世界へ”FLY”する東大生

~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ

登阪亮哉くん(東京大学)

(2016年2月掲載)

第18回 ニューヨークの幼稚園から高校までの一貫校・Riverdale Country School訪問記

「コミュニティへの責任感」を身に付けさせることでリーダーシップを養う~Mary Ludemann先生インタビュー

 

Riverdale Country SchoolでLower schoolの校長のアシスタントをされているMary Ludemann先生にインタビューしました。

 

―まず、この学校が子どもを教える際に重視していることを教えてください。

 

私たちはCharacter Education(人格教育)をとても重視しており、子どもたちの前向きな心・自分を律する力・リーダーシップ・好奇心などを育もうとしています。そうすることで、彼らの将来における成功を手助けできると考えています。これらの力を伸ばすのには、幼少期が最も適しています。

 

―そのために、どのようにカリキュラムを作っていますか?

 

私たちはChild-centered Curriculum、すなわち「子どもが何をしたいか、どうなりたいか」に合わせた教育を行っています。小さな子どもだからとこちらですべて決めてしまうのではなく、彼らの意見を聞きながら授業を作っていきます。そのため、基本的には各クラスの先生に授業の内容を決める裁量が与えられています。

 

学校としては、子どもたちにとって必要になる能力を最大限に伸ばせるよう、設備や専門家の先生をそろえています。

 

―例えばどのような形ですか?

 

ITに関する教育がわかりやすいです。ITの授業では、子どもたちにまずはタブレット端末を操作することを覚えてもらい、情報を電子端末で扱う感覚を身に付けさせます。学年が上がると、パソコンを用いたインターネット上の情報へのアクセスの仕方や、得られた情報の信ぴょう性の判断方法などを教えます。これにより、彼らの他の学びにインターネットを活かせるようになります。

 

―子どものリーダーシップをどのように伸ばしているのか教えてください。

 

リーダーシップを小さな子どもに意識させるのはとても難しいです。そこで私たちは、「コミュニティへの責任感」という形でそれを伸ばそうとしています。そのため、日常的なグループワークや、学校や地域でのイベントにかなり力を入れています。また、各クラス内での結びつきが強く、チームとして常に一緒に行動していて、悪いことをすればみんなに迷惑をかけてしまうということを教えています。こうして培った責任感はのちに中学生や高校生になった時、クラブなどでのリーダーシップとして発揮されるようになります。

 

―保護者の方との関係について教えてください。

 

保護者の方とは密に連絡を取るようにしています。担任の先生が保護者の方に写真を送ったり、家での様子を聞いたりするために日常的にメールを送っています。また、カリキュラムについて話し合うためのミーティングを行うこともあります。

 

―高校までの一貫校ということですが、幼稚園とその後の高校までの教育の間にはどのような関連性がありますか?

 

教育自体は、Character Educationを一貫して重視しつつ、学年が上がるにつれて学力を伸ばすことにより時間を割くようになっていきます。

 

より重要なのは、縦のつながりが強く、他学年間での対話による成長が得られることです。例えば5歳の子と8歳の子が会話しているとき、5歳の子は8歳の子にいろいろなことを問いかけます。そして、8歳の子は真剣に考えてそれに答えようとします。その中で、5歳の子は様々な知識が身に付くだけでなく、年上の人の考え方に触れることができます。8歳の子は、自分の知識をかみ砕いて説明する能力が身に付き、自分が何を知っていて何を知らないかがわかるようになります。こういった学び合いが生まれるのが一貫校の特徴です。

 

最後に、見学とインタビューを踏まえて学んだことをまとめます。

 

まず、Riverdale Country Schoolの特徴であるCharacter Educationは理に適っていると考えられます。自分を律する力や好奇心は幼児期に伸びやすい力で、その後の人生に良い影響を与えます。この学校が他と違うところは、それらを「Adventurousness」「Self-control」など直接言葉にして子どもに伝えることです。そして、ただ言葉にするだけでは理解が難しいので、写真や絵や具体例と一緒に伝えています。校舎を歩くと視界のどこかにそれらの標語が目に入るくらい、いろいろなところに貼られてありました。この環境で過ごせば、抽象的な概念でも刷り込みのような形で身に付くはずだと思いました。

 

また、授業を見学してみて、子どもへの期待値がとても高いと感じました。軍隊とは何か、平和とは何かについて4歳児に考えさせるのです。そして子どもたちもその期待通りに真剣に考えて答えます。これは、「私たちが昨年学んだこと」を絵に書いたり、授業中みんなの前で問題を解いたりと、自分が考えていることについてのアウトプットの機会が多いからこそできることだと考えられます。

 

インタビューで得られたリーダーシップの伸ばし方や、他学年の子どもどうしの学び合いの話はとても興味深いです。どのような能力を伸ばしたいのか意識しながらプログラムを作ることで、最大限の効果を得られるようです。

 

先生の振る舞い方は、以前見学したVilla Montessoriに近く、声を荒げるような指導をかなり意識的に避けていました。また、担任と副担任という役割分担がはっきりとしていました。

今後は子どもとの接し方について先生自身がどのように意識しているか、それを受けて親はどのように接するべきかを調べたいと考えたいと考えています。

 

※東京大学初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/fly/

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~FLY Program参加を決意したわけ

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休学中、東北の被災地域のNPOで子供たちへの学習支援活動

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第6回 休学経験者インタビュー:
世界40ヵ国以上、約300日間で回り、海外で働く人を取材し発信する旅
~生ぬるい自分を変え、同世代にいろいろな選択肢を示したい

第7回 世界一周のための準備
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第17回 ニューヨークの幼稚園から高校までの一貫校・Riverdale Country School訪問記

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