ハイスクール白書★それぞれの肖像

ものづくりに目覚めた!飛行機を作りたい!~愛知県立豊田工業高校機械科旋盤コースの仲間たち

「機械って面白そう」「旋盤やりてー」と、ものづくりの夢を持った中学生がいます。そんな彼らの「夢」を支える進路の1つが工業高校。実は、工業高校卒の、大手企業での、もの作り・開発職の就職率は群を抜き、工業高校出身→社会に役立つ理工系人材というキャリアは、大きく評価されています。愛知県立豊田工業高校、機械科旋盤コース2年生の5人が、工業高校を選んだ理由、工業高校生活、将来の夢について話してくれました。

 

(2016年6月掲載)

佐藤章冶くん~旋盤で腕をしっかり発揮したい

僕は父がトヨタで働いていて、車とか乗り物をいじっている姿を、けっこう小さいときから見て育ちました。機械って面白そうだなと。普通科高校進学はまったく眼中になくて、中2のころから工業高校志望です。高2の夏までに旋盤3級を取りました。高3の夏までに2級を取るのが課題です。2級は3級と比べてものすごく難しいんです。2級は、機械製作の会社に入った人が、熟練してからやっと取得するくらい。

 

部活は、生産技術部です。生産技術部の部長やらせてもらっています。楽しい(笑い)。授業の課題研究は僕らの場合、目標は旋盤2級取得だけど、他の班では、缶サット甲子園を目指す人もいます。缶サットというのは、空き缶に超小型センサーなどを搭載したロケットを打ち上げるアイディアや技術力を競う全国大会です。

 

高2の去年夏、インターンシップで機械製作の会社に行き、かなりよくしてもらい、面白そうな会社と思いました。うちの高校の卒業生の就職先は、工場のライン作業でなく、設計、研究、試作のようなもの作りの中核部門の採用が多いというんですね。将来は旋盤で腕をしっかり発揮できればいいです。

 

中村和暉くん~将来は、飛行機を作ってみたい!

小さいときから電車など乗り物が好きでした。工業高校を選んだのは、自然とそうなったみたい。これぞ工業高校ならでは、というのが英語の授業。すごいユニークなんです。英語の先生が、旋盤とかノズルとか工業用語の入った英会話のテキストを自前で作ってくださって、それで英語の勉強をします。就職した先輩が、「海外研修に行くので、あの英会話のテキストが欲しい」って、よく母校を訪ねてくるんですよ。

 

去年の卒業生は、トヨタに20人採用されたそうなので、励みになっています。旋盤職人の需要は高いそうだし、今、就職はいい調子と思う。その本物の技術とかノウハウを生かして将来につなげているって感じです。将来は、飛行機を作ってみたい!名古屋で国産初の小型ジェット旅客機『三菱リージョナルジェット(MRJ)』を開発していますよね。ああいうのを作ってみたいです。大学に行った人は、開発方面が有利と思うんですけど、僕らの場合は実際にものを作ったりする方が得意なんで、やっぱりタイプがちょっと違う。僕らは作る方で頑張りたい(笑い)。

 

伊藤有生くん~図画工作好きが、工業高校にきて、金属加工に目覚めた

僕は、小さいときからとにかく図画工作が好きで、厚紙でいろんな模型を作りました。自分の考えで作っていくのが性に合っているのかなと思い、工業高校を選びました。将来の希望は、自動車関係の会社で働くことですけど、もっと欲を言えば、会社を作って自分で作ったバイクとか乗物を売れたらいいな。

 

一番思うのは、工業高校での金属加工が新鮮でした。図画工作の紙細工じゃなく、金属加工だと溶接したり、旋盤削ったり、ものを作るだけでなく、作ったものを動かせる。それがものすごく新鮮で、工業高校にきて、金属加工に目覚めた(笑い)。授業だけでなくて、大きかったのは部活。僕と佐藤君は生産技術部という部活をしています。エコカー大会とか電気自動車やロボットの競技会に参加することで、金属加工だけじゃなく、部活で、情報・電気系の勉強をして、ものを動かすことが広がったんです。

