大会マスコット:湖楠(うみな)ちゃん
大会マスコット:湖楠(うみな)ちゃん

日頃の研究成果をプレゼン
~2015滋賀びわこ総文 自然科学部門レポート

 

「文科系のインターハイ」、第39回全国高等学校総合文化祭(2015滋賀びわこ総文)が、滋賀県で開催されました(7月28日(火)~8月1日(土))。県下13の市で、22部門に約2万人の高校生が集まって、日頃の成果を発表し、技を競うとともに、同じ活動に取り組む全国の仲間達と交流を深めました。

(2015年7月取材)

自然科学部門の発表が行われる会場最寄駅、八日市駅前でスタッフの高校生がお出迎え
自然科学部門の発表が行われる会場最寄駅、八日市駅前でスタッフの高校生がお出迎え

みらいぶでは、今年も自然科学部門の発表を取材しました。東近江市の4つの会場で、7月30日・31日の2日間にわたって、滋賀県内9校を含む計138校が、176件の研究成果を発表しました。


また、2日目の7月31日には記念講演と生徒交流会、3日目は琵琶湖湖上実習やP&G滋賀工場での化学実験などのコースに分かれた巡検研修が行われました。


■研究発表

物理部門の研究発表会場(八日市商工会議所大ホール)
物理部門の研究発表会場(八日市商工会議所大ホール)

自然科学部門の研究発表は、物理・化学・生物・地学の4部門に分かれ、1校あたり持ち時間12分以内の発表と、その後4分以内の質疑応答で行われます。審査は発表前に提出された研究発表論文による事前審査(計10点)と、発表会場での当日審査(計30点)によって行われます。


今年は、4部門がそれぞれ別の会場となりましたが、自分達の発表がない時間には他の部門の会場の発表を熱心に聴く学校も数多く見られました。


動画を入れたり、掛け合い風のやりとりで発表を進めたり、と工夫を凝らしたプレゼンを披露した学校もありました。また、研究に取り組む者同士だからこその鋭い質問にも、「そう来たか!」とひるまず答える姿も見られました。

 

<レポート&ミニインタビュー>

【化学】大分県立大分上野丘高等学校 化学部

紫外線が気になるあなたに、朗報です
―サリチル酸添加ジニトロセルロース膜を用いた、積算紫外線量の測定―

「UVs」

 

【地学】東筑紫学園高等学校 理科部 (福岡県)

夜空の明るさを数値で表現。「光害公式」で、美しい星空を守る啓発につなぎたい

「夜空の明るさの高度変化と限界の暗さ」

 

【物理】山形県立鶴岡南高等学校 科学部

微生物発電の実用化を目指して、ただ今試行錯誤中!

「微生物発電の実用化を目指して」

 

【地学】佐賀県立佐賀西高等学校 サイエンス部

仲良く「川」の字になって夜空を観察、明るい緑色の流星痕の発生条件を探った!

「流星が酸素を光らせる?~高感度撮影による流星痕の写真観測~」

 

【地学】山梨県立都留高等学校 地球物理部地学班
山梨はかつて海だった!? 礫の観察から500万年前の地形を探る

「山梨県上野原市の鶴川流域の地質とその形成史について」

 

【物理】福島県立会津学鳳高等学校 SSH探究部
川の水を使って太陽光発電の効率を上げられないか?  ~メガソーラーの弱点克服に挑む
「メガソーラー発電の発電効率向上の研究」

 

【地学】沖縄県立球陽高等学校 地球科学部
竜巻注意情報の精度を上げ、防災に役立てる!
「関東平野の竜巻発生メカニズムに関する研究」

 

【生物】兵庫県立農業高校 生物部
従来の生態調査への疑問を徹底研究で解き明かす!
「環境DNA手法によるカワバタモロコ生息調査に関する研究」

 

【地学】富山県立上市高等学校 科学部
カワイイ名前の「パンダ石」、その生成の謎に迫る
「上市川の『パンダ石』」

 

