グローバル・キャンパスツアー

四分の一が留学生。自由な校風の北京大学

北京大学 翁雨音さん

School of Journalism and Communication 2年生

(2018年10月掲載)

海外の大学ってこんなところ

■大学について簡単に紹介してください。

 

北京大学は1898年に創立され、今年120周年を迎えた中国のトップ大学です。北京市内の大学が密集している海淀区に位置し、すぐ北に頤和園と円明園、東隣には北清と並び称される清華大学があります。「愛国、進歩、民主、科学」を校訓とし、自由な校風で愛校心も強いです。有名な卒業生に現在の首相の李克強、バイドゥCEOのロビン・リーなどがいます。

 

大学について知りたい方は、まず公式サイトをご覧ください。→http://pku.edu.cn/ 英語版もあります。

 

■授業の取り方や現在の時間割、自習のしかたや自習する場所は?

 

学期の初めに必ずあるのが授業選択。北京大学の履修登録には、「オンライン賭博場」の異名を持つ独特の抽選システムがあり、毎度一喜一憂する学生の姿が見られます。1人あたり99ポイントの「意欲点」が与えられ、選択科目にそれを割り振っていきます。意欲点を多く投じた学生からその講義に当選していくのです。まさに、「仁義なき履修登録システム」です。

 

1学期に取る授業数は8~12科目(20~25単位)ほど。日本とアメリカの大学の中間くらいですね。私の学部ではグループ課題と論文が非常に多く、教学棟のソファースペースなどでよくミーティングをしています。自習する場所は自室や教室、自習スペースなど様々ですが、中でも図書館は人気の自習スポットです。

 

■どんな学生がいるの?

 

留学生も中国人学生も一緒に授業を受けます。私の学部は四分の一ほどが留学生で、韓国、マレーシア、ネパールなど様々な国から来ています。外国で生まれ、中学や高校から中国の学校に通っていた「帰国子女」や入学前に預科(foundation course)に在籍していた留学生が多いですが、心理学を専攻している友だちはスペイン生まれでアメリカ育ち、預科に行かず高校から直接大学に進学という私と似た経歴の持ち主で、考え方も似ているのかとても気が合います。

 

中国の学生も全国各地から様々な民族の生徒が来ています。私のクラスにもチベット族、ウイグル族など少数民族のクラスメイトがいます。クラスで一番仲がいい中国人の友だちは内モンゴル出身で、羊の丸焼きの味について話してくれたり、漢服サークルに入っているので中国の伝統衣装を勧めてきたり、灯篭をモチーフにしたイルミネーションを一緒に見に行ったり、何かと面白い子です。

 

■校内のカフェテリアや校外で行きつけのレストランは?

 

学食は複数あり、私は教学棟に一番近い「農園」でよく焼き餃子を食べています。講堂のそばの「燕南」は石焼ビビンバが美味しいのですが、人気の食堂であるため毎日過酷な席取り合戦が繰り広げられています。他にも中華まん専門店の「松林」や夜食を売っている食堂もあります。私が北京に来て初めて食べたのが、麻辣香鍋(マーラーシャングォ)です。肉や野菜など様々な具材を辛く茹でた汁のない鍋で、1人はもちろん、友だち同士やカップルでつつくこともできるオススメの料理です。

 

宿舎の横の小西門を出ると、学生の懐にも優しいレストランが立ち並んでおり、クラスや部活の懇親会にもよく使われています。

 

■学校の名所やお気に入りの場所は?

 

冬の未明湖
冬の未明湖

学校の北側には未名湖という湖と、その横に博雅塔というシンボルタワーがあり、学生の憩いの場であるとともに観光客もたくさん訪れます。未名湖は冬になると氷が張り、スケートリンクに変身します。大阪出身で例年雪もあまり見ないので、去年湖が凍り始めるのを見て驚きました。スケートは好きで以前何回か滑ったことがありますが、自然のリンクで滑るのは初めてでとても興奮しました。

 

大学では

■何を専攻しますか?

 

メディア学に興味があり、3年生以降に専攻するつもりです。高校時代から念願だった動画編集や画像編集を大学で学ぶことができ、すっかりこの分野が好きになったので、さらに専門的な知識を学びたいです。

 

北京大学テレビ局のスタジオ
北京大学テレビ局のスタジオ

■クラブや課外活動は?

