小坂真琴くん 灘高校[兵庫]2年
(2015年4月掲載)
『幕が上がる』は、地区大会敗退で代をかわってから、新任の先生や転校生とともに、全国大会出場を目指す、地方の高校演劇部の1年間の物語。
ノリで部長に就任した主人公は、演劇にそこまで本気になれないまま「なんとなく」部の運営を始め、自分の性格や現状に不満が膨らむばかりだった。
ところが、強力な新任の先生と転校生を迎え、自分がなぜ演劇をやるかを見つめ直し、責任者として全国大会に目標を定める決意をする。その後、真剣になったからこその苦悩を感じ、全国大会のレベルやプロの演劇の世界も垣間見ることで厳しさを知る。ほかのメンバーもそれぞれの事情を抱えながらも、思いをぶつけることで徐々に団結していく。結局「今やっていることが何になるのか」という現実的な問いに答えは見いだせないまま。それでも、演劇に自分の人生さえも賭けるほどの魅力を見出し、今自分達が作り上げている演劇こそが「何よりも現実」だと感じる。
普通の青春映画であれば、成長の締めくくりとしての「目標達成」に焦点が当てられることもあるが、実際にはそんなサクセスストーリーのようにうまくはいかない。いろんな悩みを抱え、一つのことに打ち込めなかったり、打ち込めたけどその先にある挫折を味わったり。『幕が上がる』では、そんな「本気」で戦った日々自体が輝いていたということを実感できる。僕自身、映画を見ながら自分の高校生活を振り返り、本気になることの大切さ、難しさを強く感じた。
主演を務めたももいろクローバーZは本格的な演技は初めての挑戦で、演じる人として成長を遂げる演劇部員と見事にオーバーラップする。また、メンバーの加入や、夢を叶えていく流れはももクロ自体の歴史とも重なる。ももクロ本人に関係付けられたセリフもあり、ファンであればなお一層楽しめる工夫もある。
劇の中でひたすら進み続ける銀河鉄道、映画の中で本気で進み続ける富士ヶ丘高校演劇部、現実世界で一生懸命進み続けるももいろクローバーZ、その重層性が物語の魅力を一層引き立たせる。
※高校・学年は取材時