高校生×仲間
(2013年2月取材)
国士舘大学21世紀アジア学部 2年 小泉歩美さん
(聖和学院高校出身<神奈川県逗子市>)
インタビュアー:つじみき、りさ、なぎさ
取材場所 国士舘大学町田キャンパス食堂「ルポ」
(取材:2013年2月)
留学期間:2010年8月~2011年7月(高校2年次)
【留学先】
国:インドネシア
高校がある都市:マカッサル
高校:SMA Negri 2 MAKASSAR
◎インドネシアってどんな国?
インドネシアはたくさんの島からなっている国です。約3億人の国民のうち80%はイスラム教徒で、世界で最多です。都市は東京に負けじと高層ビルがたくさんあり、ショッピングモールもたくさんあってにぎわっていますが、その脇にはスラム街が存在しています。気候は一年を通してかなり暖かいです。暖かいというよりも暑いと表現したほうがいいかもしれません。でも、日本と違って湿度が低いので過ごしやすいです。社会情勢は安定しています。高校のあったマカッサルはインドネシア第三の都市でありながら、自然が多い町でした。
「ありがとう」しか知らないままとびこんだインドネシア。
帰って来たら、日本語を忘れていた?!
小泉さん:
そもそも、どうして留学先がインドネシアだったかというと、初めて行った海外旅行がインドネシアのバリ島だったからです。で、そこのインドネシアの人々の笑顔に、もうフォーリンラブ! 汚れのない笑顔がすごく気に入って、絶対またここに来たいと思いました。
あと、英語をやりたいと思って選んだ中学や高校だったから、少ししゃべれるようになってるし、ダンススクールの先生がアメリカの人だったので、そこで学べるから、だったら、自分の好きな国に行って、とことん好きな国の言語を勉強しようと思ったんです。
りさ:
留学して一番楽しかったこと・嬉しかったことは何ですか?
小泉さん:
やっぱり、1年を通してホストファミリーと本当の家族のようになれたことかな。
あと、私、インドネシア語を全然勉強しないで行ったんです。本当にもう「ありがとう=マカシー」って言葉しか知らなくて。そして、どんな時も「マカシー、マカシー」って言ってて、2ヶ月くらいしたら「あれ?しゃべれる!」ってなってました(笑)
りさ:
えっ?! 自然にしゃべれるようになったんですか?
小泉さん:
そう。なぜだかわからないんだけど(笑)。
私はふだんすごいおしゃべりなんですけど、インドネシア語がまったくわからないので、とりあえず聞いてようと思いました。そして、聞く時にその人の身振り手ぶり、顔とかの印象を見ながら、だいたいこういうこと話しているんだろうなって、妄想してました。
りさ:
すごいですね。じゃあ、今はもう日常会話くらいはしゃべれるんですか?
小泉さん:
はい。インドネシア人よりもマカッサル弁しゃべれるねって言われるくらい。
私が住んでいた地域が、日本でいう東北のようなところで、すごく方言やなまりの強いところだったのだけど、その方言を覚えてしまったの。だから、標準的なインドネシア語はあまり話せないかな~。 東京の人が、東北の人の言葉はわからない、みたいな感じです。
なぎさ:
じゃ、インドネシアから日本に帰ってきて日本語が変になっているな~と感じたことはありますか?
小泉さん:
私は日本語が一番しゃべれなくなって帰ってきたってことで知られてます(笑)。
つじみき:
しゃべれなくなっちゃうものなんですか?
小泉さん:
そう。私はしゃべれなくなっちゃった(笑)。
語学を習得するには文化を受け入れるのが先かなと思ったので、120%の力を向こうで使おうと思って、行きの飛行機の中で日本のこと、日本語は全部忘れました。もちろん、記憶には残っているんだけど、インドネシアで違和感のあることがあっても、これは文化だ、ここはインドネシアだからというふうに思おうって思って。向こうでそうやって日本のことは忘れて生活してきたんだけど、インドネシアのことは丸々持って帰ってきちゃいました。そしたら、本当に日本語がうまくしゃべれなくなっていました。だから、帰国したときに、空港に親が迎えに来てくれたんだけど、自分ではしゃべれないから、一緒に帰ってきたAFSの仲間に通訳してもらっちゃって(笑)。
トイレとお風呂はちょっと困った?!
なぎさ:
インドネシアで暮らしている時に、日本よりも不便だなあと感じたことってありますか?
