第85回情報処理学会全国大会 第5回中高生情報学研究コンテスト

80年の気象観測技術をさらにブラッシュアップ! カメラのズレの補正とデータの一元化を図る

チーム名:天文気象部

東京都立立川高校

戸田晃太さん(3年)、安原知廣さん(1年)、井上晴貴さん(3年)、安原拓未さん(3年)

(2023年3月取材)

視程の自動判定に向けた撮影画像のずれ補正と自作サーバーの開発

立川高校天文気象部では約80年前から気象観測を行い、現在は自動気象観測装置からデータを得て分析している。視程(何km先まで見通すことができるかを表す)については、20年間観測が途切れ、4年前に目視観測を再開させたが、毎日継続することの大変さから、本部の先輩(浜島他2020)がRaspberryPiと一眼レフカメラによる自作装置で視程目標物を撮影し、深層学習により自動で判定するシステムを開発した。

 

このシステムを改良し運用を続ける中で、カメラのずれにより深層学習による判定が困難になるという問題が生じたため、本研究では、特徴点マッチングや背景差分法から着想を得た手法などによりそのずれの補正に取り組んだ。

 

画像にかける前処理などを工夫した結果、実用的な精度で補正を行うことができた。また、視程観測の自動化を目指してシステムを改良し、実用性の向上を試みた。自作サーバーを製作し、装置で観測したデータを一元化し、システムの利便性を向上させた。

 

※クリックすると拡大します。

■今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。

 

2020年に本部の先輩がRaspberryPiと一眼レフカメラによって視程目標物を自動撮影する装置を開発し、撮影された画像から深層学習を用いて自動で視程を判定するシステムの構築を試みました。

 

しかし、このシステムを完成させるにあたって、撮影装置のカメラがずれることにより深層学習による判定が困難になるという問題が生じたため、そのずれの補正に取り組みました。

 

また、観測装置から得られたデータをより容易に確認し分析に用いたり、データを安全に保存できるようにするためにサーバー開発に取り組みました。

 

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。

 

ずれを算出するプログラムは半年ほどかけて作成させました。サーバーの構築は2022年12月から取り組み始め、2023年2月に完成させました。

 

 

■今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。

 

APIやwebサイトの作成は初めてであり必要な知識を得るために時間を要したため、実際にダッシュボードを作成する期間が少なく苦労しました。

 

また、ずれ算出については、先行研究となる論文の数が多く、目を通すのに苦労しました。

 

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。

 

・保守性を向上させるためにフロントエンドではシェア率の高いReactを用い、バックエンドでは実装が容易なFastAPIを使用してコーディングを行なった点

 

・ローカル環境とサーバー環境の差異をなくし、開発を円滑に行うためのDockerの使用

・データを表示に適した形で取得するため、MySQLによる観測装置情報のデータベース化

・APIのテストケース作成による動作確認の簡易化

 

ダッシュボードの作成においては上記のような工夫を施しました。

 

 

■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。

 

観測装置から得られるデータをもとに、それらを公開・活用・分析を行うシステムの実現をしたいと考えています。また、観測装置のずれの算出の精度をさらに向上させ、視程判定の完全自動化を目指したいです。

 

 

※立川高校の発表は奨励賞を受賞しました。

 

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