(2015年4月取材)
※文中の学年は2014年度のものです
生徒会を、学校をよりよくしたいという、全国の高校生徒会の役員が集まる全国高校生徒会大会。第3回大会が今年も春休みの東京で開催されました。2015年3月30日~4月2日の4日間の日程で行われ、北海道から鹿児島まで全国から77校、178人が参加しました。
初日と2日目のセッションは、昨年までと同じ衆議院議員会館で行われました。
今年のセッションのテーマは、「『生徒会マニフェスト』を作ろう!」。集まったメンバーがグループに分かれて、「自分の学校のどんな状態が理想だと思うか」「どんなことができる生徒会にしたいか」「生徒とのどのような関係が理想だと思うか」について話し合い、「理想の生徒会」を体現する政策を考え、プレゼンします。
1日目はまず「生徒会の悩みを解決!」というテーマで、日頃生徒会活動で抱えている悩みを、同じような悩みを持った仲間同士共有し、悩みへの対処の仕方や、よりよい生徒会活動への携わり方を探りました。
2日目のセッションは、1日目とは異なるメンバーとチームを組みます。なるべく違う役職の人が集まるように組まれたチームの中で、この大会独自の「生徒会(Council)」を作り、生徒会長、副生徒会長、会計、書記などの役職を決めます。そして、各メンバー自身の学校の生徒会事情をもとに、その「生徒会」が抱える課題と現状を決めます。
ココからが今回のキモです!
各Council内で考えた課題を自分たちで考えるのではなく、14チームの課題をシャッフルして、他のチームが出してきた課題をもとに、「仮想の高校の生徒会」の条件設定をして、解決策を考えるのです。こうすることで、各学校内ではもう解決策が見つからない、という状態になっていた課題を、多種多様な活動を行っている仲間たちが別の角度から見ることで、固定観念にとらわれない・かつ有効な解決策を打ち出すことができます。そして、そのような解決策を実現できるような、理想的な生徒会とはどのようなものかを考えて「生徒会マニフェスト」としてまとめ、3日のプレゼンで発表します。
■生徒会の課題は実は全国共通! 生徒会をよくすることは、学校全体がよくなることにつながる
3日のプレゼンは、会場を移し、劇場のステージで行われました(@座高円寺2)。照明やスクリーンも本格的! 会場を巻き込んだり、客席から声援が飛んだりするなごやかな雰囲気の中、様々な演出を凝らした、熱のこもったプレゼンが繰り広げられました。
各チームに与えられた「課題」の共通点は、主に
1.生徒が生徒会活動に関心がない…広報紙を読んでもらえない、選挙が形骸化している
2.先生との信頼・協力関係ができない…企画案を出しても反対される、話を聞いてもらえない
3.生徒会の組織がうまく機能していない…各委員会との関係、業務の偏重
です。そこに各学校の背景が絡んで、一筋縄では解決できない状態になっているということで、全国どの学校でも起こり得る問題です。
それに対して各チームが考えた改善策は、
・今ある組織や活動の役割や位置づけ、重点の置き方を変えて、問題に対応する
・生徒会の体制そのものを根本的に見直して、新たな組織や制度を作る
・生徒会役員の意識や働き方を見直す
などの観点から、それぞれの課題に迫るものでした。
いずれも、生徒会と生徒・先生との距離をより近づけ、それぞれの希望や考え方を理解し合えるようになることで、皆がhappyな学校生活になることを目指しています。
会場の投票で選ばれた最優秀賞と、実行委員会・審査員の方からの賞を受賞したチームのプレゼンの一部を紹介します。
生徒会はフレキシブルなモチである! ~最優秀賞 2班「大とろック」
[課題]
部活も、勉強も行事もそこそこ熱心な、共学の公立高校(中高一貫ではない)。しかし、生徒会は各委員会や会計監査の上に君臨する形で三者の関係は良くなく、さらに生徒会が作る広報紙もほとんどの生徒が読んでくれない。
[マニフェスト]
このチームが考えた解決策は、「あえて言おう、もちであると!」。もち…?!
