第86回情報処理学会全国大会 第6回中高生情報学研究コンテスト
群馬県立高崎高校
チーム名 エレウィルコンパニオン
清水孝一くん(執筆者)、清田侑希くん 学年:1年生(令和6年度)
(2024年3月取材)
高齢者の間で増加している電動車椅子に関連する交通事故は深刻な問題で、年間180件以上の事例が報告されています。私たちはこの社会問題を解決し、車椅子利用者の安全性を向上させるために、リアルタイムの物体検出と障害物警告を提供するデバイスを開発することを目指しています。
YOLOv8やOpenCVなどの先進技術を使用して物体検出と寸法測定を行い、リアルタイム映像をフロントモニターに表示し、衝突や事故のリスクを軽減します。これは利用者に周囲の状況を意識させ、自立性を向上させます。
また、GPSモジュールを活用して危険箇所を地図上に表示し、事前に危険を回避できるようにし、さらに、溝にはまるなどして動けなくなってしまったとき支援者に位置情報を送信して助けを呼ぶ仕組みも実装予定です。これにより、車椅子利用者が安全に外出し、より自立的な生活を送る支援が提供されます。
※クリックすると拡大します
■今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。
近年(平成 23 年〜平成 27 年)の交通事故件数の推移をみると、電動車椅子の交通事故件数は、年間180件前後発生しています。死者の9割以上、負傷者の7割近くを65歳以上の高齢者が占めています。
少子高齢化が進むことによって、今後もっと車椅子の事故が増加すると考えられます。車椅子の事故は、横断時に1番多く、次に背面通行時に多いです。
既存のAIを搭載した車椅子は、自動運転や対話システム、ユーザーの移動パターンを学習し、最適なルートや動作を提案するAIナビゲーションシステムが搭載されていますが、安全装置が搭載されているものはありませんでした。
もちろん、環境認識や自動避難などの機能を実装した、障害物の回避や自動追尾などの機能を提供してくれるAI技術を利用した車椅子が自動運転を実現していますが、高価な上に、人間ではなく機械が障害物の回避を行っているため、認識できなかったり誤認識したりするときがあります。
私の住んでいる群馬県は、事故発生件数が全国でも上位にあります。そのため、事故を減らし、バリアフリーのために、何かそれを解決するための装置を開発しようと考えました。そこで、安全装置の「車椅子安全装置」が必要であると考えました。
また、先生から清田くんと共同開発しようと言われたので、清田くんの考えもあわせて機能を追加しようと思いました。
■今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。
3か月ほどです。
■今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。
実際に組み立ててみると、思ったより配線などが多く、雑然とした状態になってしまったことと、カメラからのフレームの取得から物体検出までのアルゴリズムを考えることです。
GPSモジュールから、サーバーを介してデバイスとスマートフォンなどと通信することも難しかったです。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。
物体検出の結果をモニターに表示できているところです。
この装置は、物体検出を行い、障害物を検出すると車椅子を使用している方に警告をするというものです。もちろん、機械なので、誤認識や認識できない可能性があります。そのため、車椅子を利用している方に後ろが確認できるように、前のモニターに後ろのリアルタイムの映像を表示して、車椅子を利用している方自身にも後ろの様子を確認できるようにしたいと考えました。
■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。
[清水孝一くん]
AIを活用したタスク管理アプリケーションや、物体検出AIを用いて交通量の最適化を図る装置の開発を、もっと良いマイコンで車椅子安全装置を改良するということを検討しながら、進めていきたいと思っています。
[清田侑希くん]
AIによる物体検知を用いた、バーコードなどを用いずに物品を管理し、その物品をデバイスでどこにあるかを画像上に表示することで、物品の個数管理と保管場所をわかりやすくし、作業や在庫管理の効率化を図るアプリを作ってみたいと考えています。
※「エレウィルコンパニオン」チームの発表は、中高生研究賞奨励賞・初等中等教育委員会 委員長賞を受賞しました。