【物理】富山県立富山中部高等学校 SS部
おいしいドリップコーヒーの入れ方のセオリーを物理学的に解明する!
「ドリップコーヒーの濃度曲線に関する研究」

 

【物理】熊本県立宇土高等学校 科学部物理班
困難の末にたどり着いた! 「副実像」の位置の数式化
「凸レンズがつくる“副実像”の位置の数式化に成功」

 

【地学】宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校 数理工学同好会
宮崎でオーロラが観測された! のは本当か?
低緯度地域でのオーロラ観測の可能性を探る
「Is it really aurora?~宮崎で観測された光の謎を解く~」
 

【物理】宮城県仙台第二高等学校 物理部

量子力学っておもしろい! 

高校生にも見える&できる「量子消しゴム実験」の現象解明に挑戦!!

 

【物理】佐賀県立唐津東高等学校 科学部
「缶サット甲子園」優勝&「水ロケット」アジア大会出場の2冠達成! 

飛ばすだけでなく、缶サットの自律走行にも挑戦
「惑星探査ローバー型缶サット~自律制御への挑戦~」

 

【地学】滋賀県立米原高等学校 地学部
石灰岩の蛍光に影響するものは何?
「滋賀県東部の石灰岩について」

 

【地学】福島県立磐城高等学校 天文地質部
鳴き砂を物理の目で定義して、環境指標に活かす!
「鳴き砂海岸の異なる地点における鳴き方の違い」

 

【生物】山梨県立韮崎高等学校 生物研究部
ショウジョウバエを使ってがん研究実験モデル作成に挑む!
「鉄摂取により生物の酸化ストレスは増加する」

 

【物理】埼玉県立越谷北高等学校 物理同好会
原点は中学校の部活。ピンポン玉の回転数とはね返り方の関係を解き明かす
「回転するボールのはね返り方」

 

【物理】長野県野沢北高等学校 理数科物理部
沸騰しながら凍る水?! 三態変化のメカニズムを追いかける
「沸騰しながら凍る水」

 

【生物】宮城県仙台第一高等学校 生物部
遺伝子組換え作物の分布の実態と環境への影響を調べる
「自生する遺伝子組換え作物の実態」

 

【地学】茨城県立土浦第三高等学校 科学部
従来の太陽観測機材を改良、誰でも簡単に安全な太陽観測ができる!
「New Type 太陽観測装置の開発」

 

【化学】熊本県立濟々黌高等学校 化学部
犯罪捜査にも応用されるルミノール反応。その発光をより長く・より強く!
「水中蛍 ~ルミノール反応~」

 

【生物】島根県立浜田高等学校 自然科学部
小さなトンボの生きる力、戦略に迫る!
「ハッチョウトンボの生体調査Ⅱ~秘めたる力、生き残りを懸けた戦略~」

 

【化学】兵庫県立柏原高等学校 理科部
教科書によって異なる値の謎に迫る
「チンダル現象を利用して溶解度積を測る!―沈殿はいつ生じるか―」

 

【化学】鹿児島県立福山高等学校 科学研究部
地元特産の焼酎から酢を作る?! 画期的な製造法で、地域の活性化も目指す
「焼酎から酢は作れるか」

 

【化学】茨城県立水戸第二高等学校 数理科学同好会
酸化還元で色が鮮やかに変わる!――BZ反応を長時間続けると
「閉鎖系Belousov-Zhabotinsky 反応の長時間挙動」

【化学】福岡大学附属大濠高校 化学部
 輝く食品ほど鮮度が高い?! ――ルミノール反応で鮮度を判定
「ルミノール反応を用いた食物の鮮度測定」

 

【化学】宮崎県立宮崎大宮高校 化学部

空気マグネシウム電池をもっと長く、効率的に

「空気マグネシウム電池の研究~水酸化マグネシウムによる電圧低下の改善について~」

 

 

■ポスター発表

ポスター発表会場(八日市文化芸術会館展示室)
ポスター発表会場(八日市文化芸術会館展示室)

