ナノバブル水は本当に「魔法の水」なのか?
【生物/ポスター部門】東京都立多摩科学技術高校 科学研究部
(2015年7月取材)
■研究内容「ナノバブル水の生体への影響」
最近、ナノバブル水が「生物を元気にする水」として注目を集めています。例えばナノバブル水を使うと、海水魚と淡水魚を同じ水槽で飼うことができる、トマトの収穫量が増加する、などといった事例があります。
ナノバブル水は、一見ふつうの水と変わりありませんが、実際は直径100nm以下の超微細な気泡が含まれています。しかし、その基本的な性質や他の生体への影響は詳しく解明されていません。私たちはこのナノバブル水が、生体にどのような影響があるのかを調べることにしました。実験に使ったナノバブル水は、超微細気泡発生装置という機械で作りました。
1.メダカの孵化実験
ナノバブル水では9日前後で孵化したのに対し、水槽水では11日前後で孵化しました。ナノバブル水のほうが2日ほど早く孵化しました。
2.モデル生体膜への影響
実験1の結果を受けて、卵膜にナノバブル水にどのような影響を与えているのかを調査するため、モデル生体膜を用いて実験を行いました。
カルセインという蛍光剤を封入したモデル生体膜を作成して、純水とナノバブル水で比較しました。もしナノバブル水がモデル生体膜を傷つけていたらカルセインが漏出するので、その漏出量を調べることにしました。その結果、純水と純水ナノバブル水では有意な差は見られず、ナノバブル水は生体を傷つけていないと思われます。
3.タイワンシジミの観察
次にタイワンシジミをナノバブル水槽水と通常の水槽水で飼育しました。2週間後に解剖して調べると、ナノバブル水槽水で飼育したほうがエラの色が薄いことがわかりました。
4.侘び草の成長比較
複合型水槽を作り、ナノバブル水を循環させた水槽と普通の水槽で侘び草を栽培しました。ナノバブル水で栽培したほうが、草丈が大きく成長し緑も濃く、枯れている部分も見られませんでした。
5.溶存酸素量の測定
ナノバブル水のほうが通常の水と比べ、溶存酸素量が高いことがわかりました。
6.酸化力の測定
ナノバブル水の方が、酸化力が高いことがわかりました。
考察
メダカの孵化が早まった理由としては、ナノバブル水によって卵膜が傷つけられたわけではなく、溶存酸素量が多いことが関係していると考えられます。タイワンシジミのエラの色が薄くなったことから、ナノバブル水には飼育水中の汚れの影響を小さくする効果があると考えられます。ナノバブル水で栽培した植物のほうが成長及び生育状態が良いことから、成長促進と健全な生育に効果があると考えられます。理由として水槽中の溶存酸素量が関係していると考えられます。
これらの結果から、ナノバブル水は溶存酸素量が多く生物の成長促進作用と洗浄効果があると考えられます。これからは、さらに物性値の測定とともに他の生物を用いた実験や溶存酸素量に注目した実験を行い、効果的な利用法を考えていきたいと思います。
■研究を始めた理由・経緯は?
部活の先輩がナノバブル水について研究を行っていて、私たちも興味を持ち、この研究を引き継ぎました。海水魚と淡水魚が一緒に飼える水として話題になったので、他の生物にどのような影響を与えるかを調べようと思いました。
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
2014年から1週間あたり80時間くらいです。
■今回の研究で苦労したことは?
ナノバブル水を作る機械が壊れて実験ができない期間がありました。また、実験対象とする生物を決めるのも苦労しました。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
ナノバブル水が生物に影響を与えるということがわかる写真をたくさん載せました。
■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究
産業技術総合研究所の高橋正好さんが行われている研究です。
■次はどのようなことを目指していきますか?
高校生活も残りわずかですが、最後まで今回の研究活動を続けていきたいと思っています。通常のエアレーション(※)をした水と、ナノバブル水ではどのような違いがあるか、追求したいです。
※魚を飼う池や水槽などで、水中に空気を溶かしこむこと
■ふだんの活動では何をしていますか?
学校の近くの野川と湧水の水質調査、雨水の成分分析
■総文祭に参加して
全国の高校生のポスターセッションができて、とてもよい経験になりました。琵琶湖の水質調査や学校近くの川にいる生き物についてなど、その土地ならではの研究テーマも多く、発表を聞いていておもしろかったです。他の高校の発表を聞いたり、自分たちの発表について質問をもらったりしたことで多くの刺激をもらえたので、それを残りの高校生活に活かしていきたいと思いました。