「役者になるという夢に近づきつつある。一つ一つていねいにがんばってやっていきたい」

『ガンバレとかうるせぇ』主演のマネージャー役を演じた堀春菜さん(高校3年生)インタビュー

(2014年12月掲載)

マネージャー役を演じた堀春菜さん(高校3年生)
マネージャー役を演じた堀春菜さん(高校3年生)

マネージャー役の気持ちはよくわからなった

--映画に出演したきっかけは何ですか。

堀:小さい頃から、女優になりたいと思っていて、中学生の時に、佐藤監督の母校で演技のワークショップをみつけ、そこに参加したんです。その時に、いろんな監督さんもおられたのですが、佐藤監督が見ていてくれて、「2年後くらいに映画を撮るんだけど、出てくれる?」と声をかけてくれました。すごくうれしかったです。そして、2年以上たっていたんですけれど、「ガンバレとかうるせぇ」を撮るということで、わざわざ私を探してくれて、連絡くれて、出演が決まりました。

--ワークショップのあと、何かやっていたんですか?

堀:ワークショップ後、監督に声をかけてもらうまでの2年間は、とくには何もやってないです。普通の学校生活を送っていました。ちょうど監督に声を掛けてもらう1か月前に、舞台に出ましたが、ものすごく楽しかったです。

でも、ずっと映像をやりたかったので、佐藤監督に声を掛けてもらったことをきっかけに、事務所は入ってないんですけど、自分のできることからやっていこうかなって、今動いているところです。

--映画の自分の役に対してどう思いました?

堀:最初は台本読んだ時は、マネージャーさんの気持ちっていうのは、本当はちょっと理解できませんでした。中学の時は陸上部で、高校は最初の半年だけですけど体操部で、どっちかというと選手の側だったので。

野球部のマネージャーをしている友達がいて、野球部の男の子たちはマネージャーにちゃんと感謝の気持ちを伝えたり、誕生日にはサプライズやってあげたりとかして、けっこう仲いいみたいです。でも、そのマネージャーも見に来てくれたんですけど、「非現実ではなかった」と言ってくれました。

 

泣いて泣いて演じたラストシーン

--演じてどうでしたか。

堀:そうですね。すごく考えました。秋田に1週間、合宿で撮影に行ったんですけど、後半の方はカットかかるごとに泣いて泣いて。監督に「やっぱわかんないです」って泣いて。いっぱい話して。そういう機会をいただけたことは本当に今は感謝の気持ちです。

--どんなことを監督は言ってくれたんですか。

堀:ラストの「がんばれ!」って言うシーンは、グラウンドの外から走って、最後に言うのですが、監督はグラウンドの中にいて、私は外にいて、「用意、スタート」で走るんですよ。もう不安すぎて、「ラストどうしよう」って思って、「もうすごい不安なんですけど」って言ったら、「今までやってきたことを信じて、もう俺は言うことないから。相手役の(細川)岳さんとかも、中でちゃんと待っていてくれているから、みんなのこと信じて走ってきて」って言っていただけて、号泣しながらパーンって走った記憶があります。

--他に大変だったところはありますか。

堀:けんかのシーンですね。本当はけんかではなく、ビンタだけするはずでしたが、1回目撮った時に、ビンタしただけでは、全然すっきりしなくて。監督に「私もっと行きたいです」って言ったら、「じゃあやってみて」って言ってくれました。(撮影では)ちゃんと部員の人とかもけんかを止めに入ってくれたりしました。

--抑圧された感情を思いきり出した感じがしましたね。

堀:痛かったですよ。でも、そうやってちゃんと自分の意見を言ったら聞いてくれる監督で、監督も自分の考えていることをちゃんと伝えてくれたので、「もっとちゃんとがんばらなきゃな」って思いは日に日に強まりました。「いいものにしたいな」って思ってやっていました。


チャレンジするのを学校の先生たちも応援してくれている

--学校に通っているので、撮影は、春休みとかですか。

堀:いいえ、撮影時期は11月でした。学校の先生に話をして、「ちょっと休ませてください」って言って。単位制高校の総合学科に通っています。単位制なので、「単位が取れるようにちゃんと自分で計算するなら、やりたいことやりなさい」って言ってくれる先生方でした。お母さんたちも、応援してくれました。

--学校の先生は応援してくれましたか。

堀:応援してくれます。「夢に向かってチャレンジする力を育てよう」という学校全体の考え方のようで、「自分のやりたいことがちゃんと見つかったなら、やるだけやればいいんじゃない」みたいなことを言ってくれる先生たちです。「もちろん勉強とかもちゃんとするんだよ」と言われるんですけど。だから本当に、ありがたいです。

