前田智大くんのMIT便り ~世界のトップ大学ってどんなとこ?
第9回 海外で学ぶからこそ、見えてくること
~"Our Country" という言葉が日常会話に出てくる環境で、「国」って何かを考える
前田智大くん MIT [Electric Engineering & Computer Science ]2年
ゲスト 高島崚輔くん ハーバード大学1年
(2016年6月掲載)
就職活動はどんな感じ?
前田:MITはキャリアフェアが年2回体育館であって、そこで企業にレジュメを出して、レジュメが気に入ってもらえればインタビューをしてもらい、いくつかのインタビューをクリアすれば内定、という感じかな。
Googleとか、Facebookとかいった有名どころからスタートアップ(※)まで100以上の会社がブースを持っている。4年生になるとさすがに就職のことを気にする人が多いけど、そんなに就職活動っていうイメージはないで。
※ 継続可能かつ拡大可能なビジネスモデルを探すための企業・組織のことで、市場開拓の段階にあるものを言う。創設から2-3年までを指すことが多い。(wiki 「Startup company」より改編)
高島:ハーバード生はインターンをがんばって、企業側に「来年就職してください!」って言わせたら勝ちみたいな(笑)。学校でもキャリアフェアみたいなのを小規模でたくさんやっているから、そこに行く人もいるかな。
日本人学生は「ボストンキャリアフォーラム」っていう、日系企業がボストンまで採用をしにくるイベントがあるから、そこで内定をもらって日本に帰る人もいるよ。大学院に行く人も意外といる。
こっちに来て変わったことは?
前田:生活習慣じゃない?
高島:それな。
前田:基本3時寝9-10時起き。あんまり健康的じゃないな。
高島:まさに。
前田:自分より賢い人が多いな。一部の生徒もそうやけど、教授とかと話すたびに、やっぱり頭の回転の仕方とか速さとかかなわないなって感じる。さすがMITの教授だけある(笑)。
高島:ベタな意見だけど、日本を見る目は変わったかな。外から見たことで、こういう良いところあるんだとか、逆にここは良くないなとか。具体的に言うと、日本人の繊細さとか気遣いは本当にすごいけど、逆に意外と普通のときフレンドリーじゃないよね、とか。
ハーバードは食堂で隣りあわせた人と自己紹介して会話するっていう文化があるんだけど、学食に1人席まである日本じゃ絶対ないよなって思った(笑)。
前田:あと、アニメを見てる人が意外と多い。俺はあんまりアニメ見ないから話についていけなかったりする(笑)。
高島:あとはダンスパーティー?まあ、最初は恐ろしいと思っていたけど何とか慣れてきたかな…。まだまだ毎週通うほどじゃないけど…。
前田:「国」という概念は違うね。日本はずっと昔から日本人のもので、それが当たり前という感じ。日本人の持つアメリカのイメージは、白人や黒人とかが多いけど、後からアメリカに来た中国系アメリカ人がアメリカに愛国心を抱いているのを見ると、アメリカという国が、自分が持っている「国」というコンセプトに合わずに違和感を感じる。
日本の「国」は、昔から自分たちの民族が持っているものというニュアンスが自分にはあるけど、アメリカはみんなで国を作ってるような感じ。
高島:まさにそれは感じてる。普通の会話でも「our country」ってみんな言うよね、日本では「我が国」「私たちの国」とか日常会話で出ないでしょ。確かに言葉の問題もあるかもだけど、それ以上に国に対する思いが違う気がする。
考え方とかは変わった?
前田:自分の中では個人的な哲学は変わってないと思う。
高島:僕の場合、考え方かどうかはわからないけど、自分の強みをどう出せばいいかってことを考えるようになった。
今まで自分がいた環境は、周りの人が「高島崚輔」という存在を知ってくれていた。そこで得をしていたことってたくさんあったと思うけど、アメリカでは誰も自分のことを知らない。一から作り上げていかないといけないな、と思うと同時にすごくワクワクしたのを覚えている。
英語力では完全に負けているから、その中で自分の強みをどう出してどうアピールするか。例えばラグビーとかでも自分より体格いい人ばかりで、その中でどう自分らしさを出すか。
自分の強みと自分らしさというのは共通しているんだろうと思うけど、とにかくどのように自分を出せばいいのかということは必死に考えるようになったな。
前田:それはあんまりないかも。ここはもしかしたら学校の違いかもで、MITは自分が何をしたいかを重視、ハーバードは社会的インパクト重視。俺は、チームの中でどういう役割をすればいいかとか考えることはあるけれど、一番大事なのは自分が好きなことをできているかどうかで、それはいいことでもあるし悪いことでもあると思う。
海外に出ることの意味~自分のことを知らない人の中で揉まれながら、自分を試す機会に出会う
前田:いろいろ話したけど、あんまり深いこと言っていない(笑)。
高島:ほんまそれな。まあ楽しかったから、いっか(笑)。
前田:って、あかんあかん(笑)。せっかく記事にするんやから。じゃあ、海外に来る意味っていうのを最後のトピックにしよう。高島はさんざん同じことをインタビューされてきたやろうけど(笑)。
じゃあまずは俺から。結構留学が流行りになってきていて、なんか海外という響きがキラキラしているように思えるし、グローバルというとなんかかっこいいように感じる。そもそもグローバルになるのに留学は必ずしも必要でもない。まあ、自分もそんなキラキラさに惹かれて海外受験したところがあるから、偉そうには言えないけれど。
海外に来てよかったなって思うのは、そういう良いように見えるところよりも、例えば英語が満足に話せなかったり、自分より賢い人に会ったりと悔しくなるようなことの方かな。
でも、そういう経験なら日本でもできるんじゃないのと言われれば、まさにその通り(笑)。要するに、こんな言い方してしまうと反則な気がするけれど、もし自分が日本にとどまっていれば、海外に行きたかったなと後悔するやろうけど、その逆はないから来てよかったなと思う。
高島:キラキラとかグローバルとか否定したのに、最終的にただの自己満という(笑)。
前田:ほんまそれな(笑)。高島は?ちょっと長々話した割に、そんなにたいしたこと言えなかったから、ここでいい感じに締めて!
高島:完全に個人的なことだけどいい?
僕にとって海外に来た意味は、良くも悪くも自分の現在地を客観的に確認できたことにあると思う。さっきも話したけど、日本にいたときは「灘の生徒会長」とか「東大生」とかそういうラベルが最初に来るんだよね。だから「高島崚輔」個人としてどこまでやれるのか、というのを試すのにはすごくいい場所だと思う。海外だからどう、っていうのではなく、自分のことを知らない人に囲まれて過ごす、という意味だけどね。
しかも、その評価が世界基準。スポーツ選手って、幼い頃からオリンピックとか世界記録とか目指すところが世界基準だと思う。おこがましい話なんだけど、世界基準で評価されてみたい、というのはそこに少し似ているのかもしれないね。
つづく・・・
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