左のスライドのように、「生徒会」「(行事等に関わる)委員会」「(予算決定に関わる)監査」を同じ形の菱もちとして、生徒会が常に他の二つを支配するのではなく、状況によってフレキシブルに主導権を交代する(=もちの重ね方が変わる)「三権分立」を提唱しました。例えば、文化祭では文化祭実行委員会が、予算決定では監査が決定権を持ちます。
ただし、予算を作るのは文化系・運動系の各部活、各委員会、文化祭実行委員会から選ばれた生徒代表による第三者機関(=鏡もちの上のみかん)で、監査はあくまでその過程の見張りと決定の役割を担います。また、予算を作るメンバーも、毎年各部活や委員会からランダムに選ぶことで、生徒自身に予算編成への参加意識を高めることができます。
さらに、皆が読んでくれる広報紙作りはどうしたらよいかを考えるために、チームのメンバーが、自分たちのLINEのグループのメンバーの高校生に対してアンケートを行いました。2時間で全国から集まった回答は387人分! その結果は、「生徒会紙をちゃんと読んでいる」と答えた人は6人に1人以下、読まない理由は圧倒的に「魅力がないから」でした。やっぱり…。
そして同じアンケートで、広報紙で読みたいと思う記事の内容を尋ねたところ、「部活等の活動紹介」「先生の意外な一面」「学校あるある」等が挙げられました。こういった、生徒自身に読みたい記事を聞いて反映することで、広報紙の、ひいては生徒会活動自体への関心を高めることができる、ということでした。
モチにふさわしく粘り強いプレゼンと、どこの学校でも実現可能性の高い提案によって、参加者投票で最優秀賞を獲得しました。
やる気のない者はリコールもあり ~実行委員長賞 4班「おでん」
[課題]
1.生徒が生徒会活動に関心がない 2.顧問の先生も消極的 3.そもそも生徒会役員自身がやる気がない という状態で、生徒の希望も実現することがないので生徒会への期待もなく、生徒会の存在意義すら問われており、負のスパイラルに入っている。それが「おでん大学附属高校」の課題
[マニフェスト]
まさに三重苦と言うべき状態の課題に取り組んだこのチームのメンバーが考え抜いた解決策は二つ。一つは、生徒の意見を先生方に粘り強く伝え、先生に「生徒会は生徒の代弁者であること」をアピールします。生徒の企画や意見が通ることによって、生徒会に対する関心を高めることを目指します。その時、生徒からの意見を集めるためにアンケートを行い、その一つひとつに対して生徒会が真摯に向き合う姿勢を示します。その際、どう考えても実現が難しい希望についても、はじめからスルーするのでなく、きちんと理由をつけて「なぜダメなのか」を説明し、納得してもらう努力をします。生徒は、ダメでもきちんと理由が返って来るので、次から意見が出しやすくなります。
そして、もう一つがやる気のない生徒会役員をなくすための、リコール制度の導入です。全クラスの代表者による評議委員会が、生徒会執行部の活動報告を受け、その中でやる気のない役員があった場合は、評議委員会に本人を呼んで話を聞き、行動を改めるチャンスを与えますが、それでも改められない場合には、最終的に全校生徒のリコール投票を行うことになります。
全生徒が生徒会役員の人事に関心を持つようになることで、今までの悪循環を好循環へと変化されることができるようになるのです。
「昨日の話し合いではいちばんたいへんそうだったけど、よくここまでまとめました!」ということで、実行委員長賞を獲得しました。
相思相愛なら責任と自覚が芽生える
~審査員特別賞(西野様賞)
3班「NSC48とゆかいな仲間たち」
[課題]
岩手県の県立高校。全校生徒600人で、生徒会役員は12人。生徒の意見を代弁する組長会議もあるにもかかわらず、生徒・生徒会・先生の三者が三角関係になってしまっている。
※メンバーに東北勢が多くいたのと、生徒会連盟がなく他校と連携が取りにくいため、「岩手県」になりました。
[マニフェスト]
このチームのキャッチフレーズは、ずばり「相思相愛」。生徒会が生徒、先生、選挙管理委員会と「相思相愛」になることで、今までうまくいかなかったことが良い方向に向かうようにしようというものです。
まず生徒との「相思相愛」。これは、何か新しい企画を実行しようとする時に、全校生徒にアンケートを取り、そのアンケートでどんな意見がどのくらい出たのか、結果としてどうすることになったのかを広報紙で生徒へのアンサーレターとして伝えます。生徒の声をきちんと聴き、応答することが「相思相愛」です。