 

大学のテレビ局と生徒会の宣伝部に所属しています。昨学期までラジオ局にもいました。テレビ局ではPKUPKというバラエティー番組のディレクターを務めていて、街頭インタビューや寸劇の撮影・編集をしています。宣伝部は今学期から部長に就任し、学部のイベントのビジュアルデザインや記録写真の撮影などを受け持ちます。メディア学は座学だけではなく実技も非常に重要なので、技術を身に着ける場としてクラブ活動を位置付けています。授業外でも友だちと長時間一緒にいることで、お互いの能力を知り、高め合えるよい関係が作られていると感じます。

 

大学の授業を紹介! 面白いと思った授業はこれだ

■名記者専題(Seminar on Famous Reporters)(2年後期、ただし北京大学では学年にかかわらず自由に授業を選択してよいので、私は1年後期で履修しました。)

 

実際のメディアで勤務している記者や編集者の方々のレクチャーを聴きます。昨学期はCGTNやGlobal Timesなどからゲストを招待しました。また、昨学期は特別で、大学創立120周年記念のため、北京大学テレビ局と提携のもと、学期を丸ごと使って留学生のalumniをインタビューするシリーズ番組を制作しました。

 

授業が全て英語で行われるため受講を決めました。

 

番組のインタビューも英語で進行し、編集で英語と中国語の字幕を付けるのですが、中国国内と海外の視聴者両方に見てもらえるよう、語感や文化的背景にもこだわった翻訳をしました。母国と中国の架け橋として成功を収めた方々の話を聞くことができ、また学校名義で作品を発表することからプロとして求められる品質を追求する姿勢が身に付きました。

 

■哲学導論(1年後期)

 

プラトンと朱熹、カントと王陽明など西洋と中国の哲学者を比較します。時代も国も異なる哲学者たちの思想が意外な共通点を持っていることが発見できます。

 

高校の時から哲学オリンピックに出場するなど哲学が大好きだったので履修しました。授業の中でLGBTや自殺など社会的な話題を扱うこともあり、議論に哲学の考え方を導入することでその場にいる学生が個人的な人生観から離れて自身の中に複数の視点を持つことができるように工夫されていました。 

 

進路について話そう

■海外の大学で学ぶことを決めるきっかけ

 

高校2年の夏に留学フェローシップの先輩方が勧めてくれました。もともと海外留学には興味がありましたが、交換留学か大学院で行ければいいな、というくらいの「いつか」の話でした。サマーキャンプに参加して実際に学部留学をしている先輩方に出会い、自分もできるかもと思い立って、日米併願を知り、決めました。 

 

サマキャンが終わって数日後、当時実行委員長だった高島崚輔さんと、ファミリーのメンターだった前田智大さん(※)にお茶に誘われ、「やってみなよ!」と強く勧められたのが決定打になりました。その後本屋に連れて行かれて赤本の横の棚にあるSATとTOEFLの本を見せられ、内心青ざめつつもアメリカ受験へのイメージが膨らんでいきました……。

 

※前田さんのみらいぶでの過去連載はこちら

 

■進路を決めてから行なったこと

 

高3の夏は、TOEFLやSATを受験しながら全国模試にも参加し、赤本を解きながらエッセイも書くというまさに地獄の夏でした。でも、同じことをして乗り越えた先輩方がいると知っているから、自分も頑張ろうと思えました。

 

エッセイ執筆の過程で、自分が今までしてきた学習や課外活動が大学以降の学びにどうつながっていくのか、深く考えることが多くありました。結果的に北京大学に入学した後もこういった自己分析は欠かせないものとなり、卒業後にやりたいことを見つけ、それまでに習得すべきスキルを見極めるのに役立っています。

 

■進路や大学を決める際に、大事だと思うこと

 

最初から志望校を絞りすぎないでください。最も理想的なのは実際に志望校を訪れてみて決めること。キャンパスで在学生の人に話しかけてみると校風がよりはっきりわかると思います。距離やスケジュールの問題で海外の志望校にcampus visitするのが難しいという方は、志望校に通っている日本人の先輩と仲良くなって、たくさん話を聞くのもいいと思います。

 

高校時代に読んでおきたい本

『かぜのてのひら』

俵万智(河出文庫)

短歌を詠むのが趣味で、歌集を時々読みます。現代短歌の元祖ともいえる俵万智先生「サラダ記念日」で有名ですが、他にも非常に良い歌集を出されています。『かぜのてのひら』は俵先生の第二歌集で、高校教師をしていた時期に書かれたものです。日常生活で得られた感慨を口語と文語のちょうどいい組み合わせで詠っています。以下は作中のおすすめの短歌です。

 

チューリップの花咲くような明るさであなた私を拉致せよ二月

ひかれあうことと結ばれあうことは違う二人に降る天気あめ

潮風は今いちばんの夢もよう二人の時計の針さびてゆけ

 

いかがですか。このような詩性あふれる歌がたくさん収録された『かぜのてのひら』をぜひ手に取ってみてください。

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■こちらもおススメ

『パワーエリート』

ライト・ミルズ 鵜飼信成、綿貫譲治:訳(東京大学出版会)

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『メディア論―人間の拡張の諸相』

マーシャル・マクルーハン 栗原裕、河本仲聖:訳(みすず書房)

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『愉しみながら死んでいく―思考停止をもたらすテレビの恐怖』

ニール・ポストマン、今井幹晴:訳(三一書房)

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Supported by グローバルな学びのコミュニティ 留学フェローシップ

http://ryu-fellow.org

 


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