 

今一番やっていて楽しいことは、僕の場合、趣味のバイクです。高校はバイク禁止なんで、乗ることより、整備する側をしたいです。お父さんもバイクの整備士の免許を持っているし。

 

隅田龍始くん~迷惑かけたお母さんに恩返ししたい

僕はみんなのように工業高校を選んだ動機は、はっきりしてないです。でも家族は兄弟が多くて、お兄ちゃん2人とお姉ちゃんも機械系に進んでいるんで。中学の同級生で工業高校を選んだ人は少数派でした。けっこう母に迷惑を掛けたので、将来恩返しができたらなあ、と。迷惑かけたこと? それはいろいろ(笑い)。

 

どういうところに将来行きたいかも、あまり明確には決まっていないんですけど、とりあえず何か製作できる所につければいいなと。入学していろんなことを学ぶようになってからは、ものを作ることに関する知識をいろいろ教えてもらって、けっこう難しいなと思うこともあるんですけど、難しかったことをちょっと乗り越えて、作ることをしたいと最近思うようになりました。

 

部活はバドミントン部です。一番落ち着けて楽しいのは、家族と一緒にいるとき。上のお兄ちゃんは結婚していて姪っ子がよく遊びに来るんだけど、それが楽しい(笑い)。下のお兄ちゃんはもう就職して社会人になるんですけど、よくその話をしたりとか。あと親とはなんでも話せて、普通のときに話します。晩ご飯の時とか。なんの話?…お母さんと洗濯の話とか(笑い)。うちのお母さん、新しい洗剤選ぶのが好きで、今日はこの洗剤使って洗濯しよとか言って(笑い)。

 

大澤扶香さん~マイナー系ロックバンド好きの紅一点。夢は匠の職人

私は旋盤コースで唯一の女子です。高2全体でも240人中女子は4人。高1は女子14人と少し増えましたが。おじいちゃんが金型職人で、旋盤、プレス機、ボール盤とか工作機械に囲まれて育ちました。小学生の時、豊田工業生がやってきて、ペットボトルのロケットを飛ばした経験が面白くて、中1の時、担任の先生に「私も豊田工業高校に行きたい!」って宣言。友だちは「エッ!」。絶句。でも母に「本当に好きなことをやんなさい」と言われて。

 

工場のIT化、自動化が進んでいますけど、将来は、おじいちゃんのように自分でものづくりする職人に、私はなりたい。(きっぱり言い切った。)旋盤って、鉄鋼とか円筒形の素材を回転させながら、刃物で削っていくんです。工作機械の基本の1つですけど、旋盤の資格に2級資格があって、直径30ミリの円筒を削っていくとき、誤差100分の1~1000分の1ミリというすごい精度が求められる。高3の夏過ぎたら、すぐに就職活動が始まるし、それまでに旋盤2級取得が目標です。ものづくりは好きだけど、理数系の勉強はすごい苦手(笑い)。大嫌いじゃないですけど、すごい苦手(笑い)。数学も苦手です。だから今大変です。化学になるとちょっと…(苦笑)。

 

旋盤以外でもいろんな資格を取ろうとしているんですけど、部活との両立がたいへんです。部活は、小学校以来続けている柔道部です。工業高校の暮らしは、めっちゃ楽しい!(笑い)。私の場合、高2になって友だちもできたし、男子はかたくるしくなく抵抗ないんです。女子らしく、やっぱ、寂しいと思うこともたまにあるんですけど、中学の時仲のよかった女子と今でも遊んでます。プライベートでは、マイナー系のロックバンドが好き。ブルー・エンカウントとかヒトリエというバンド。あまり知らないと思うんですけど(笑い)、わたし的には息抜きになっている。よく名古屋まで、ライブ、聴きに行きます。お姉ちゃんとか…あと同じ学校のカレと(笑い)。

 

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