時に生徒会活動の最大の難関となる先生との「相思相愛」。企画書を持って行っても、忙しい時には目を通してもらえなかったり、ざっくりしたままで持って行って「これじゃダメ」と言われたりで、結局ボツになることもあります。そんな時は、先生のスケジュールを確かめて事前にアポを取っておいたり、生徒の中で会議を重ねて企画を厚くしてから持って行ったりなど、先生に歩み寄ろう、先生の話もちゃんと聞こうとすることで、先生を味方にすることができます。
最後に、このようにうまく回るようになったその後を継いでいく生徒会役員の選び方。これは、生徒会役員の立会演説会の時に、選挙管理委員長に選挙の意味について話してもらったり、候補者の演説の後に質疑応答の時間を設けたりするようにして、生徒が候補者の政策をより深く吟味し、自分たちの思いを代弁してくれる人を選べるような場にします。つまり、選挙管理委員会との「相思相愛」。こうやって選ばれた人には、みんなに「愛」を届ける自覚と責任が芽生えるはずです。
…というプレゼンの後飛び出したのが、「相思相愛」のラップ! 会場のみんなを巻き込んだ「相思相愛」コールで、プレゼンは賑やかに閉幕しました。
→議長の尾井麻里さん(神戸女学院高校[兵庫]2年)に聞きました
「how」を考え、学校をよくするヒントを見つけよう!
■東の実行委員長を務めた三浦涼さん(東洋英和女学院高校[東京]2年)に聞きました
―第3回の実行委員長として、三浦さんがこの大会でいちばんやりたかったのはどんなことですか。また、それはどのくらい実現できたと思いますか。
ずばり、どれだけわたしたちなりの「第3回全国高校生徒会大会(nscc3)を作る理由」を見つけて、さらにそれを創造的に破壊した新しい大会を作り出していけるのか、という挑戦です。原点である第1回に参加していない人も数多く実行委員を務める中で、今までを当たり前に受け継いでいくのではなく、「なぜこの大会を行うのか」を考えつつ、現在の活発化した外務活動に適した新しいコンテンツを考えました。最近は外務活動が普遍化したために、逆にただただ生徒会連盟の会議に参加する人が多くなったり、実際に悩みを持っていても、もともとの学校環境が違うために、他の学校の案を取り入れることができないといったケースがチラホラと見られるようにもなったんです。ですから、この大会では、悩みごとに分かれた議論も行ったのですが、2日目の「生徒会マニフェストを作ろう」では、議論の際に改革の過程を重視してもらうことで、「what」ではなく「how」を考え、ヒントを見つけることができるようにひねりを加えてみました。
また私自身が第1回大会に参加した際、純粋に様々な刺激を受けたため、参加者の皆さんが少しでも新しい世界に踏み出すきっかけを作りたいとも思っていました。そのため4日目に自由参加での交流イベントを行うことで、生徒会役員という枠を越えた同世代の人との関わりを持ってもらいました!大会後も変わらずにSNS等を介して交流をしている姿を見ると、嬉しく思います。
―三浦さん自身、これまで生徒会大会に参加したことを、自分の学校の生徒会活動にどのように活かすことができましたか。
明確に「これを還元できた」ということはないのですが、全国の生徒会役員とのコネクションを手に入れたことは、とても大きな力となりました。閉鎖的な環境になりがちな女子校のため、他校はどうなんだろう?と思った時にすぐにSNSを通じて現状や意見を聞くことで、大会後もいつまでも広い視野と向上心を持ち続けることが出来ています。
―準備から当日の運営まで、実行委員長としてどんなことを心がけてきましたか。
大会当日を含めて、実行委員全員が何かしらの仕事を持ち、謙遜だとしても「役に立てなかった」と思うことを無くしたいと思い、仕事を振っていきました。
また、大会運営が偏った視点からのものにならないように配慮してきたつもりです。実行委員として大会を作り上げる側に回ると、どれだけ心がけたとしても、つい参加者の目線を忘れてしまいがちなので、宣伝するときにも、特に女の子が参加しやすいように、宿泊は強制ではないことをしっかりと伝えたり、参加者へ送るメールの内容を、初参加の参加者の目線に立つことでわかりやすくするようにしたりもしました。
―来年初めて生徒会大会に参加しようと思っている人たちに、メッセージをお願いします。
全国高校生徒会大会は、必ず皆さんに刺激と学びを与えます!自分の学校の生徒会活動に行き詰まってしまった皆さんの視野を大きく広げることでしょう。大会を楽しみにしつつ、校内での活動を力の限りがんばってください!