小泉さん:
大変だったことはお手洗いかな。インドネシアは、神様からもらった手で、キレイにしましょうっていう国だから。日本はウォシュレットとかあって便利だけど、結果的に私が帰国して思ったことは、紙じゃなくって水で洗ったほうがキレイだなって思いました。みんな手で洗うなんて汚いって思うけど、向こうの人って、けっこう石鹸を常備している人が多いんです。携帯用の小さい石鹸があって、それを持ち歩いているの。日本では、大きな駅以外には石鹸ないですよね?だから日本より清潔なんじゃないか思います。
それと、寒い日にお湯が出ないことです。当然、お湯が出るお家もあるんですけど、私のシャワールームは水しか出ませんでした。インドネシア人ってよくシャワーを浴びるんです。1日に3回以上で、多い人は1時間に1回とか。お湯を浴びたいときは、やかんでいちいち沸かして、大きいバケツにやかんの沸騰したお湯とお水をミックスして使うんです。日本の浴槽みたいなものは、ホテルとかで以外は見たことがなくて、シャワーだけでした。
なぎさ:
風邪をひきそうですね。
小泉さん:
そうなんです。だから、インドネシアの多くの家庭は、風邪をひくから6時以降はシャワー禁止にしていたりします。太陽が出てる間は暖かいから、明るいうちにみんなシャワーを浴びます。ただ夜でも汗だくになるんだけど、その晩はそのまま寝て過ごし、次の日の朝にシャワーっていうのが定番です。
留学の経験を深めるために、大学ではアラビア語を学ぶ
小泉さん:
インドネシアへは高校2年生の夏に行って、高校3年生の夏に帰ってきました。でも、学年を落とす気持ちはなくて、みんなと一緒に卒業しようと思っていたから帰ってからが大変でした。
私は留学に行く前から大学はAO入試でいこうと思っていました。そこで、インドネシアに行って、何を学んで、向こうの人にどんなことを感じてもらうことができたのか、などなどそういう自分にしか書けないオリジナルの文を志望理由として書いて、AO入試をしました。
つじみき:
国士舘大学の21世紀アジア学部っていうのは留学の前から視野に入れていたんですか?
小泉さん:
実は留学前は考えていなかったのですが、日本に戻ってくる前に母がいろんな大学を回ってくれていて、この学部を見つけてきてくれました。いろいろ調べて、日本語教師の養成課程があって資格をここで取ることができるし、インドネシア語もあるしここでいいかなと。
つじみき:
21世紀アジア学部では、今どんな勉強をしているんですか?
小泉さん:
インドネシア語を取ろうとしたんですけど、結局アラビア語を取ったんです。面接で先生に、インドネシア語はもう自力で学んでいけばいいんじゃない? って言われて、アラビア語にしました。
アラビア語って、難しいイメージはあるけど、難しいのは最初だけ。インドネシア語もイスラム圏だから言葉とか似ているんですよね。似てる単語も、まったく同じのもある。
アラビア語は西アジア全域で使われています。だから、世界の4分の1の人と話せるわけです。アクセントが違ったりするんですけど、もとになっている根本的なところは一緒だから理解できるとは思います。
つじみき:
すごい! 私達も大学にいったら第二外国語を学ぶと思うんですけど、言語を学ぶコツってないかありますか?
小泉さん:
やっぱり文化から入ることかな。私には、それが染みついています。具体的には、その国の生活を見ること。この人達は、こういうことをしたいから、こうするんだなっていう自己解決をしていくようにするんです。
私は、「日本ならこうなのに何で?」っていうのが嫌なんですよ。相互理解が必要なんです。向こうは、こういう文化でこういう言葉使っているからOK。日本は日本で同じようにOK。どちらもOKなんです。
ただ、今はもうこれ以上言語を増やすつもりはないかな。英語もそこそこできて、インドネシア語は向こうで上達させていただき、アラビア語は今勉強しているし。4カ国語できればいいかな。これ以上やっちゃうと、頭の中の整理ができなくなっちゃうから。
これからは、広く浅くだったのを、狭く深くしていこうかなと思っています。
インドネシア人は意外に泳げない! だから、泳ぐ場を作ってあげる仕事をしたい
つじみき:
事前に書いていただいたアンケートで、「将来はインドネシアで会社を作りたい」とあるんですが、そう思った理由と、どういう会社にしたいのか、業種とかイメージあれば教えてください。
小泉さん:
私が向こうで暮らしていてよく聞かれたのが、「アユミ、泳げる?」っていうことでした。一番聞かれるのは「宗教は何?」ってことなんだけど、その次に聞かれたことはこれでした。そのときに、「泳げるよ。なんで?」と聞いたら「泳げないから、教えて」って。その人だけかと思ったら、かなり多くの人が泳げないことがわかり、「えっ?泳げないのこの人たち?! こんなキレイな海に囲まれた人たちなのに~」って。
その島だけでなく、いろいろなところに行っても泳げない人が多くて。泳ぎを教えてあげたいなと思って、自分がとりあえず会社を立ちあげて、そういうことを発信するところを作ってあげようと思いました。でも、イスラムの国で女性は肌を見せちゃいけないので、実際に泳ぐとなると、そういう問題も出てくるから、難しいんですよね。
あと、インドネシアは日本企業もたくさんあるのですが、赴任されている日本人の奥様方が、あまりインドネシア語が話せなくて、ちょっとストレス発散したいっていう人をターゲットにすることも視野に入れています。
りさ:
留学する前と比べて、自分の中で変わったことはありますか?
小泉さん:
日本語で文句をいうのではなく、インドネシア語で言ってスッキリすること(笑)。
まじめに答えると、自信が持てました。自分はどんな国に行っても意思疎通できるしOKってなる。そうした人と関わる時間が長くなって、言語を習得して良かったなと思えました。
宗教って、実はすごく深くて大事なものだと気がついた
りさ:
将来的にはインドネシアに住むつもりなんですか?
