前田智大くんのMIT便り ~世界のトップ大学ってどんなとこ?
第7回 在校生が語る MITとハーバード、どこが・なぜスゴイのか?!
前田智大くん (Electric Engineering & Computer Science 2年)
(2016年5月掲載)
今回は、僕の高校の後輩で、ハーバード大学に行っている高島との対談形式で、ハーバードとMITについての比較や、そんなに真面目じゃない話もしていこうと思います。
[高島くん自己紹介]
みらいぶをご覧のみなさん、はじめまして!ハーバード大学1年の高島崚輔です。学校ではラグビーや写真、国際会議運営の課外活動を行いながら、環境政策について学んでいます。今回は、高校の先輩でMITに通う前田さんと、ハーバードとMITについてお話しました。
実は、こうやってお互いの学校について語り合うのは初めて。ノリだけで生きている関西人2人の話はどこへ向かうのか……僕たちも楽しみです!
学生あるある
前田:じゃあまずは学生についてのあるあるから行こか。
高島:ハーバードには、やっぱり有名人の親戚は多いよね。ジョン・F・ケネディーの親戚が同じラグビー部にいたり、ニクソン元大統領の親戚がいたりとか。ベンツの副社長の息子とかもいるらしいよ(笑)。
前田:MITでは有名人はあんまり聞かないかな。一人も知らない(笑)。いろんな人がいるけど、サイエンスがかっこいいっていうのは全員に共通していると思う。
日本だと、オタクでひとくくりにされそうやけど、ここではあんまり見かけない。
例えば、超イケメンで、キックボクシングをしていて、アニメ好き(最近は『四畳半神話体系』を一緒に見ていた)で、ゴールドマンサックス(世界有数の投資銀行)から勧誘がきているけど、本人は数学の教授になりたい、みたいな人もいる。一度一緒にボクシングをして、ノックアウトされたけど(笑)。そういや今年、プロのアメフト選手がMITの数学科の大学院に入ったらしい。
高島:あとは、教室の外の活動の中に自分の中で一つ大きな芯を持っている人が多いと思う。例えばスポーツとか、音楽とか、それこそ研究とか。「ハーバード生をハーバード生たらしめているのは、教室の外の活動だ」って言われているんだけど、学校の勉強以外に自信を持っていることがそれぞれにあるって感じかな。
前田:それは、入学試験でそういう人を選んでるってこと?
高島:そうそう。高校時代の課外活動も含めて総合的に合否を判断されるから、力を入れてきた活動に誇りを持っている人が多いのかな。スポーツや音楽、研究だけでなく、「自分で◯◯を立ち上げた!」みたいな人もたくさんいるな。MITの学生は、高校時代にどんな活動をしていた人が多いの?
前田:サイエンスキャンプ(※)とか〇〇オリンピックとかの参加者が多いかな。ハーバードは社会的なインパクトに重きを置いているから、高校から何か活発に活動している人が多いイメージだけど、MITはある程度理系的な基礎を見るから、それなりに評価の高い大会で結果を出している人が多いかな。
だから、国際科学オリンピックに出場しているとほぼ確実みたいなイメージ。あとは、授業の成績が優秀だと結構尊敬されるし、コンピュータでコーディングがめちゃくちゃできると評価される。何かをするというよりも、頭の良さが評価される。
※先進的な研究テーマに取り組む大学・研究機関・民間企業等を会場に、中高生を対象とした先進的科学技術体験合宿プログラム。本格的な研究環境で、第一線で活躍する研究者・技術者から実験・実習・講義等の直接指導を受けることにより、様々な分野の科学技術の先端に触れることができる。
高島:なるほどね。尊敬という点で言うと、ハーバードはみんなそれぞれの分野で頑張っているから、お互いを認め合ってる感じではあるけど、その中で特に、ということになると、自分で研究開発をしている人かな。
研究をしている生徒は結構いて、一瞬でiPhoneを満タンに充電できる方法を開発した人とか、水をきれいにろ過する膜を開発した人とか。
前田:なかなか理系ですな。
高島:まあ、文系ですごいことって、評価基準が難しくない?でも、既存のものにとらわれずに、自分で新しく何かをするっていうのは評価される傾向にあるんじゃないかな。だから起業した!っていうのも、その内の一つだと思う。
前田:ハーバードでは他に課外活動は何が盛んなの?高校と大学どっちも。
高島:模擬国連だね。高校時代に模擬国連をしている人がめっちゃ多くて驚いた。日本ではまだまだ小さい活動だったから……。大学では模擬国連の運営をしている人が多いかな。かくいう僕も、高校生の大会の運営に携わりました。
ほかには、HFAC(Harvard Financial Analyst Club)っていう金融系のものとか、コンサルのサークルとか、海外に行って現地の高校生に教育プログラムを提供する社会貢献活動系が多いかな。MITはどうなの?