「ポスター発表」は、生物29、化学7、物理4、地学3の計43の出展がありました。研究内容や研究成果を縦120cm×横180cmまでのサイズの用紙にまとめて掲示し、実験器具なども展示。来場者がブースを訪れるとプレゼンし、質疑応答や意見交換を行います。

 

審査は、研究発表と同様、発表前に提出されたポスター(パネル)発表論文(10点)と発表会場での当日審査(30点)で行われます。さらに、ポスター部門は、参加校からの投票(自分の学校以外)も加点されます。


出場校の中には、昨年からの継続研究で、研究内容や手法をさらにブラッシュアップした学校もありました。また、ぱっと見てわかりやすいポスターや、つかみを大事にしたプレゼン等、様々な工夫が凝らされた発表が目を引きました。

【物理/ポスター部門】茨城県立土浦第一高等学校 物理実験部
メトロノームの動きに魅せられて ――同期現象の数理モデル化に挑む!
「振り子の同期現象はなぜ起こるのか~非線形リズムの世界を探る~」

 

【地学/ポスター部門】宮城県仙台第二高等学校 化学部
斜面崩壊のモデルを砂山でシミュレーション。日本だけでなく、海外でも火星でも使えるモデルを活用して、災害の被害を最小限に!
「砂山シミュレーション」

 

【生物/ポスター部門】滋賀県立河瀬高等学校 科学部化学班
2つの山の植生は、土壌の栄養塩類の違いにどのように関係するのか?
「粘土と腐植が与える森林土壌への影響」

 

【生物/ポスター部門】千葉県立市原八幡高等学校 理科部
遺伝子調査で解き明かす トウキョウサンショウウオのルーツ!
「村田川のトウキョウサンショウウオ個体群のルーツを探る」

 

【生物/ポスター部門】高川学園高等学校 科学部(山口県)
オオサンショウウオの傷病の治癒(再生)を6年間かけて研究
「山口県のオオサンショウウオの生態(3)」

 

【地学/ポスター部門】静岡県立磐田南高等学校 地学部地震気象班

南海トラフ地震による津波地層を発見したのは、誰にも負けない集中力と体力!
「静岡県太田川河口で発見された歴史地震による津波堆積物の特徴と遡上範囲の推定」


【生物/ポスター部門】滋賀県立虎姫高等学校 科学探究部
カスミサンショウウオに立ちはだかる壁!
安住の地にたどりつくために水路の壁はどうあるべきか
「カスミサンショウウオの壁のぼりに関する研究」

 

【生物/ポスター部門】向上高等学校 生物部(神奈川県)
神奈川県の河川で、南米原産の水草が冬でも枯れないのはなぜ?
~数十センチの違いでも水温に大きな差があることをつきとめた
「南米原産オオフサモはなぜ葛川で冬を越せるのか?」

 

【生物/ポスター部門】大分県立大分舞鶴高等学校 科学部生物班
ニホンザルは餌撒きを情報分析で予測していた! 
「高崎山ニホンザルB群の採餌行動の分析」


【化学/ポスター部門】兵庫県立川西北陵高等学校 自然科学部
金属と酸の反応速度を「強酸ゼリー」でコントロール。手作りの装置で強度の測定も!
「強酸ゼリーの開発と性質」

 

【生物/ポスター部門】福岡県立筑紫丘高等学校 生物部
秋の「七草」が秋の「五草」に!? 野生のキキョウを絶滅から救え!
「キキョウ存亡の秋(とき)!」

【生物/ポスター部門】山梨県立韮崎高等学校 生物研究部
植物自身が身を守る仕組みを活かして、甘利山のレンゲツツジを救え!
「植物はなぜ酸性ホスファターゼを分泌するのか」


【生物/ポスター部】上田西高等学校 生物同好会(長野県)
小さなセミたちの生息地を分ける要因をさぐる
「ハルゼミとエゾハルゼミの分布」

 

