世界へ”FLY”する東大生
~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ
登阪亮哉くん(東京大学)
(2016年10月掲載)
2016年9月29日に始まった僕の旅は、2016年2月9日に帰国したことで終わりました。
半年経った今でも世界一周中の日々のことを時々思い出しては感傷に浸っています。最後の最後にあった接続ミスというトラブルさえも、旅人との出会いでいい思い出になりました。
思い返してみると、あまりにも多くの人に支えられた旅でした。国内外でサポートしてくれた友達や、カウチサーフィンというサービスでホストとして僕を泊めてくれた現地の方、各地の宿で出会った旅人など、毎日誰かに助けられていたと言っても過言ではありません。そして、そういった人々との交流が最も美しい思い出となっています。例えばマレーシアでは、たまたま同じ部屋になった違う国出身の4人でカレーを食べに行きました。それぞれの出身地やこれまでの旅について語り合い、英語を褒められたり周囲のおすすめの観光地を紹介してもらったりと、とても楽しい時間を過ごすことができました。
また、各国で複数都市に滞在したおかげで、国だけではなく街によっても様々な風土の違いがあることを肌で知ることができました。そういった違いの背景にある歴史、文化に思いを馳せると、ただ街を歩いたり買い物したりするだけでもとても面白いです。そしてこれは、世界史や地理や英語を勉強したからこそ得られる面白さなのだろうなと感じました。
初めての一人旅でしたが、防犯や健康管理についてリサーチしていたおかげで、深刻なトラブルには巻き込まれずに楽しむことができました。また、旅の主目的が学習でありそちらに準備の時間を割いたため、観光については行き当たりばったりな側面もあったのですが、それもよかった気がします。予想外のことが日々起こるため、毎日が楽しかったです。
旅を経て変化した価値観
よく、海外旅行によって価値観が変わる・広がると言われます。僕の中で具体的に変わった価値観は主に以下のような点が挙げられます。
まず、日本での生活が世界の中でどれくらいの水準なのかというのを肌感覚で知ることができました。日本は街並みや人々の生活水準を見る限り、間違いなく先進国に該当します。しかし、物価は先進国の中ではかなり安いように感じました。サービスの質がとても高いことから考えると、アンバランスかもしれません。この点については、背景にある日本固有の労働形態などの社会問題も感じられました。
また、人間の生活と土地との関連性は思っていた以上に強いのだと実感しました。食事や住環境はもちろん、職業や性格の傾向も土地によって規定されている面が強いように感じます。人々が住んでいる街をその街らしくしているというよりも、その街らしさによって住んでいる人々の性質が変わっているような印象を受けました。特に人々の性格についてそのように感じることが多かったです。根拠は薄いのですが、個人的には旅で身に付いた重要な感覚だと感じています。
また、途上国とはどのような状態かということについて、今まではただ単に「生産する付加価値が小さい」「一人当たり所得が小さい」と考えていました。しかしこれは結果であり、その背景には「資本の集積が進んでない」という原因があるのだと、彼らの生活を目にする中で知ることができました。もちろんこれだけが原因ではないでしょうが、プロセスとして非常に納得しやすく、重要であると感じています。また、そもそもこのように学習段階で結果だけを知っている知識について、実際の現地での生活に思いを馳せることで原因を探るという思考を身に付けることができました。
この旅を通して、改めて日本が住むには最適の国であると実感しました。一方で、海外の情報を知ることと、実際に海外に行くことの重要性も痛いほど感じました。今後の人生でも、何度も旅に出ようと思います。
後輩のみなさんへ
最後に、この記事を読んで少しでもFLY Programに興味を持ってくださった高校生のみなさんへ伝えたいことがあります。ぜひ、FLY Programに採択されることを目指して努力してみてください。東京大学に合格することも、FLY Programで実施できるような計画を立てることも、正直なところ非常に困難です。上手くいかない可能性もあります。しかし、そこに至るために尽くした努力は、いずれ違う形で実を結びます。だからこそ、たとえ困難に思えても、心惹かれる選択肢があったら躊躇なく飛び込んでみてください。そうすれば、僕がFLY Programで得られたような感動をみなさんも得られると信じています。
※東京大学初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/fly/
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