映画の原作、小説『幕が上がる』を読んで

試行錯誤し表現する姿は、音楽に取り組む私も共感

谷原心蕗さん 立命館宇治高校[京都]3年

(2015年4月掲載)

『幕が上がる』平田オリザ(講談社文庫)
『幕が上がる』平田オリザ(講談社文庫)

 全体的にシンプルなストーリーの小説『幕があがる』は、半日で一気に読み切ることのできた爽快な作品でした。

私は演劇をしたことはないのですが、フルートをお客様の前で演奏させていただくことがあります。そんな私にとって、作中で主人公が述べていた演劇の世界には共感する経験がたくさんありました。例えば、舞台上で小さなミスをしてしまった時に焦ってしまい、練習では完璧だった箇所もドミノ倒しのように続々と間違えてしまう様子が描かれています。その緊張感や絶望感、焦燥感が伝わってきてハラハラする部分ですが、私にも演奏中にこのような経験があり、さらに「早く終われ」と思ったという部分も自分と同じでした。また、演奏の調子が良くてステージが楽しくなり、最高な気分を味わっている時の自分の感情は、「もっとこの瞬間が続けばいいのに」や「拍手の質が違うのがわかる」と記述してある作中の演劇部の感覚と全く同じだと感じました。

 

左から2番目が谷原心路さん。コンサートにて
左から2番目が谷原心路さん。コンサートにて

おそらく、手段は違うけれど、自分の内に秘めたメッセージをいかにお客さんに伝えるか、自己分析をしながらどう表現するか試行錯誤する姿勢は、「舞台上で人に何かを伝える芸術」という点で演劇も音楽も通ずるところがあるのではないでしょうか。

この作品は演劇部の高校生たちが部活、進路、人間関係に悩みながらも演劇に向き合い、上を上を目指すストーリーです。高校生なら誰でも、共感できる部分が見つけられる作品だと思います。演劇に取り組みながらも、日常生活のふとした瞬間からヒントを得て成長していく主人公たちの姿に注目しながら、ぜひ読んでみてください。


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