第85回情報処理学会全国大会 第5回中高生情報学研究コンテスト

姿勢によって成績が変わる? を検証する

チーム名:課題研究11班

群馬県立高崎高校

中澤義貴くん(2年)、井上悠也くん(2年)、田中凌雅くん(2年)、湯浅吏宮くん(2年) 

(2023年3月取材)

授業中の学習行動と学力の相関

学力の向上に影響を与えるのは勉強時間だけでなく、それ以外にも様々な要素があるのではないかと考えた私たちは、学力の高い人とそうでない人には姿勢などの学習行動に差があるのではないかと仮説を立てた。

 

インターネットで先行研究を調べると、数人の被験者でテスト中の学習行動とそのテストの点数の相関を取っている研究はいくつかあったが、どれも問題を解く、つまりアウトプットについての研究だった。そこで、私たちは知識を取り込むとき、つまり授業中の学習行動とその授業内容の定着度の関係に着目した。

 

私たちはまず、画像認識AIを用いて被験者が授業中に顔をどのくらいの時間上げているのか下げているのかを数値化する装置を開発した。その装置で授業中の被験者の姿勢と加速度センサーを用いて手の動きを測定する。このようにして得たデータと授業内容の復習テストの点数との相関を被験者50人を対象に取ることを目標としている。

 

※クリックすると拡大します。

 

■今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。

 

勉強の成績を良くするには勉強時間を伸ばすことは必須ですが、必ずしも勉強時間が長い人が良い成績を取るとは限らないと感じることがありました。

 

そこで、勉強の成績が良い人と悪い人の間では、授業中の表出行動に違いがあるのではないかと考えました。

 

先行研究によると、学生の授業全体を通じての表出行動の総量と授業全体についての内的状況との関連を分析した結果、授業者を見る量が多い学生ほど授業の理解度が高いことがわかりました。

 

しかし、この研究で得たデータのビデオ映像を元に実験者自身が観察された表出行動を数えていくものであったため、確認に大きな手間がかかり、被験者も 10人だけでした。

 

そこで、私たちは表出行動を AIによる画像判定を利用して数値化することで、より効率的で客観的に授業中の表出行動と授業内容の定着度の関係の研究を、より多くの被験者を対象としてできないかと考えました。

 

さらに、最終的にはLMS(学習管理システム)として、受講者の授業中の表出行動の特性と授業の定着度のデータを管理者が確認できるようなツールのもととなるものを開発し、 eラーニングによる教育の質を高めるのにつながる研究をできたらなと思っています。

 

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。

 

この研究をしようと考え始めたのは5月で、被験者の顔が上がっている状態を判定し、その状態の継続時間を数値化する装置の実装に夏に取り掛かり、その実装がひとまず終わったのが12月でした。

 

そして、被験者を対象に行った検証は1月に実施し、2月の頭に相関のデータを出しました。

 

 

■今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。

 

まず、被験者が授業を受けたときの表出行動の定量化をどのようにして図るのかについて何度も議論をしたり、先行研究を調べたりしました。

 

また、実装の過程では、被験者の状態を判定するために画像認識AIを用いましたが、その際になるべく精度が高く、正確に判断するためのもととなるモデルの作成に試行錯誤を重ねました。

 

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。

 

装置についてですが、被験者が「顔を上げている」と判断し、その状態が一定の時間続くと、10分ごとに区切られたグラフの数値が増えることで、被験者が授業中にいつ・どのくらい顔を上げて黒板や先生を見ていたかを数値化し、データとして扱うことができるようになりました。

 

また、この装置はwebアプリケーションとして開発しインターネット上にもアップロードしたため、自分のパソコンさえあれば、誰でも何人でもこのアプリケーションをブラウザ上で開けます。そして、各被験者に自分のデータをアプリケーション上からフォームで入力してもらうことで、従来の研究とは異なり、1度に多くの被験者のデータを集めることができます。

 

 

■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。

 

まだまだ、装置を改良する必要やもっと多くの被験者のデータを集めて、より客観的な結果を出す必要があるので、これからもこの研究を続けていきたいです。

そんな中でも、特に、私達は相関が現れたときでは授業ではどのようなことが行われていたのかについて着目行きます。

また、加速度セン サーを用いた筆記量についての研究も並行して進めていこうと思っています。(中澤義貴くん)

 

カメラによる顔の上げ下げの検出は特徴部位の座標を基にしているため、カメラの位置によって検出結果に相違があります。この問題を今後解決していきたいと思います。(湯浅吏宮くん)

 

今回の研究とは直接関係はないですが、顔の表情を検出しそれを反映するシステムや、そこから人の感情を推定する装置を作ってみたいです。(田中凌雅くん)

 

うまく顔の上げ下げをカウントできていなかったところがあったので、今回見つかった課題を解決しながら、今後の研究を進めていきたいと思っています。(井上悠也くん)

 

※課題研究11班チームの発表は、中高生研究賞奨励賞を受賞しました。

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