第85回情報処理学会全国大会 第5回中高生情報学研究コンテスト

「宇宙の目」で農作物の栽培適地を探索、食糧問題の解決へ!

チーム名:NutcRacKer

東京学芸大学附属国際中等教育学校

外山みちるさん(5年)、大津彩渚さん(5年)、花山あかりさん(5年)

(令和4年度現在)

(2023年3月取材)

衛星データを用いた農作物の栽培適地の抽出方法の提案

近年、気候変動によって地球環境が変化し、生き物の生息する地域も変化している。人々が食料として栽培している植物も例外ではない。本研究では、持続的に食料を生産することを目的に、衛星データを用いて農作物の栽培適地の抽出方法(以降、本手法と呼ぶ)を提案する。

 

本手法の検証のため、複数の作物について降水量・平均気温・日較差・日照時間などの栽培条件に合致する地域をGoogle Earth Engine上で抽出した。名産地と呼ばれる地域が抽出地域に含まれていたことから、本手法は実態に即していると裏付けられる。

 

また、名産地ではない抽出地域は、新たな栽培適地としての可能性を持つと考える。よって、本手法は新たな土地・作物で農業を始めることのハードルを下げるだろう。

 

さらに、1979年と2019年のデータを比較したところ、栽培適地が変化しており、本手法では、今後の気候の変化にあわせた栽培適地の提案が可能であると確認できた。

 

※クリックすると拡大します。

 

■今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。

 

学校設定科目の「Infomatics」の課題でGoogle Earth Engineを用いた探究活動がありました。

 

私たちは全員食べることが好きで、食べ物が豊かな日本での暮らしを素晴らしいと感じています。

 

しかし、近年、気候変動によって地球環境が変化し、人々が食料として栽培している植物も栽培適地が変化していることを耳にしました。

 

そこで、今後、気候変動に対応した新たな栽培適地を探すための手法が求められていると感じ、衛星データ×農業をテーマとしたこの研究を始めました。(大津さん)

 

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。

 

9月に授業内での課題として研究をスタートさせ、週2時間の授業時間で12月までに、1種類の作物での栽培適地の抽出方法を完成させました。その後は、中高生情報学研究コンテストに向けて、対象とする作物を増やし、2月にポスターを提出しました。ただ、発表会を通じて様々な指摘をいただけたので、これから更に研究を発展させる予定です。(花山さん)

 

 

■今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。

 

 初めて扱ったGoogle Earth Engineの使い方に苦労しました。

 

特に、関数型プログラミングに慣れることや、栽培適性の点数を市区町村ごとに平均してランキング化するコーディングに手こずりました。(外山さん)

 

農作物の栽培には、土壌の条件も大きく関わると考え、地質図をGoogle Earth Engineにインポートして分析を試みました。

 

しかし、土壌と地質は異なり、どの地質が農作物の栽培に適しているかを判断する材料が乏しく、妥当性が低い基準になってしまいました。(花山さん)

 

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。

 

4つの農作物×2つの異なる年代について、栽培適地を抽出するプログラムを作りました。

 

異なる作物について、栽培適地を抽出する計算式中の値は違っても、コードの大部分は共通して使えるため、汎用性の高いプログラムが作れました。

 

また、衛星画像の処理から求められたピクセルごとの栽培適性の点数をそのまま可視化するのではなく、市区町村の境界データをインポートとして、市区町村単位でのランキングとして表示できるようにしました。

 

さらに、地図上をクリックすれば、その地点の栽培適性と、もととなる平均気温、日較差、降水量などの値がコンソールに表示されるようにしました。(外山さん)

 

 

■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。

 

個人的に、本研究を通じて農業に情報技術を用いることへの興味が深まったので、農業にもっとフォーカスして、農作業や栽培方針などの部分で情報技術を活かせるような手法について研究してみたいと思っています。(大津さん)

 

指数の求め方の妥当性という点が、今回の研究の大きな課題でした。

 

授業ではGoogle Earth Engineを使用するというのが、目的の一つだったので、妥当性の点は詰めが甘かった部分があります。

 

そのため、より統計的・数理的に正しい手法を用いて指数について考え、研究を進めてみたいと思いました。(花山さん)

 

※NutcRacKerチームの発表は中高生研究賞優秀賞を受賞しました。

 

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