小泉さん:
住みたいです。日本には住めないかも~。なんかキチキチしてるのに、キチキチしていないところとか嫌なんです。例えば、食事も見た目はキレイにしてるのに、髪の毛が入っていたり。髪の毛が入ってるくらいなら、汚くていいんですよ。私、変わってるんです。
校則とかがあっていいと思うけど、校則があるのに守ってない人がいっぱいいるのが嫌です。交通ルールとかも。中途半端なところがゆるせない。
つじみき:
前に、日本に来ている留学生と話していたときも、日本人は真面目だけど真面目じゃないって言ってました。
小泉さん:
そうそう、留学した仲間もそう言うんですよ。だからといって、日本が全ていけないってわけじゃなくて、茶道とか焼き物とか、すごくいい文化もいっぱいある。でも、残念に思う部分もたくさんあります。
そして、向こうに行って、やっぱり宗教って大切なんだなと思いました。大学で宗教学の集中講義を取った時に、「無宗教が日本人の宗教だ」って言われたんです。それって宗教を持っている人たちから見てどうなんだろう?と思いました。初詣は神社に行くわ、クリスマスは祝うわ、お彼岸にお寺に行くわ、死んだらお墓に入る。だから、なんて言うんだろう、難しいですよね、宗教は。
つじみき:
イスラム教は、戒律が厳しいですよね?どうだったんですか?
小泉さん:
あっちでは礼拝所があるんですね。礼拝する子はするし、人によって時間も違います。インドネシアのイスラム教って、いい意味で崩れたイスラム教で、守ってないとかではなく、けっこうソフトです。 学校でも授業終わったら礼拝に行く、授業も礼拝していて遅れて入ってくるし。
親の前だけちゃんとやる人もいるけど、そういうのは少数派です。ふだんは不真面目な子も、礼拝はちゃんとしています。彼氏や旦那を選ぶときのインドネシアならではの基準は、「宗教に思い入れがある人」っていうのが上位にきます。宗教をちゃんとしていれば、神様に対してもちゃんとしている(=他人にも)っていうことだから、宗教への考え方で、その人がわかるんですね。それとやっぱり玉の輿にのれるかのれないかという基準も(笑)。
あと、インドネシアって言ってもクリスチャンの子もやっぱりいるし、そういう女性の話も聞いてみたけど、結局、男性を選ぶポイントのナンバー1が、信仰度だったりする。
つじみき:
小泉さんはイスラム教の中で暮らしていて礼拝はどうしたんですか?
小泉さん:
私は全部受け入れようと思って行っていたので礼拝もやりました。改宗をせまられるわけじゃないし、とにかく全て経験だから。
つじみき:
無宗教とか言っている日本人は、世界の中では変わっているんですね。宗教について知らないで世界に行く人も、きっと多いですよね。
なぎさ:
日本人は、宗教に関しては中途半端ですが、そういう世界に行ってみた方がいいと思いますか?
小泉さん:
そうですね。改宗する必要はないけど、そういう世界を見てほしいっていうのはありますね。グローバル化って叫ばれている一方で、イスラムの人をみんなテロリスト扱いする人がいたりする。イスラムだからって皆がテロリストなわけじゃない。だから宗教によっての決め付けをしないで欲しいと思いますね。
国士舘大学の学生食堂「ルポ」でお話を聞きました。
[学校]
義務教育は日本と同じく6・3.3の計12年です。一般の学校と、宗教系の学校があります。
高校進学は5割程度。大半は卒業後 就職したりや家の手伝いをしたりします。
大学進学率は1.5割程度。医学部をはじめ日本のようにさまざまな学部が存在します。
進学は、センター試験のようなものにより選抜されてゆきます。これも日本と変わらず塾に通ったり、家庭教師をやとったりして受験勉強に励んでいます。
就職は、親や、親戚のコネクションを使っている人が多く見受けられました。
1学年は約230人、全校生徒は約800人。1クラスは約40人。規模は日本の学校と似ています。
[時間割] ※小泉さんが選択したもの
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[授業のようす]
自分の意見を積極的に言わせます。グループワークが多いです。
1コマが45分ですが、休憩なしで続けて2コマ分授業をします。礼拝に行くために、遅刻・早退がOKです。教科書は、日本より内容が多くて、ドリルに似ています。
[インドネシアの高校生活]
先生には、常に敬意を表しています。授業中は、発言するときと聞くときとでメリハリがあり、わからないときにはよく質問します。授業が終わると、ほとんどの生徒が帰路につきますが、部活や委員会の活動も盛んです。
友人関係は意外にあっさりしていて、休日は家族や親戚と過ごすのが主になるようです。 積極的に将来を考えているが、親の言うことは絶対従う、というのが印象的でした。
制服は全国で同じもので、袖に自分の学校名を、左胸に名前を縫い付けることになっています。修学旅行もあります。
(公益財団法人AFS日本協会の実施するAFS年間派遣プログラム第57期生)