「PFFアワード2014」映画ファン賞、観客賞受賞
(2014年12月掲載)
秋田での撮影にこだわった
--この作品は秋田で撮影されたと聞きました。なぜ、秋田で撮影されたのでしょうか。
佐藤:自分の小・中・高のサッカーの経験を基にした映画だったので、自分の思い出を撮るなら、自分の故郷の秋田で撮影したいと思いました。今は、もう5年くらい東京で生活しています。映画には、特に秋田らしい絵はないのですが、漠然とですが、秋田で撮ったらいいはずだっていうものがありました。最初、スタッフからは「秋田で撮る意味はあるのか」と言われたのですが、そこは自分が押し通したかったところでした。
--実際に撮影されてどうでしたか。
佐藤:合宿スタイルで撮影しました。東京で撮ったら多分、撮って家に帰って、また次の日来てみたいなスタイルになると思うのですが、合宿の方が絶対にいいものが撮れるはずだっていう思いがありました。結果的に秋田の空気感が、映画に出ている気がするんですよ。それには助けられた気がします。それは、モチベーションとか、映画に映っていない部分にもあったりして、意味はあったと思っています。
--主演のマネージャー役に堀春奈さんを起用したのは?
佐藤:堀さんとの出会いは、その2年前くらいに僕がスタッフで入っていた演技のワークショップに堀さんが来ていたことです。その時彼女は中学生でした。ただ泣いているお芝居ですが、強い印象が残りました。それで、その2年後に映画を撮る際に、堀さんに声掛けしようとしたんですけど、連絡先がわからなかったのです。
そのため、違うキャストで進めようとしていました。撮影1週間後にまた堀さんの名前をネットでいろいろと検索したんですけど出てこなくて、それで一旦諦めました。ところが、たまたまもう一度検索したら、ちょうど堀さんがその1日前にツイッター始めていて、ヒットしました。偶然です。彼女は覚えてなかったみたいなんですけど。涙の演技の印象が強かったので、それを信じてあんまりリハーサルも重ねることなく秋田に一緒に行ってもらいました。運命的ですね。
--撮影が始まり、どうでしたか。
佐藤:たぶん映画出演も初めてで、大変緊張されていましたが、その緊張するとか、はにかんだりするとかが、いわゆる女優らしくなく、逆に魅力だと思っていました。
撮影の3日目4日目くらいから、結構重いシーン、けんかのシーンとか最後の「がんばれ!」叫ぶシーンとかが始まりました。堀さんはシーン前には号泣していたんですよね。でも僕もそこで何も言わなかった。でも、堀さんがそのまま演技入ったら、ずっと最終日まで無敵モードというかな、スイッチが本当にカチッと入ったように変わったんですよね。なので、僕が演出どうこうするとかではなく、やはり女優なんだと思いましたし、また、役者さん同士がどんどん世界を作っていってくれたという感じでもありました。役者さんにすごく助けられた作品です。
--佐藤監督は、高校時代にサッカーされていたんですよね。
佐藤:選手としては、小中は秋田県選抜で、そこでイギリスに交換留学で、サッカーをしたくて行ったんですけど、それに失敗してしまって挫折してしまいました。僕の行っていた秋田南高校は県内ベスト4くらいの強豪でしたが、僕らの年はインターハイ予選ベスト16とか早めに敗退。高校サッカーの場合は冬の選手権が一番花形なので、たぶんスポーツ強豪校なら、インターハイ(予選)後も冬の選手権まで続けるのでしょうけれど、僕の学校は進学校だったので、普通に夏にやめるのが、普通でした。
僕自身も留学から帰ってきてからはサッカーがとても下手になっていたので、サッカーやるのがどんどん苦痛になっていって、だからインターハイ予選で負けた後に辞めたんです。
--当時は女子マネージャーいらしたんですか。
佐藤:1人いました。当時は、マネージャーに対して何も思わなかったですね。例年、夏でマネージャーは辞めるものでした。夏に僕が辞める時は、みんなに引き留められたり、逆に、冬まで続けると思われていたので、校内で無視されたり、結局仲直りしたりとか、そういうことがあったのですが、マネージャーに対しては、「なんで辞めるんだよ」って言う人は誰もいません。「例年夏でやめるものだから」と言っちゃえばそうなんですけど、同じ3年間やってきて、選手とマネージャーは違うのかと。「実はマネージャーのこと、みんなどう思ってるんだろう」みたいなところに着想を得たというか、マネージャーの存在っていうものを、いろいろ考えるようになったんです。
--その女子のマネージャーの方にお会いされたんですよね。
佐藤:会いました。でも、撮るのが決まってからではなくて、映画とは関係なく、久々に会おうと。その時に、マネージャーの活動を詳しく知りました。掃除をしていたのは知っていましたが、テーピング用テープとかを買っているのは知りませんでした。テープは無限にあるもんだと、無駄使いしていましたね。彼女が、当時マネージャーとして、何が一番むかついていたのかなども知りました。そういう日々のむかつくことを全然気付けなかった部分が多かったので、今回はそれも入れました。
--映画はいつから撮っているのでしょうか。
佐藤:サッカーを辞めて特にやりたいことがなかったので、とりあえず東京に行って何かやりたいことがみつかったらいいなあと大学に進学しました。でも、サッカーに代わる、やりたいことがなかなか見つからない。結局気がつけば就活時期になって、就職活動始めたんですけど、何かを見つけたいという思いは高くなりました。やっぱりサッカーやっていた時を思い返してしまうんです。そういうふうに後悔して生きていくなら、とりあえず新しくそのくらい情熱を注げるものを探そうってことで、映画を始めたって感じです。それで、就活はやめて、4年生になるとき、もう一つ1年制の映画学校にも入り、大学に通いながら、映画も撮り始めたというわけです。
『ガンバレとかうるせぇ』予告編
『ガンバレとかうるせぇ』主演の堀春菜さんインタビュー
「役者になるという夢に近づきつつある。一つ一つていねいにがんばってやっていきたい」
同じくPFFアワード2014で入選した『流れる』で、撮影・録音・編集を担当した松永侑君(福岡県立伝習館高校2年)が論じます
『第36回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)』
上映日程もこちらから: http://pff.jp/36th/
【京都】12月13日(土)~19日(金)、2015年1月3日(土)~9日(金) 京都シネマ
【名古屋】12月18日(木)~21日(日) 愛知芸術文化センター
【神戸】12月20日(土)~23日(火・祝) 神戸アートビレッジセンター
【福岡】2015年4月24日(金)~26日(日) 福岡市総合図書館