(2014年3月取材)
日本が大好きな高校生のインターハイスクール部活、HOT JAPAN Project(HJP)の年1回の集大成イベント「Jふぇす」が、東京・渋谷のシダックスホールで行われました(3月30日)。
Jふぇすは、高校生目線で集めた「日本のココが好き!」を紹介する「和の文化祭」。全国のメンバーは、昨年11月からSNSやスカイプでつながりながら準備を進めてきました。当日は、コンサートやファッションショー、ブース展示、ビデオの紹介などが行われました。
■Program
・開会式
・コンサート「洋楽器が箏に恋をした♡ vol.2」(和楽器部)
・交流タイム
・講演 ろうけつ染作家 大竹夏紀氏
・地元ドヤ顔選手権
・にっぽん写真紀行スライドショー(写真部)
・方言ビデオ&歌(方言愛好会)
・和服ファッションショー(和服部)
会場では、サブカルチャー部の展示、和服の着付け体験コーナー、地方のお菓子やジュースの販売なども行われました。
会場にディスプレイされた、ろうけつ染作家、大竹夏紀さんの作品。正倉院宝物などにも見られる、伝統的染色技法であるろうけつ染めを使ってアイドルを描く、というミスマッチがすごく新鮮です。
午前中は、「和楽器部」部長の佐竹真生子さんプロデュースのコンサート「洋楽器が箏(こと)に恋をした」が行われました。昨年のJふぇすに続いて2回目の今年は、バイオリン、フルート、ギター、コントラバスと箏のアンサンブル。洋楽器と和楽器のそれぞれの音色の特徴を活かしたナンバーが演奏されました。
左から
佐竹真生子さん(岡山県立岡山操山高等学校2年)
谷原心蕗さん(立命館宇治高等学校[京都]2年)
矢部咲紀子さん(桐朋女子高等学校音楽科[東京]2年)
栗原陸人君(郁文館高等学校[東京]1年)
ふだんのアンサンブルとは違う楽器と組むことで、どんな刺激を受けますか?
佐竹さん(箏担当):
今年は弦楽器中心の編成で、管楽器のフルートも弦楽器に協調する柔らかな音色ということもあって、音色の美しさや深味を表現できる繊細で重厚な曲を選びました。洋楽器とコラボ演奏すると、自分の楽器で当たり前だと思っている音色や表現を客観的に見直すことができ、それを進展させ、「だったらこんなこともできるかもしれない!」と可能性はさらに広がります。
また基本的に、和楽器は音を出す時に、弦を擦るシューッという音や消音の際にピタッという「雑音」が同時に出ます。でもそれが「風流」や「侘び寂び」というものに通じるんですね。今の箏の絃はファイバー製ですが、昔は絹糸でできていて、ずっと趣があったようです。洋楽器は雑音を嫌いますが、そんなクリアではないところも和楽器独自の魅力なのだ、と改めて実感する機会となりました。
矢部さん(バイオリン担当):
コラボを通して、箏は、一つの音を大きくしたり小さくしたりすることはできないけど、バイオリンはできるんだ、ということに改めて気がつきました。それがバイオリンだからこそできる表現ってどんなことだろう、ということを考えるきっかけになりましたね。洋楽器と違って、和楽器の音色には独特の深い影があります。それがすごく新鮮で、洋楽器の演奏者としても取り入れていきたいと思っています。
谷原さん(フルート担当):
和楽器と洋楽器は音程が違うので、最初は少し戸惑いました。箏の演奏から刺激を受けたのは、佐竹さんが「箏は絃を弾いたら音が出るけど、自分は弾いた後に残る音色まで意識している」と言われたことです。フルートの演奏で、音を伸ばす時の参考になりました。箏の音色は、初めて聴いてもどこか懐かしい感じがしました。日本人の繊細さとか思いやりの気持ちがこもった音なんだなあ、と思います。自分の音の表現の上でとても参考になります。
栗原君(エレキギター/コントラバス担当):
僕は、半年前に声をかけてもらって、コントラバスはそこから練習したのですが、一気に上達しました。箏に身近に接するのは初めてでしたから、こういうことができる楽器なのか、とすごく勉強になりました。やはり和楽器の音は、日本人のDNAに組み込まれているというか、日本の音楽の軸になっていると感じました。
曲目はどうやって決めたのですか?
佐竹さん:
和楽器・洋楽器のコラボという目新しさを超えて、クラシックの名曲や技巧的な現代筝曲、即興演奏など、より本格的に「音楽」としての美しさを伝えるコンサートにするための選曲にしました。HOT JAPAN Projectとして、震災復興への想いも込めました。11曲中2曲は栗原くんの編曲、7曲は私の作編曲と、オリジナルにこだわったコンサートにしました。
岡山と、東京と、京都と離れたところに住んでいる皆さんは、どのようにしてアンサンブルを組むことになったのですか?
矢部さん:
東京の私と、岡山に住む佐竹さんは、実は小学校の同級生なんです! 小さい頃からお箏とバイオリンをお互いがんばっていて、いつかコラボしたいね!なんて話していました。そんなこともあって、去年のJふぇすで佐竹さんに声をかけてもらったことがコラボに参加したきっかけです。小学校を卒業してからずっと会えていなかった佐竹さんに再会できて、とても嬉しかったです。
谷原さん:
佐竹さんと京都在住の私は、高校生向けのサマースクールで出会ったのがきっかけです。お互いが音楽をやっているということ知り、「いつか一緒に演奏しよう」と話していました。
栗原君:
HJPという学生団体が離れ離れのメンバーをつないでくれたことがきっかけだと思います。僕は、HJPに入って3日後くらいに、たまたまYouTubeで去年の和楽器部の演奏を聴いて感動し、すぐにHJPの本部メンバーと連絡をとり、和楽器部に入りたい!と言いました(笑)。まさに偶然の出会いでした。和楽器部に入ったときから、音楽の大先輩である佐竹さんとの共演を頭に思い描いていました。そして佐竹さんのような人になりたいと思っていました。
練習でたいへんだったことは?
