世界へ”FLY”する東大生
~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ
登阪亮哉くん(東京大学)
(2016年10月掲載)
ハノイからの帰国に関して、忘れられない思い出があります。
ベトナムのハノイから日本に帰る際、僕は香港経由の便を選択しました。その飛行機は朝早くに出るものだったので当日の6時には空港に着き、眠気と戦いながらチェックイン開始のアナウンスを待っていました。しかし、出発の45分前になっても呼び出しがありません。さすがにおかしいと思いカウンターに行くと、なんと飛行機が欠航になったとのことです。
僕と同じように混乱した乗客が集まっていたのですが、突然その集団が移動を開始しました。近くの人に聞いてみると、どうやら振替便があるようなので、そのための手続きが今から始まるそうです。その便の発着時間を聞くと、僕が乗るべき香港発・成田行の飛行機にギリギリ間に合うか間に合わないかくらいの時間に着くようです。不安になり、思わず航空会社のスタッフに自身の状況と乗り換えが失敗したときの補償についてまくしたてました。皮肉にもこのような形で自身の英語力の向上を感じました。慌てる僕を、スタッフは「間に合うから大丈夫ですよ。香港に成田への乗り継ぎ客を案内するスタッフを手配してありますから。」と優しく諭してくれました。
安心して香港行きの飛行機に乗り、いったん入国審査を受け、慌てながら乗り継ぎのためのカウンターを探しました。時計を見るとおそらく正規のチェックインはすでに締め切られていて、特別な手配が無ければ乗れないだろうという時間になっていました。空港がとても広く少し迷い、ようやくカウンターを見つけ、早口で自分の状況を説明しました。すると、「もともとの便にはもう乗れませんが、代わりの便を探すので2時間ほど待っていてください。」と言われました。やっぱり間に合わなかったじゃないかとがっかりしていると、同じくハノイから日本に帰ろうとしていた日本人に声を掛けられました。
同じトラブルに遭った人との「一期一会」
なんと彼も最近まで半年近くバックパッカーをしていて、ようやく日本に帰ろうとしていたそうです。僕たちが乗ろうとしていた便は日本時間の夜に着くはずだったので、僕は直後に友人の家で帰国パーティーを催してもらう予定だったのですが、彼も友人と帰国直後に寿司を食べに行く予定だったようで、お互いに残念だったねと慰め合いました。他にも休学中の大学生であることなど共通点が多く、すぐに打ち解けて、二人でベンチに座ってひたすら喋っていました。互いの旅について話しているとあっという間に2時間が過ぎ、二人でカウンターに行って状況を確認しました。しかしまだ振替便が見つからないそうです。なんとなく不安に思いながらまたしばらく待ち、再び振替便についての状況を確認しに行きました。すると、なんと見つかった振替便が翌日の午前5時に発つ便とのことでした。チケットを受け取った時点でまだ午後5時だったため、約12時間もありました。
それから12時間、その旅人と二人で途方にくれましたが、とりあえず充電がしたいねということで、空港の中を探検してコンセントがある飲食店を探しました。二人とも旅の最終日ということであまりお金を持っておらず、安くて長時間居られる場所を探した結果、スターバックスを見つけたため、閉店までそこに居座りました。僕はプラグ変換器や延長コードなどを持っていたため二人で複数のデバイスを充電でき、彼はお菓子をたくさん持っていたので金欠の二人でも空腹を満たすことができました。話の内容もどんどん深くなり、互いの学習分野や将来の夢についてまで話しました。
そうして一晩を明かし、ようやく飛行機に乗ることができました。幸いにも席は隣でした。成田空港に着いたときには、二人で何も言わず握手しました。その後、日本での最初の食事もせっかくだから二人で食べようということで空港内のお茶漬け専門店に行き、舌鼓を打ちました。
その後、互いの帰路に就き、彼とは別れました。互いの将来の夢まで語り合った相手ですが、なぜか互いに名前を聞くことも、連絡先を交換することもありませんでした。偶然出会えたからこそ、そのようなことをするのが無粋に思えたからです。
こうして、最後の最後に降りかかった接続ミスという困難が、素晴らしい思い出に変わりました。
つづく
※東京大学初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/fly/
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