【生物/ポスター部門】群馬県立前橋女子高等学校 MJラボ
ダイコンの部位による辛味の違いは、酸化ストレス回避の戦略だった!
「ダイコンの部位による違い~カタラーゼ活性と辛味成分~」

 

【生物/ポスター部門】東京都立多摩科学技術高校 科学研究部
ナノバブル水は本当に「魔法の水」なのか?
「ナノバブル水の生体への影響」


【生物/ポスター部門】宮崎県立宮崎大宮高等学校 生物部
青い光をオスと勘違い? 小さなカニの行動の秘密を探る
「白色のカニと青色の光~ハクセンシオマネキの行動と光の波長II~」


■みらいぶ特派員 取材後記

今回の発表部門の取材は、みらいぶの大学生特派員が行いました。各部門の取材を終えて、発表への感想、思いを語ってもらいました。
くわしくはこちらから


■講評

表彰式・閉会式会場(大津市民会館大ホール)
表彰式・閉会式会場(大津市民会館大ホール)

審査結果の発表の後、各部門の審査結果について、審査委員長からの講評がありました。

「今回もとてもレベルの高い発表でした。審査をしていて、気づいたことや、気をつけた方がよいと思ったことを部門ごとに話します。今後の参考にしてください。

物理部門の発表は、身近な現象の不思議さを追求するものから、環境問題や宇宙開発など、大きな真理に挑戦するものなど、多彩でかつ高校の学習内容を超えたすばらしい研究がありました。残念に思ったのは、公式に縛られたり、パソコンに頼り過ぎたりした感のある発表があったことです。『物理』ということの意味をもう一度考えて、自分達の研究を見直す目があるとよいと思います。

化学部門は、化学反応の探求に継続して取り組み、成果を地域の産業に役立てたり、実用化に近づけたりする研究がいくつもあり、すばらしいと思いました。発表について言えば、研究の過程を全て詰め込もうとして、ややわかりづらくなったところがありました。何を伝えたいか、内容を精選することで、よりよい発表になると思います。

生物部門は、生物の生き残り戦略や環境保全、定説への疑問など地域の素材を活かしたバラエティに富んだ発表が目立ちました。筋道がはっきりしていて聞きやすい発表が多かったですが、大事なのはデータの解釈をはっきりさせることです。考察のために必要なデータの不足や、趣旨があいまいになったところがあったのは残念でした。

地学部門は、予稿集のA4原稿2枚の論文からスライドを使った発表に発展させるとき、どのように作り込んだかがポイントになりました。1枚のスライドに盛り込む文字量や図版の数などを意識することが、発表のわかり易さにつながったと思います。その意味で、データ処理したものを全て出すのでなく、どこまで絞り込んで、かつわかりやすく伝えるか、というのがポイントになったと思います。

ポスター部門では、継続して行われ、非常に内容の深い研究が目立ちました。テーマやアイデアなど、来年以降にも期待したいものがたくさんありました。その一方で、先輩達の研究との違いが今一つ伝わからなかったり、研究自体の目的があいまいになったりしたものがあったのが残念です。今までの研究からさらに一歩推し進めることが、もっと大きな成果につながると思います。

この地方は昔から近江商人と呼ばれる優れた商人をたくさん出してきました。近江商人には、『三方よし』=売り手よし、買い手よし、世間よし、という商いの理念があります。皆さんの自然科学の研究であれば、『話し手よし、聞き手よし、地元よし』となることを目指していってほしいと思います。」

 

来年の開催県 広島県立広島国泰寺高校のみなさん
来年の開催県 広島県立広島国泰寺高校のみなさん

◆来年は広島で会いましょう!
来年の総文祭は広島県で、2016年7月30日(土)~8月3日(水)の5日間、25の部門で開催されます。来年もぜひ、広島で会いましょう!
http://www.hiroshima-soubun.jp/program/

■滋賀県ってどんなところ?

近江大橋の膳所側から瀬田側を望む
近江大橋の膳所側から瀬田側を望む

琵琶湖だけじゃない、滋賀県の歴史と魅力を紹介します。詳しくはこちらから

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