世界へ”FLY”する東大生
~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ
登阪亮哉くん(東京大学)
(2016年8月掲載)
教育評価法「Learning Story」を学ぶ ~子どもの観察をどのように記録しているか
教室での子どもの行動の観察には様々な方法があるが・・・
前回の「教室を観察していますか?」という質問の後、2つ目の問いかけがありました。「教室での子どもたちの観察を、どのように記録しますか?」というものです。これについては、
(1)日誌
(2)Learning Story
(3)その他
(4)記録しない
という4グループに分けられました。
しかし、なかなか回答が決まらない先生が多く、講師が彼女たちの話を聞いて迷っている理由を聞きました。そして、(1)と(2)の間で迷っていることがわかり、新たに
(5)Learning Storyと日誌の間
という項目が追加されました。
その後、各グループでどのような記録の仕方をしているかディスカッションを行いました。その過程で、先生同士が自然とお互いの工夫を教え合っていたのが印象的でした。
10分程度のディスカッションの後、各グループがそれぞれの記録法を発表しました。
その際、講師の判断で、(2)と(5)の回答は最後に回されました。
(1)日誌
子どもたちが言ったこと、やったこと、先生の働きかけに対する子どもたちの反応などを、観察が終わってから自分で整理する。子どもたちの観察、その分析、そして記述を分離して行う。
(3)その他
カメラやビデオによって記録する。写真についてはその時の状況の記述も行う。ただし、手間がかかるため全てを記録することはできていない。
(4)記録しない
子どもが安全に学べるよう気を配っているのに精いっぱいで、その記録まではできていない。写真撮影、日誌の記述は余裕があるときに行うこともある。
続いて、(2)と(5)です。
(2)Learning Story
写真、ビデオ、日誌などの形で記録することもある。しかし、学びは個別に起こるものではないので、一連の学びをまとめ、フィードバックできるようにするためにLearning Storyを記述している。
(5)Learning Storyと日誌の間
Learning Storyによって記録しようとしてはいるが、まだLearning Storyについて学んでいる段階なので、正確にできているとは言いがたい。特に、観察との兼ね合いが難しい。
以上の回答を踏まえ、講師が
「子どもの学びはいつでも起こり得ます。また、それぞれに学びの領域が違います。それらを総合的に評価する上で、Learning Storyはとても有効です。また、Learning Storyは子どもに対して次に何をするべきか判断する材料になります」
と全体の議論をまとめました。
では、Learning Storyってどんなもの?
次に、3つ目の問いかけとして「Learning Storyについて何を知っていて、これから何を学びたいですか?」と質問が投げかけられました。これはグループに分かれず、意見のある先生が挙手して発言しました。一人の講師がそれらを聞き、もう一人の講師がそれをホワイトボードにメモしていました。
そして、
「幼稚園に子どもがいるたった数時間でどこまでできますか?また、観察の後、それをどう統合し、応用することができますか?」
「Learning Storyには感情の動きも記述するのですか?また、御両親に対してより魅力的に見せるにはどうすればいいですか?」
「子どもの成長にとって良いストーリーを書くにはどうすればいいですか?」
「Learning Storyはとてもクリエイティブだと思うのですが、どのようにしてそれを実現するのですか?」
「幼稚園でのとても忙しい日々の中で、どうすればそれを書けるようになりますか?」
など、様々な質問が挙げられました。
そして、いよいよLearning Storyについての詳細な説明が始まります。まずLearning Storyについてのテキストが配られました。これもワークショップ参加者しか閲覧を許されないものだそうですが、特別に見せていただくことができました。Learning Storyの詳しい書き方や活用方法に加え、豊富な事例と共に具体例が挙げられており、とても充実していました。
そしていよいよ、Learning Storyの詳しい書き方の解説が始まります。内容は次回に!
<つづく>
第35回 シンガポールの幼児教育ワークショップ体験記 その3
教育評価法「Learning Story」を学ぶ ~Learning Storyの書き方
※東京大学初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/fly/
前回の記事を読む
第33回 シンガポールの幼児教育ワークショップ体験記 その1
子どもの学びを客観的に記述することを通して教育の質を高める「Learning Story」を学ぶ
第32回 子どもを共に育てるチームとして、学校と親が協力することの意味 ~マレーシアの事例紹介 その2
第31回 発展途上国の子どもたちに、実践を通した学びの機会を与えるEQLの試み ~マレーシアの事例紹介 その1
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第25回 欧米の学生の自己発信力と行動力の原点を幼児教育に見た
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