(2017年9月掲載)
今回は、いよいよ原稿とスライドが揃った状態でどのように練習し、本番ではどう振る舞うかについて解説します。
練習は以下の1~4で進めます。Step4と5は、まず初めの2つのステップです。
1.実際に何度も読みこむ
まずは、原稿を声に出して読んでみましょう。最初はスライドを使わず、原稿だけで、間(ま)や緩急を意識しながら読み込んでいってください。初めは専門用語などで滑舌が悪くなりがちですが、何度も読んで慣れれば解決します。
それができたら、次はスライドを動かしながらやってみてください。予想以上に自分の視線が行ったり来たりしてしまうことや、スライドが動くと間が取りづらいことがわかってくると思います。これも、練習によって発表内容の暗記が進み、流れや重要な言い回しを把握することで徐々に解決していきます。
2.読みづらい言い回しやわかりにくい部分を修正する
実際に読み上げてみると、文字ベースで原稿を書いている時には気付かなかった問題点が見つかります。例えば一つの文章が長すぎたり、主述関係がわかりにくかったり、言葉が難解で読みづらかったりすることが多々あります。このような部分は、聞いている人にとってもわかりにくいので修正しましょう。
また、そもそも全体の構成が悪い場合や、スライド切り替えのスピードが遅くてテンポが合わない場合などもあるので、そういった場合はスライドごと修正していきましょう。
繰り返して練習する時には、以下の2点に注意します。
3.時間を測りながら読み、過不足を調整する
自分で納得のいくところまで原稿を修正できたら、今度は時間を計りながら練習してみてください。この時、各章ごとにかかった時間を記録しておくと、全体のバランスがわかって修正しやすいです。また、自分では気が付かなくても、時間配分を見たら冗長な部分もあるので、そういうところは表現を工夫したり、具体的すぎる情報をスライドで示すのみにとどめたりしてスムーズに進められるようにしましょう。
こうして修正と練習を繰り返し、本番で与えられた時間より5〜10秒ほど短いプレゼンが安定してできるようになれば、ほとんど完成です。
4.誰かに発表を見てもらう
最後に、誰かに発表を見てもらい、感想を聞きましょう。できるだけいろいろな人に見てもらった方が良いです。また、プレゼンについては個々人の好みもあるので、構成などについての具体的なアドバイスを聞くよりは、プレゼンを通して与えたい情報を与えられたか、引き出したい感想を引き出せたかというのを確認してみてください。
ここまでできれば、本番でも十分に質の高いプレゼンができると思います。
本番では基本的に練習と同じことをすれば良いので、難しいことを意識する必要はありません。自信を持つこと、そして相手に与えたい感情を自身にも当てはめて、表情や声色に反映させながら発表することが、上手くいく秘訣です。
また、以下の場合を考慮して、対応を考えながら本番に臨むと良いです。
・機器などのトラブル
パソコンとプロジェクターとの相性が悪かったり、途中でスライドが動かなくなったりと、プレゼンにトラブルはつきものです。まずはそういったトラブルがなるべく起きないよう、自前のパソコンとは別にスライドファイルをUSBメモリに入れて持参したり、事前のリハーサルで動作を確認したりといった準備をしましょう。その上で本番中にトラブルが起きてしまった場合を考慮して、スライドを印刷しておくのも一つの手段です。
僕がTeach For Japanでプレゼンした時は、リハーサル後にプロジェクターの調子が悪くなり、スライドが映せなくなってしまいましたが、配布用にスライドを印刷していたことで、何とか滞りなく進めることができました。プレゼン内容に自信を持っていたので、トラブルがあっても落ち着いて対応することができたと思います。
・質疑応答がプレゼンの全ての印象を左右する
どれだけ素晴らしいプレゼンを披露しても、質疑応答でたどたどしくなってしまえば意味がありません。とは言え、心配することはありません。原稿やスライドを作り、練習を繰り返す過程で、プレゼンの内容に関する理解はとても深くなっているはずですから、鋭い質問にも答えられるようになっているでしょう。
自分が知っている内容について応答する場合は、その出典まで言及しながら説明すると非常に印象が良いし、情報としても有益です。
逆に、知らない内容について答える際は、まず「知らない」という旨をはっきりと述べた上で、自分が知っている内容をもとに推測して、「私はこうではないかと考えています」と述べることができれば(かつ、それが説得的であれば)優れた説得的なスピーカーとして記憶されると思います。
僕からのプレゼン講座は以上です。
プレゼンは、人の考えや心の動きを想像しながら発表内容を洗練させていく、とても知的な営みだと思います。イヤイヤやっても身になりませんが、頭を使いながら楽しめば、ふつうの学習よりもずっと意義深いものになるでしょう。
ぜひ、部分的にでも僕の作り方を参照しながら、みなさん自身のプレゼンをよりよいものにしていってください。頑張ってください。
おわり