前田智大くんのMIT便り ~世界のトップ大学ってどんなとこ?
第10回 MITの3年生の生活って?
前田智大くん MIT [Electric Engineering & Computer Science ]3年
(2016年12月掲載)
フラタニティー(寮)のリーダーになります!
お久しぶりです。
3年生の1学期もそろそろ終わりを迎えています。僕自身の近況については、学問も研究もダンスも順調にいっているんじゃないかと思います。ダンスは、MIT Newsに取り上げられたので、興味があれば見てください!
https://www.youtube.com/watch?v=oqtq6TjV5RQ
今回は、3年生になって前の年と変わったことをざっくり話したいと思います。日本の大学では、3年生になると専門の授業の比重が格段に大きくなるようですが、MITでは取る授業が少し応用的なことを除いては、あまり実感はありません。しかし、より多くの責任があるという点で、上の学年になったという感はあります。
例えば、僕の住んでいるフラタニティーで、今学期はhouse chairという役職をしています。
※フラタニティーとは、詳しくはこちらをどうぞ。
⇒「第3回 寮ともシェアハウスとも違う、fraternityってどんなところ?」
簡単に説明すると、住んでいる家を綺麗に保ったり、町が行う家のインスペクションをきちんと合格するようにしたりという責任があります。家の細かなものであったり、修理に必要な道具だったり、案外英語で言えなかったりします。土曜日の朝にある掃除や、学期に2回ある大掃除では多くの人に何をするか指示を出します。みんな掃除が嫌いなので(笑)、うまく指示したり、本当にさぼりたがりの人には厳しい態度をとったりしないといけないので、結構大変です。
次の学期からはプレジデントになります。責任としては、それぞれの役職のマネジメントと、何かあったときの問題対処、あとはフラタニティー代表としてみんなのロールモデル(模範)となるように行動しないといけません。多くのメンバーからの信頼が必要なので、光栄な役職であるとともに、責任が多いのも確かです。アメリカにきて、初めてのきちんとしたリーダーらしいポジションなので、かなりうれしいです。
特許取得を目指して新技術の開発に挑戦
研究では、先学期までしていた研究にある程度めどがついたので、メディアラボで新しい研究をしています。詳しいことが書けるほどまだ研究が進んでいないのですが、研究室はCamera Culture Groupといって、主に光学やコンピュタービジョンを用いて、何か新しいものを観測できるようにしようという研究を主に行っています。
カメラといっても一般的にいうカメラを作っているグループではありません。具体的なプロジェクトには、閉じたまま本の中身を読んだり(https://www.youtube.com/watch?v=6i25SuJzb0A)、曲がり角ので見えないところを反射した光を使ってみたりというものです。実用に近い例では、スマホにレンズをつけて、目の病気を診断したりという技術があります。僕の研究は、 今のところ time of flight cameraといって、カメラからの距離を図る、新しい技術の開発です。次の学期から自分でプロジェクトを考える予定ですが、今のところは新しく入ったのもあり、大学院生の一人と共同で特許を今学期中に取ろうと頑張っています。
メディアラボはオープンなスペースが多く、たくさんの企業がスポンサーとして付いていて予算がかなりあったりと、一般的な研究所とはかなり違う印象があります。予算がたくさんあるので、僕の研究グループでは、「たぶんラボにこの部品はあるけど、お金があるからとりあえず必要な部品は全部買っていいよ」と言われました。メディアラボから生まれたスタートアップ(起業)も多く、グループミーティンではインドで立ち上げたスタートアップの状況報告などもありました。社会に与えるインパクトを重視し、外部への見せ方もうまいメディアラボでは、多くの研究室とは異なる、大きなエネルギーを感じます。あとは、ガラス張りの建物で、中のスペースもオープンなこともあり、いい環境で研究できています。
視野を拡げるために、大学で学びながら企業でハードウエア開発に取り組む
3年生になると、卒業後の進路なども考え始めます。主に就職と大学院に行く二つの選択肢があり、直接大学院に行く割合は統計によると3人に1人、エンジニアリングの学科だとそれよりもかなり少ない印象があります。
僕の場合はMITのMEngプログラムというものをします。簡単に説明すると、エンジニアリングの生徒で成績がある程度良ければ、卒業後もう1年MITで大学院の授業を取り、thesis(学位論文)を書けば修士の学位ももらえるというプログラムです。普通、修士は2年かかるので、1年で修士を取れるのはかなりお得なプログラムです。MEngではみんながティーチングアシスタントとして授業の一部を教えたり、リサーチアシスタントとして研究室からお金を出してもらったりしてMEngの授業料を払い、給料を少しもらいます。
僕は6Aプログラムを考えています。このプログラムはMEngの一つの選択肢として、1年のうち半分を企業で働き、企業でのプロジェクトを元に後の半年でthesisを書くというものです。1年間の授業料を企業がカバーし、給料も出ます。僕はMEngの後にPhDを考えているので、企業で働くという経験なしに大学院に行きたくないと思い、このプログラムをすることに決めました。僕が働くのは、Analog Devicesという会社で、回路やセンサーなどを専門としているところです。研究とは少し違ったハードウエアの開発が、将来自分の研究をする時に役立つと思います。
<前回の記事を読む>
第1回 授業と研究とダンスと宿題に追われ、走る続けるハードな日々
第2回 日本の大学と比べ自由度はかなり高く、選択肢もより多い
~医療機器のデザイン、ロボット制御など、MITの授業を紹介!
第3回 寮ともシェアハウスとも違う、fraternityってどんなところ?
第4回 アメリカの大学の試験事情~落とされる人が多いって本当?
第5回 時間がたっぷりある冬休み・夏休み。みんな何をしているの?
第6回 MITの教室めぐり~活動のタイプに合わせた様々な部屋を準備。でもホームルームはない!
第7回 在校生が語る MITとハーバード、どこが・なぜスゴイのか?!
第8回 授業の取り方からサークル活動、恋愛観まで、東大との違いを語りつくす!
第9回 海外で学ぶからこそ、見えてくること~"Our Country" という言葉が日常会話に出てくる環境で、「国」って何かを考える