第84回情報処理学会全国大会 第4回中高生情報学研究コンテスト
チーム名:チームぱそこん室
野口夏葉さん(東京都立南多摩中等教育学校 4年)
(2022年3月取材)
新型コロナウイルスの感染が拡大し、オンラインでの授業実施が必要とされるようになったことで、学校現場でも急速にデジタル化が進んだ。本校も例外ではなく、中等後期生だけでなく中等前期生もさまざまなシーンで学校から配布されたタブレットPCを利用するようになった。この状況を迎えたことで、インターネットを介したコミュニケーションが身近になっただろう。
この機会にSNSに代表されるインターネット上のコミュニケーションについて見直すための「tAmatsubu」というイベントを企画した。
この「tAmatsubu(たまつぶ)」はSNSのリプライ機能のような特定の投稿に対して他者が匿名で返信する手法で投稿をするといったシステムを模したものである。
この企画では、事前にリスクを回避してインターネット上でのコミュニケーションの特長を活かすための手助けとなることを目標とした。その報告をする。
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■今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。
スマートフォンの利用に関して働きかけをする「スマホ利用を考える会」の代表を務める中で耳にした、ある問題がきっかけでした。
「twitter上で個人名を出してのやりとりが見られる」ということから、その投稿内容から個人の特定に至る危険があるのではないか、ということです。しかし、それをただ言葉で伝えても当事者となりうる多くの人には響きにくい、というのが実情です。
そんな中で、「SNS上で発信することが好ましくない情報もある」ということを体感してもらえる、今までにないアプローチを考える中で、今回の企画の発案に至りました。
■今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。
発想を始めたのは2021年の5月ごろで、約6か月かけて実施に漕ぎつけました。実施後の分析を含めると約7か月ほどかかりました。
■今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。
気軽に楽しく参加することのできるシステムを作ることに苦労しました。
匿名性を保ったまま、個人の識別を行うためのユーザ名を割り当てる際に、煩雑な作業が生まれないようにくじ引きのような形式をとることにしたり、書き込みが楽しくなるようなブースのデザインを考えたりすることにかなり時間を割きました。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。
コロナ禍ということもあり、感染対策により校内のゴミ箱が全て撤去された状態での企画実施でした。そのため、書き込み時に出る両面テープの台紙をその場に放置してしまう人が出ないように、投稿直後に回答するアンケートへの投票用紙として利用できるようにしました。
感染対策と実施データ収集の両立ができる手法になっています。
■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。
まだ具体的なアイデアはできあがっていませんが、情報技術を利用して、快適な学校生活をサポートできるものを開発してみたいと思っています。
現在はBYODや文部科学省のGIGAスクール構想によって、本校の生徒は全学年を通して全員が端末を利用することができます。この強みをさらに活用できる新たな提案やシステムを今後も続けていきたいと思います。
第84回情報処理学会全国大会中高生情報学研究コンテスト ポスター発表より