矢部さん:
お箏と洋楽器という、普通合わせることのない楽器で一つの曲を作っていくところが難しかったです。特にお箏とバイオリンは音色も音の出し方もまったく違うので、いろいろみんなで考えながら練習していました。でも練習していくうちに、和と洋の良いところがそれぞれ出てきて、とても楽しくなりました。和楽器と洋楽器がコラボすると素敵な音楽になるんだよ、ということをもっと多くの人に知ってもらいたいなぁと思いました。
栗原君:
コントラバスは持ち運びがたいへん。本番5日前の初顔合わせからは、コントラバス、アンプ×2、ギター、キーボードを持って、練習スタジオと家の往復が続きました。本当に重かったです!! 練習時間が確保できないとき、親に無理をいって、カラオケルームに夜連れて行ってもらい、深夜1時くらいまで練習していました。
谷原さん:
やはり限られた時間の中でしか練習できない、ということです。それをカバーするために、事前にパソコンで作成した機械音の音源などを共有して練習することと、毎日練習のメニューを相談して決めていました。みんな住んでいるところがバラバラなので、楽譜はそれぞれに郵送で届けて個人練習をしました。
佐竹さん:
2月末に楽譜を届けてから3週間くらい各自個人練習を行い、最後に本番前の5日間、東京で初にして唯一の合同練習を行いました。岡山や奈良と地方から単身で来たメンバー、また連日一人で沢山の楽器を抱えて練習場へ通うメンバーなど、それぞれ本当に大変でしたが、メンバー皆が支え合ってたった数日間で見違えるほどステキな音楽ができていきました。合同練習期間はたった5日間でしたが、内容は濃密で、総準備の80%近くを占めていた気がします。
ふつうの会話でも、方言でしゃべったらどんなんやろ? 「自分の方言を好きになることは、自分の一部を好きになることじゃん。他人の方言を好きになることは、他人の一部を好きになること」をモットーに活動する、方言愛好会のメンバーが作った力作ビデオが紹介されたんやんか。皆も見てみーひん?なまらおもしろかったで。
サブカル=キモオタと連想しちゃうそこのキミ! 今やサブカルは、スシやフジヤマ以上に世界中から注目される、日本が誇る文化なのだ。アニメや漫画、フィギュアやゲームはもちろん、みんなが大好きなカラオケやお笑いもりっぱな? サブカルだ。HOT JAPANのサブカル部は、暗いイメージを吹き飛ばし、みんなで楽しめるサブカル!を目指して、全国の仲間と語り合っている。
西澤亮作君(早稲田大学高等学院[東京]3年) ※写真の一番左が西澤くん
HOT JAPANで活動してよかったのは、いろいろなか学校の人と自由に好きなことを話せることです。サブカルのことについて校内の友達と話そうとすると、どうしても自分達だけで固まってしまうというか、自分達の興味があることだけで盛り上がって範囲が狭くなってしまいますが、HOT JAPANだといろんな形で発信するので、どんどん広がっていくのがよかったですね。4月からは大学生です。サブカルの中ではアート系に興味があるので、大学ではそっちの方をもっとやってみたいですね。
※西澤くんは現在早稲田大学に在学中です
Jふぇす恒例、和服のファッションショーです! モデルをするのも、ちゃんと和服を着るのも初めて!という人も、しっかりなりきってます!!
高校を超えて活動したい人、日本の良さが気になっている高校生にメッセージをお願いします。
鎌田君:
僕はHOT JAPAN Projectの設立から関わっていましたが、日本のことは好きだったけど特に何かを調べていた、というわけではないんです。でも、この活動をやっているうちに、もっと知りたいと思うようになりました。
企業の方とお話をしていると、「おもしろい活動だね」と言われるのとともに、「なぜ高校生がやるの?」とよく聞かれます。自分なりの答えとしては、「高校生に伝えるためには、同じ高校生の目線でおもしろいと思うことが大事だから」と思います。大人が手伝ってくれたらラクかもしれないけど、やらされ感や変な思想が絡んできてしまうと思います。
これからは、文化だけでなく日本の様々な地域も活動に巻き込んでいけたらと思っています。仲間が全国に広がって、いろんなところのいいところ・おもしろいところを知り合うことができればいいですね。
町田さんはHOT JAPANの活動に参加してみて、どんなことを感じていますか。
町田さん:
私は、池袋で行った「振袖を着てでかけよう」のイベントに参加しました。日本文化って、年配の方なら自然に親しみが持てるかもしれませんが、高校生に着物とか茶道とか言っても、何かハードルが高いですよね。でも、格式とか気にしないでやってみることができるのも高校生の特権で、それによってハードルを下げることもできると思います。
私は茶道をやっていますが、例えば和菓子って春は桜の花の練り切りだったり、夏は涼しげな寒天だったり、と季節によって見た目も味も全然違いますよね。そんな細やかさを感じられるのって、日本のすてきなところだと思います。
Jふぇすは、毎年渋谷でやっているので、いろんな人に見に来てほしいです。日本文化に興味のない人でもいいんです。今日は男の子がたくさん来てくれていますが、身近な人が着物を着たり和楽器を聞いたりするのを見たら、あ、いいなと思うかもしれない。それが日本をもっと好きになることのきっかけになってくれたらと思います。今回来られなかった人も、来年はぜひ来てください!
※鎌田君は現在立教大学、町田さんは慶應義塾大学に在学中です。
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