イベントで培った人脈などをフル活用して新しい取り組みへ
■西の実行委員長と、司会を務めた長澤生眞くん(灘高校[兵庫]2年)に聞きました
(長澤くんは、西日本の実行委員が出演するラジオ番組「ハイラジ」でも見事な司会を務めています。みらいぶで取材しています。詳しくはこちらから)
―第3回の実行委員長として、長澤くんがこの大会でいちばんやりたかったのはどんなことですか。また、それはどのくらい実現できたと思いますか。
まずは、より多くの都道府県、学校から参加者を集めることですね。第2回は71校から参加したのですが、今回は77校から参加したので、ひとまず達成したと思います。そして、このイベントから新たなmovementが起こることです。抽象的ですが、要するに、このイベントがきっかけになって、何か今までにないような取り組みが出てきて欲しいと思っています。そのために、参加者の皆さんにはこのイベントで培った人脈などをフル活用してもらいたいと思っています。
―長澤くん自身、これまで生徒会大会に参加したことを、自分の学校の生徒会活動にどのように活かすことができましたか。
自分の学校というよりは、僕が代表を務めていた関西生徒会連盟などの外務活動に活かしました。具体的には、責任を明確にするために代表を置いたり、第2回で得た人脈を活かして東京の団体と交流会を開いたりなどです。
―準備から当日の運営まで、実行委員長としてどんなことを心がけてきましたか。
準備の段階では、ひとまず大会の成功のためには何が必要かを第一に考えていました。また、参加者がどうやったら楽しむ事ができるかを中心に考えていました。当日は、参加者の前では常に笑顔でいる事を心がけていました。
―来年初めて生徒会大会に参加しようと思っている人たちに、メッセージをお願いします。
当たり前のことですが、自分の学校や地域に誇りを持ってもらいたいなと思います(笑)。やはり、生徒会役員はその学校の顔となる訳ですから、それくらいの誇りは必要だと思います。その上で、何が何でも吸収するんだ!というハングリー精神も持ってもらいたいですね。あとは、とにかく気楽に純粋に楽しんでもらいたいと思います。やはり、楽しまないと面白くないでしょうし、話も弾まないと思っています。
■全国高校生徒会大会HP
http://www.nscc3.com/
■全国高校生徒会大会Facebook
https://www.facebook.com/nscc.info
■全国高校生徒会大会twitter
https://twitter.com/nscc_3
■西日本の実行委員が出演するラジオ番組「ハイラジ!」
◇みらいぶでの取材記事はこちらから
「生徒会」を通して高校生ができることを考え、ラジオで発信する!
◇生徒会大会特集 放送予定
4月19日(日)23時~24時
エフエムあまがさき(82.0MHz)
可聴範囲: 尼崎市、西宮市南部、伊丹市、宝塚市南部、大阪市西部、豊中市、吹田市
※上記以外の地域で聴く方法はこちら
エフエムあまがさきのホームページhttp://fmaiai.com/
右下の方にある「INTERNET RADIO」のコーナーに、エフエムあまがさきが聴けるアプリが紹介されています。