(2017年10月掲載)
多様性と能力主義、ハブとしても魅力
突然留学に行くと決め、今からだとどこに行けるんだろうかと探して、たまたま目に留まったのがシンガポール国立大学(NUS)です。調べれば調べるほど、自分にぴったりの行き先だと思うようになりました。実は、現地で受ける授業などの内容面については、 自分の興味の変化と、シンガポールで比較研究をするからこそより意味のあることを擦り合わせる形で、申請時と留学直前の1年の間で少し変わりました。そこで今回は、申請時に考えていた(そして今でも変わらない)大きな理由を三つあげたいと思います。
一つ目は多様性です。シンガポール国内での民族や宗教の多様性に加えて、NUSは外国人比率も約30%と高めです(※)。留学生オリエンテーションでは、中国などアジアからの留学生よりも、欧米系の留学生の方が多く、寮や授業の中では彼らと接する機会も多いです。英米の大学は、大多数の欧米系学生と中国人で構成される学校も少なくないと聞く中で、この環境は「グローバル化とはどういうことか」を肌でより感じやすいのではないかと思いました。
※民族構成は、中国系74%、マレー系13%、 インド系9%、残りはその他。
先日発表されたTimes Higher Educationの大学ランキングにおいて、NUSのInternational outlookの項目は100位以内の大学内で7位。
二つ目は激しい競争です。シンガポールの教育は「メリトクラシー(能力主義)」という言葉とセットで語られることが多く、定期的な全国テストと早い段階での選抜が特徴です。国もNUSには、学習環境の整備や奨学金に多く資金を投資しています。必然的に勉強する時間が長くなる留学において、彼らの中で揉まれることは、目標としていたように自分を鍛えるのに良い環境だなと。英語も中国語も、授業の議論やプロジェクトの中で実践に使える力がつきそうだと思っていました。
また少し違った視点では、多少極端な学力競争の中で育ってきた学生たちが、今何を豊かだと感じ、これからどのような社会を求めるのか、ということに関心がありました。 国の資源の少なさ故に人材育成に相当力を入れるこの国は、先端的な教育手法に基づいて子どもの力を引き延ばすのがうまいという話も、大学での試験期間の自殺者が社会問題になっているという話も聞いていました。幅広く教育改革が叫ばれる日本においても、教育にとりわけ真剣に向き合ってきたこの国から得られる示唆は多いのではないかと感じていました。
最後は、 アジアのハブ(Hub)として国全体が現在進行形で成長を続ける、その風土とタイミングです。政府が“Smart nation”を掲げ、国として上昇気流にあり、日本から会社を移すところも多く……という話をよく耳にする中で、2017年の“今”、シンガポールに行くのは面白いのではと思うようになりました。
また留学先によっては、都会から離れた学園都市として施設が充実しているために、キャンパス内で生活が完結する場所もあるといいます。その点シンガポールでは、そうした現場にすぐに 足を運び、生の情報に触れられるのも魅力の一つでした(シンガポール名物の交通手段のUber TAXI 30分で、主要な場所はどこにでも行けますし!)。
自分に合った場所を見つけるのは自由な発想で
以上が 留学先を選んだ大まかな理由です。実際に来てみてどうだったのかについては、今後実際の生活についての記事を書く中で説明していきます。
例えば、「多様性=良いこと」と条件反射のように話が進みがちですが、実際に「色んな人がいること」の、何が自分にとって良かったのかといった話にも、きちんと踏み込みたいと思います。
最後に締めくくりとして留学先選びについて今思うことは、結局「自由な発想で自分に合った場所を見つけるのが大事」なんだなということです。
例えば、自分の大学が持っている留学制度を用いることは手段の一つでしかありません。僕の大学の先輩には、別に単位交換が重要なわけじゃないと、自力で米国トップ大学の1年編入の手続きと、そのための奨学金をもぎ取ったという人もいます。
また、自分は当初「留学といえばアメリカ?」となんとなく思っていましたが、今はこうして常夏の国にいて、周りの留学仲間もイギリス、アメリカ、中国、フランス、カナダ、オーストラリア、イタリア、ルクセンブルク…と本当に様々です。
今後再び留学する機会に恵まれた時がもしあったとしても、広くアンテナを張り、柔軟な発想と挑戦する気持ちを持って、準備に臨みたいと思っています。
村田幸優(ゆきひろ)くん:東京大学教養学部からの交換留学で、シンガポール国立大学(National University of Singapore:NUS)に留学中。高校2年生の時、模擬国連大会の日本代表として国際大会に出場。中高時代はワンダーフォーゲル部に所属して各地の山を渡り歩く。料理の腕前は誰もが認めるところ。