもの)測定実験をしています。
2012年には、お酒とお酒を作る際に使われる仕込み水の硬度測定を行いました。その結果、お酒になったときは、水の硬度が約2倍に増加していました。この原因は、お酒の原料である米からCa2+(カルシウムイオン)、Mg2+(マグネシウムイオン)が溶け出るからではないか、ということで研究を行いました。
実験にあたって、まず、
(1)米からCa、Mgが溶出する。
(2)溶出量は、水のCa、Mgの種類、量により変化する。
という2つの仮説を立てました。そして、「純水で米を炊き出した場合」「Caのみ含んだ水で炊き出した場合」「Mgのみ含んだ水で炊き出した場合」「Ca、Mgの混合水で炊き出した場合」の4つについて、米からのCa、Mgの溶出量を調べました。
すると、予想に反して、「Caのみ含んだ水で炊き出した場合」「Mgのみ含んだ水で炊き出した場合」「Ca、Mgの混合水で炊き出した場合」のいずれの場合も、溶出量は水のCa、Mgの濃度が高くなるにともなって直線的に減少しています。つまり水のCa、Mg量に比例して米にCa、Mgが多く吸収されているのです。
つまり、仮説(1)とは逆に、米を炊く水のイオンと同種のイオンが直線的に米に吸収されることがわかりました。また、仮説(2)の「溶出量は、水のCa、Mgの種類、量により変化する」は、負の相関があることで支持されました。また、丹波地方の水道水で行った実験でも、混合水の場合と同じ結果が得られました。
■研究を始めた理由・経緯は?
私達が住む兵庫県は日本酒の名産地であり、また身近に造り酒屋があることから、地域に密着した実験をしようということでこの研究が始まりました。また、顧問の先生がお酒好きだったということも理由の一つです。
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
1日あたり2時間で1年。週に3日、行事やテスト期間はできませんでした。
■今回の研究で苦労したことは?
米から溶け出したCa2+、Mg2+を測定する方法を考えること、また出てきた結果をどのように整理するか、ということがたいへんでした。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
CaとMgをどちらも含んだ水で米を炊いたとき、どちらか一成分のみに注目するところと、グラフにきれいな一直線上に結果の数値がのるところです。
ポスター発表なので、聞いてくれている人達の顔を見ながら話す早さを変えるようにしました。また、質問があったときのために、実験の様子の写真や硬度の測定方法を図にしたものなどを印刷し、スケッチブックに貼っておきました。ポスターの文字を、遠くからでも読めるよう大きくしたことです。
■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?
「はかってなんぼ-学校編-」日本分析化学会近畿支部編(平成14年)
■今回の研究は今後も続けていきますか?
私達は3年生なので研究を続けていくことはできませんが、続けることができるなら、お米の精米歩合を変えたり、実際に甘酒を作ったりして、お酒の硬度上昇の原因を探っていきたいです。
■ふだんの活動では何をしていますか?
天体観測や地域のイベント(青少年のための科学の祭典など)に参加したりしています。
■総文祭に参加した感想を聞かせてください。
いろいろな方々に分かりやすく説明するというのは大変でしたが、たくさんの方に自分達の研究に興味を持ってもらえたのは、とてもうれしかったです。また、いただいた質問や意見から勉強させてもらうことも多く、貴重な体験になりました。入賞はできなかったけれど、とても楽しい3日間でした。
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