(2014年2月取材)
今回は、実施にいたるまでの経緯、苦労などを聞きました。
雪かきボランティアの実施にあたっては、
1.現地のニーズ把握
2.雪かきスコップの確保
3.貸切バスの予約
4.十分な人数のボランティア募集
5.資金調達
この5つができればどうにかなります。
でもでも、一筋縄にはいきませんでした。
1.現地のニーズ把握
今回の降雪は非常に広範囲にわたっていたため、どこに雪かきボランティアを派遣するかが最初の問題になりました。山梨県、埼玉県、群馬県、東京都西部、長野県……。交通状況を調べると通行止めのところも多い。現地までバスで辿りつけなければどうにもならない。大型バスなら多くのボランティアを派遣できるけれど、雪で道が狭くなっていたら通れないかもしれない。週末までにどのくらい除雪作業が進むのか。中型バスがいいか、マイクロバスがいいか。派遣地さえ決まれば、現地と連絡をとって、その情報に合わせてバスを手配し、バスの大きさに合った人数のボランティアを集めればいいわけです。
現地のボランティア募集の拠点となるのは、ボランティアセンターや社会福祉協議会。速やかにボランティアの受付を始めている地域もあれば、なかなか始められない様子の地域もあり、状況は様々でした。降雪の被害を受けた地域のWEBサイトをまめにチェックし、甲府市、南アルプス市、山梨市、大月市・・・と被害の大きかった山梨県のボランティア受付先を中心に片っ端から電話をかけました。スタッフが少ししかいないところに問い合わせが集中していたようで、なかなか電話がつながらず、やっとつながっても、社会福祉協議会の回答はほとんど同じでした。
「週末の状況がまったくわからない。安全面を考慮すると県外からのボランティアの受付は難しい」
週末までにどのくらい道路や駐車スペースの雪がなくなるのかがわからないから確実なことが言えない、と言うのです。「県外からのボランティアを受け入れるかどうかについてはまだ行政の方で話し合っていない」、「ボランティアの安全が保証できないため受け入れられない」、などなど。現地の人にも状況が読めないとなると、東京にいる僕らにはどうしようもありません。
2.雪かきスコップの確保
雪かきのためのスコップは多くの店で売り切れていて大量調達が難しい状況でした。それに決して安くはないスコップを大量に調達できるだけの金銭的余裕もありません。都知事選の際に用意されたという大量の雪かきスコップを貸し出してくれる自治体・官庁はないかと、23区内ほぼすべて問い合わせましたが断られました。当たり前ですね(笑)
3.貸切バスの予約
それに、週末の貸切バスを直前に安く調達することは困難を極めます。中型自動車の運転免許を持っているかどうか仮募集の段階で調査すると、何人か運転可能な人がいたことから、その人たちに運転を任せてバスだけのチャーターにしようか、などという案も出ましたが、一日雪かきをして行き帰りの運転となるとかなりの負担である上、安全面・責任の所在の問題があります。
4.十分な人数のボランティア募集
そして受験シーズン。受験がない人にとっても、次の週末というのはあまりにも急な話です。そもそもボランティアが集まるのかどうか。
5.資金調達
クラウドファンディングサービス(※)を利用しようにも、プロジェクトをWEBサイトに掲載してもらうまでに最低でも1週間かかるとのことで、到底1週間後の実施日までには間に合わない。自己負担してまでボランティアに来てくれるかどうか。
※「プロジェクト」の紹介記事を見た人に募金してもらうシステム。「プロジェクト」を掲載する人が目標金額を設定しておき、その額を超えた時点で「プロジェクト達成」となり、手数料を引いた額が募金される。目標額に達しなければ1円たりとも募金されない。
数多の不安材料を抱えつつ、多方面と連絡をとり、状況把握に努めました。
そうしているうちに細かい課題が見えてきました。
1.至る所が雪で埋まってしまっていて、大型バスの駐車スペースがない
2.週末には降雪から時間が経っていてアルミのスコップでは歯がたたない可能性がある
3.貸切バスが予約できない。予約できても料金が高く、大赤字になる可能性がある
4.ボランティアから参加費を徴収する以外の資金調達方法がない
5.週末にまた雪が降るかもしれず状況の変化が直前までわからない
結局、リサーチと長い議論を経て、下記4つの条件を満たした長野県小諸市へ雪かきボランティアに向かうことに決定。
・現地の人とこまめに連絡がとれる
・現地の社会福祉協議会と連絡がとれる
・駐車スペースがある
・道路状況が比較的良い
スコップはアルミのものと鉄のもの合わせて30本を大田区役所から特別に貸していただけることになりました。資金調達に関しては、参加申込の際にボランティアの方々にいくらまでなら負担できるかを聞き個別に対応しました。
前日になって22日便は参加者不足のため、大型バスを走らせられないことに。西武鉄道が開通し、現地まで電車で足を運べるようになっていた秩父市に急遽行き先を変更。ちょうど秩父市の社会福祉協議会は県外からのボランティア受付を始めたところでした。23日便はボランティアが十分集まり、予定通り長野県小諸市に貸切バス(大型)で派遣することができました。
★当日の様子はこちらから
今回の大雪でここまで被害が長引いたのは「大雪に慣れていなかったこと」つまり「災害対策の問題」ももちろんありますが、「若者不足」「過疎」の影響が大きいと、実際に行ってみて感じました。
長野県小諸市でボランティア活動をした際、僕たちは病院、懐古園(観光施設)、個人宅の3グループに分かれて雪かきを行いました。僕は個人宅の担当。80歳のおばあちゃんの家には氷柱が屋根から何本も垂れていました。「危ないから」と言いながらそのおばあちゃんが箒の持ち手の方で氷柱を叩いて落としてくれようとするのですが、「屋根の下には危ないから入らない」という掟を守って活動している僕らボランティアからすると、氷柱の上に積もっている分厚い雪の層がおばあちゃんの上に崩れ落ちてこないかと気が気でなりませんでした。
今回は雪に慣れていない地域で雪が降ったためにこれだけ被害が拡大したということはよく言われていますが、ご高齢の方々をサポートできる若者が少ない、というのも大きな問題の一つだと思うんです。デイサービスを必要とする夫を抱える80歳のおばあちゃんに、道路沿いの駐車スペースから奥まった勝手口までの雪かきを強いるのは厳しいものがあります。近くに雪かきを頼める若者がいれば済む話ですが、それもできない。人もお金も集まる東京に住んでいるとわからない「地方」の問題を見せつけられた気がしてなりませんでした。
みんなに読んでもらおう!!
↓Facebookでシェア