前田:Undergraduate Research Programといって、研究室に入って研究をしている人が多いかな。でも課外活動は日本のサークルみたいに活発なわけではないね。
前田:ちょっと話が硬くなったから、ちょっとゆるい話をしよう。「いかにもハーバード」なファッションはどんな感じか知りたい。
高島:見渡してみ(注:対談はハーバードの近くのバブルティー(※)の店で行いました)。
※ミルクティーに大粒のタピオカパールを入れたもの
前田:割と普通。でも、女の子の化粧がちょっと濃いかも。
高島:確かに。まあ、普通にお化粧している人は多いよ。あとはハウス(寮)のシャツとか、ハーバードのパーカーとかを着ている人とかが多いかなー。案外普通な気がする。
前田:MITの典型的な服装はdropboxの無料のTシャツにジーパンみたいな感じやな。髪の毛ピンクとか、青とかに染めている人が結構多い(笑)。冬に裸足でブランケットかぶって外を歩いている人がいたり、ロン毛に長い髭っていう典型的なアメリカのオタクの見た目の人もたまにいる。
こっちに来てがっかりしたこと
高島:ハーバードにがっかりというよりも、自分という存在をおいたときのがっかり感やけど、英語のせいか一人部屋のせいか、あんまり深い話をすることができてないかな。まだまだハーバードを使い倒せてないな、という。
前田:それって、英語とかって問題よりも、全体的に忙しすぎるって感じがあるよな。平日は忙しいし、休日は何もしたくないみたいな(笑)。
高島:それもあるかもなー、でも面白い人はいっぱいいそう。だから今後は一人ひとりの話をじっくり聞く機会を持ちたいなって思ってる。
前田:俺は、この人とじっくり話したいという人はあんまりいないかな。サイエンスの知識のある人と、サイエンスの可能性とかについて話をするのは楽しいけど、「この人のことが知りたい」とかはあまりないかな。
高島:あとは、意外と「王道」ってあるんだな、と。課外活動も金融・コンサル系が多いって話をしたけど、卒業後はそのまま金融・コンサル系の会社に就職することがやっぱり多い。そこはハーバードでもそうなんだって、ちょっとがっかりしたかも。
前田:MITは、割とコンピューターサイエンスの専攻とかで、とらえずGoogleをはじめとする有名企業に入って人生勝って終わり、みたいな人が多いかな。サイエンスで世界を変えようと思っている人が多いのかと思っていたけれど、いいとこ就職しようって人が結構多くて、がっかりしたのはある。
大学院にいくのは33% ぐらい。確かに、就職した学部卒業生の平均初年収が日本円で950万円ぐらいあるから、仕方がない気がしないでもあるけど、もっと学問を通じて世の中を変えようという精神があってもいいような気がする。
これは学部の問題で、大学全体ではそういう精神があると思うけれど。でも、アカデミアに行こうという人があまり多くなくて、僕がPh.D行くって言ったら、「おおっ」みたいな反応を受けるね。
高島:そうなんだー。ハーバードは1回社会に出て、その後に大学院に戻る人も多い気がするな。ロースクールとかビジネススクールとかも含めてだけどね。
あとは、キャンパスの中で全てが完結してしまうこともあるかなー。Harvard bubbleって言って、ハーバードの周りだけで生活が完結して閉じこもってしまうことを指す言葉があるんだけど、まさにその通り。先学期はボストンの外に出たことがラグビーの遠征の2回きりだった……。もちろん上級生には学校の外でインターンしている人もいるから、人によるかもだけどね。
それに比べて、東大生はバイトとかインカレサークルとかで、学校の外の人と触れ合う機会であっていいなって思うことはよくあるな。じゃあ東大の話題が出たところで、東大との比較いってみますか。
<前回の記事を読む>
第1回 授業と研究とダンスと宿題に追われ、走る続けるハードな日々
第2回 日本の大学と比べ自由度はかなり高く、選択肢もより多い
~医療機器のデザイン、ロボット制御など、MITの授業を紹介!
第3回 寮ともシェアハウスとも違う、fraternityってどんなところ?
第4回 アメリカの大学の試験事情~落とされる人が多いって本当?