スマホを使ったクイズラリー登場ーー文芸部が文化祭を変える!
〜学校をノベル空間にした!! 「学会」でも注目
神奈川県立柏陽高校 文芸部 根本美由樹さん 小澤詩織さん(3年)
(2014年9月取材)
文化祭と言えば、模擬店、演劇、バンド、作品発表…。神奈川県立柏陽高校では、2014年9月、ITを利用したロールプレイングのリアルとスマホのゲームで、いろいろな文化部の発想を取り入れた文芸部の新しい取り組みがありました。スマホを使ってネットのバーチャル空間を取り込んだリアルな学校空間を創り出す、今までにはない、新しい文化祭を模索したのです。文芸部員の作ったノベルゲーム『リンの奇妙な冒険』がそれです。
ゲームは、文化祭の来場者が人気展示の待ち時間や移動中に、ノベルラリーを楽しむもの。このゲームができるまでは、論文となり、IT分野の大学のエラーイ先生方が研究成果を発表し合う情報処理学会で発表され、現在、日本のエラーイ先生方が書いた論文が集まる国立情報学研究所の論文データベースにも掲載されています。
<国立情報学研究所の論文データベースへのリンク>
『高校文芸部による文化祭でのスマホを利用した作品展示の試み』
そのゲームと、それに取り組んだ高校生たちの奮闘を、文化祭等の学校行事を考えたりしている高校生たちに参考に、紹介しましょう。
殺人犯が潜む教室を探せ!
物語を楽しみ+ゲームに挑み+リアルに文芸部にアクセス
ゲームの概要はこうです。主人公、柏陽高校のリンは、高校に潜む殺人犯に命を狙われています。それを未来から来たDr.コバに知らされる。Dr.コバのメモを頼りに殺人犯が潜む教室を探し当てるゲームです。物語は時代をさかのぼります。古代エジプトに飛ぶ「スフィンクスは動かない」→中国の龍門石窟を舞台に「延昌邂逅」→イスラムを舞台にした「黄金の種」→ルネサンス期の「ファントム・エッグ」。どの舞台にも前世のリンが登場し、各部は一話完結し、読みたい部からアクセスできます。
ポイントは、バーチャルには、スマホのQRコード読み取りで簡単にアクセスし、リアルには校内のチェックポイントを回ること。もう1つのポイントは、クイズの仕掛けです。各部の最後にクイズが出され、それが犯人探しのヒントになります。読者はナゾ解きの面白さをワクワク感じながら、ゴールまで読んでいける。ナゾが解ければ、ゴールの文芸部受付を訪ね、バックエンドストーリーにアクセス。最後のどんでん返しまで、キミはたどり着けるかな?
読者の行動イメージ
(1)ゲームに使うメモを受け取ってもらう
(2)QRコードでサイトにアクセスしてもらう
(3)小説を読んでもらう
(4)校内のチェックポイントに行ってもらう
(5)謎解きをしてもらう
(6)最終ゴールで答えを言って最後のQRコードをもらう
スマホでネットのバーチャル空間を取り込んだ学校空間づくりの試み
~高校生の創ったロールプレイングゲーム物語
数学は大の苦手、赤毛のアンの好きな文学少女が、見よう見まねでプログラミング。「HTMLとやらでウェブが作れるらしいね…」って、なんか怪しげなことを言っていたのは、柏陽高校文芸部の根本美由樹さんです。だいじょうぶなの、ほんとに作れるの?(笑い)
もう1人の女子は、ファンタジー系小説が大好きな小澤詩織さん。文芸部だけでなく数学部にも所属。彼女、少しだけプログラミングができるんだって。少しだけ、ね…。去年の春、根本さんは「小澤さん、一緒にやろうよ」と誘いました。こうして2人の高校生のロールプレイングゲーム物語は始まりました。
根本美由樹さん×小澤詩織さん
「きっかけは高1の時だったね」
「根本さんと私はクラスメートになった」
「私は文芸部+デザインワーク部」
「私は高1の時はデザインワーク部、高2から文芸部と数学部に所属」
「文芸部は小説や文芸作品を書いて、部誌を発行して発表する」
「でも校内の人しか読めないんだよね」
「そこで、高1終わりに、私は、ホームページを作ってみたけれど、閲覧数は少ないし、逆に部誌は売れ残るし」
「進級したら、新入部員も減ってしまった」
「だから、PRしようと思ったんだよね。いろいろな人に見てもらって、小説を読んでもらおうと」
「特に、中学生に知ってもらって、入学したら、入部してもらう、って」
「アピールするなら文化祭しかないと思った。」
「いままでより、もっと面白いことしようよ、と」
「小澤さんと2人でディズニーシーに遊びに行ったとき、ラリーゲームが面白くって」
「あの実物ラリーをスマホでロールプレイングできないかなと思ったのが最初のきっかけだったよね」
「こんなことを文芸部でも今後していくのもありだし」
「この高校では、こんな面白い文化部もあるんだと、中学生へ高校のPRにもなる」
「そうなれば文芸部も面白いから、良いと」
「学内最大イベント=文化祭で新感覚のナゾ解きロールプレイングゲームを」
「前例を調べよう」
「全国どこにもやってない……できるかな?」
「私はプログラミングなんて全然できなかった。でも、ホームページを作ったときも、最初はなにもわからなかった。ホームページはHTML*1ってもので作れるらしい、って(笑い)。私、その程度の知識しかなかったから。あとはCSS*2とかFTP*3というものの存在を情報の先生に教えてもらって、手打ちして作った。それでも出来たんだから、今回も出来るって。それに今回はひとりじゃない。小澤さんのプログラミング力、心強いよ」
文系・理系の融合した、新しい文化部の試行は動き出しました。まず文芸部得意のシナリオ作りから。文芸部員で手分け、共同執筆しました。7月、原作「リンの奇妙な冒険」ができました。ストーリー作りの約束ごとを決めました。どの時代にもリンが登場・必ずクイズを出題することにしました。
ポイントは、文化祭に来た中学生・高校生が、中学の各教科の勉強が楽しめつつ、遊べるパズルのようなクイズにすること。具体的には、part2では数学、part3では国語の漢字、part4では高校入試では常識、part5では英語に関連する知識を元に考え、それらを面白くできるようにと、作りました。
そういうものを文化祭の催しで出していくことで、スマホという高校生に身近な機器を用いた新しい文芸作品を作ることを目指しました。
その結果、文芸部が高校生にとって目新しい先端的な存在として示していけるんじゃないか。さらに、文化祭の開催されるリアルな学校空間が、ネット上のバーチャル空間とないまぜになったノベルを提案できるんじゃないかな。
しかしなんと言っても最大の難題は、それをスマホに載せるためのプログラム開発でした。
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