--これから将来はどうしようと思っていますか。

堀:将来役者になりたいです。役者になりたいって思っていたのは小学校1年生の時から思っていたんですけど、今こうやってチャンスいただいて、夢が現実に近づきつつあるので、一つ一つていねいにがんばってやっていきたいと思います。

--進学や就職といった進路はどうしますか。

堀:通信の短期大学に行こうかなと思っています。専門学校に行くことも考えましたが、先生に「忙しいから、その2年間は活動とかできなくなるよ」と言われて、それはちょっといやだなと思ったんです。考えた結果、通信制だったら時間を作れるので、通信で心理学を学ぼうと思っています。

--学校の授業は何が好きですか。

堀:私が好きな授業は、写真表現の科目と、世界について取り上げる科目です。写真の科目は、フィルムカメラをモノクロで使っていて、学校にある暗室で自分で撮った写真を焼くという、なかなかできない体験が1年かけて勉強できるので、すごく楽しいです。世界についての科目は、貧困とか戦争とかについて1年生から3年生まで学年関係なしにみんなでディスカッションとかしたりします。いろんな知らない世界を知れて、とても楽しいです。


日常を描いた映画や小説が好き

--好きな映画とか本とかありますか。

堀:好きな映画は、園子温監督の『ヒミズ』とか、『半分の月がのぼる空』、『花とアリス』とかです(※)。映画はなるべく劇場で見ようと思っています。迫力とか全然違うし、集中もできるので、劇場で見る方が好きです。

--じゃあ、本は?

堀:小説が大好きです。重松清さんが大好きで、特に『きみの友だち』とか『エイジ』とか、中高生が主人公で、大きな事件が起きるわけじゃないけど、共感できるものが多くて。その世界観が好きでよく読みます。今回の『ガンバレとかうるせぇ』も、大きな事件は起きないけど、日常の中でちょっとずつのずれとか葛藤とかが描かれているんです。『花とアリス』とかの映画もそうですが、日常を描いているものがすごく好きです。


※『ヒミズ』は、染谷翔太、二階堂ふみ主演の2012年の園子温監督の作品で、2001-03年「ヤングマガジン」掲載の漫画。『半分の月がのぼる空』は、橋本紡の2006年のライトノベル作品を、2010年に忽那汐里などにより、深川栄洋監督が映画化。2監督ともPFF出身で、園監督は87年にグランプリ、深川監督は01年にアワード入選。『花とアリス』は、2004年の蒼井優と鈴木杏主演の岩井俊二監督作品で、その前日潭が長編アニメーション『花とアリス殺人事件』(予告ページ http://hana-alice.jp/)として映画化される(2015年2月公開)。

堀春菜さんからサインをいただきました。左は「PFF」のパンフレット
堀春菜さんからサインをいただきました。左は「PFF」のパンフレット

『ガンバレとかうるせぇ』予告編

『ガンバレとかうるせぇ』佐藤快磨監督インタビュー
ベースは監督自身の高校サッカー部経験。女子マネージャーの視点で描く

『ガンバレとかうるせぇ』レビュー

同じくPFFアワード2014で入選した『流れる』で、撮影・録音・編集を担当した松永侑君(福岡県立伝習館高校2年)が論じます

『第36回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)』

上映日程もこちらから: http://pff.jp/36th/

【京都】12月13日(土)~19日(金)、2015年1月3日(土)~9日(金) 京都シネマ
【名古屋】12月18日(木)~21日(日) 愛知芸術文化センター
【神戸】12月20日(土)~23日(火・祝) 神戸アートビレッジセンター
【福岡】2015年4月24日(金)~26日(日) 福岡市総合図書館

 

釜山国際映画祭では、アジアの新人監督作品のエントリーの12本に選ばれました。

釜山国際映画祭HP

続報!

新進女優、堀春菜さんの名演技は、
部活女子マネものを切り拓く!

NHKのミニミニ映像大賞でもグランプリを取りました!

堀さんは、PFF後もアジアで知られる国際映画祭でレッドカーペットを歩いたり、TAMA映画祭では、新人女優賞にもノミネートされたり、益々活躍されているとのこと。


さらに、最新情報としては、12回目になるNHKのミニミニ映像大賞が、今年も12月7日に発表されましたが、堀さん主役の作品『time』がグランプリを受賞しました。(監督/脚本/編集:中川駿)

今度は、陸上部の女子マネージャー役に扮しました。わずか120秒の中で、言葉ではなく、いろいろな表情を通して、その気持ちを表現しています。

審査員は、『ニシノユキヒコの恋と冒険』の井口奈己監督や、実写版の映画『魔女の宅急便』の清水崇監督などの映画関係者。堀さんの映画での活躍もますます期待できます。

NHKミニミニ映像大賞:http://www.nhk.or.jp/minimini/


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