第84回情報処理学会全国大会 第4回中高生情報学研究コンテスト

校内放送の聞き逃しを防ぐお役立ちシステムをRaspberry Piで実現!

チーム名:千里放送録音班 

末永温和くん、奥村友陽くん、池上聡範くん(大阪府立千里高校 2年) 

(2022年3月取材)

校内放送自動録音システムの機材
校内放送自動録音システムの機材

校内放送自動録音システムの開発

 

本校では生徒、教職員の呼び出しなどの連絡に校内放送が用いられている。しかし、周囲の雑音によって聞き取りにくいことがあり、大きな問題となっている。そのため、校内放送を自動録音し、さらに音声認識によって文字情報化したものを共有することで、重要な連絡の聞き逃しを防止できるのではないかと考えた。

 

このシステムはマイクに接続したラズベリーパイをスピーカーに設置して校内放送を録音するもので、既存設備の変更を伴わない。そして、その音声および音声認識によって生成された文字情報を共有することができる。2箇所に設置された2台のラズベリーパイを用いて録音されたそれぞれの音声データを比較することで、雑音の録音を除去することができた。

また、一方の故障時にはもう一方のみの動作に切り替わることで、安定性の向上を図った。試験運用は成功しているので、今後は本校関係者にも使ってもらい、使用感の改善にも努めたい。

 

※クリックすると拡大します。

 

■今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。

 

私たちが開発したシステムは、Raspberry Piを用いて自動で校内放送を録音し共有するものです。

 

以前、校内放送を聞き逃してしまい、呼び出しに気づかなかったことがありました。自動で校内放送を録音して共有するシステムがあればとても便利になると思い、「校内放送自動録音システム」を開発することに決めました。

 

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。

 

発案は2021年の2月ごろで、その後4月まで調査や構想を行いました。

 

4月に高校の授業「科学探究」が始まり、その中で今の3人で班を作りました。開発は週5時間以上取り組みました。システムは2022年2月に完成しました。

 

 

■今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。

 

ユーザーの使いやすさを第一に考え、生徒や教職員のデバイスでも問題なく使えるようにすることが大変でした。

 

特に、GIGAスクール構想で全校生徒に貸与されたChromebookには、もともと使用しようと考えていたチャットサービス(Discord)が使用できないなどといったさまざまな制限があり、その制限下でも使えるようにすることが大変でした。(末永くん)

 

 

この研究で一番大変だったのは、運用実験でした。自分たちで企画書を作ったり、先生方にシステムの利用をお願いしたりといろいろ大変でしたが、これらの運用実験から公開範囲の設定や個人情報の扱いについてなどの様々な課題を発見することができました。(奥村くん)

 

 

2つのシステム間の相互確認システムの開発です。主にどういった方法で通信するかなどの点で悩みました。結果的には、Discordというチャットサービスのチャット上にテキストを送信することで通信を行っています。なお、システムのログも同サービスのチャット内に共有することで、管理を簡単にしています。(池上くん)

 

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。

 

システムの安定性を確保するためにプログラムやハードウェアの構成の中にメンテナンス性やセキュリティーの面を取り入れた点に注目してほしいです。(末永くん)

 

 

この研究で一番注目してほしいところはシステムの安定運用に関する工夫です。Raspberry Piを2台で稼働させることによって、片方が故障しても、もう片方が動作を継続させることができるようにして、冗長性を確保しています。これらの工夫により、様々な問題が発生しても対処できるようなシステムを開発しました。(奥村くん)

 

 

既存の設備には手を加えずに、完全に後付けで動作する点です。このシステムは放送のスピーカーにマイクを取り付けてRaspberry Piをインターネットに接続するだけで、自動録音・文字起こし・共有機能を用いることができます。(池上くん)

 

 

■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。

 

生徒と教職員の円滑なコミュニケーションツールや、学校教育を支援できるシステムを作成してみたいです。(末永くん)

 

 

この研究の続きにはなってしまいますが、この研究の今までの運用実験では教職員を対象に行っていましたが、今後は公開範囲を拡大し、学校の生徒にも使ってもらえるようなシステム作り上げたいです。(奥村くん)

 

 

現状考えているのは、本システムのオフライン化と管理機能の充実です。

現システムは、文字起こし・システム間通信・文字起こし後のデータの共有にインターネットを用いています。しかし、学校のLANが停止してしまうこともあります。そのため、システムをLANに依存せず動作させることができれば、安定性を向上させることができると考えています。

 

ただ、その場合は、共有方法に関して根本から見直す必要があると考えています。管理機能は、現在実装しているコマンド管理機能のコマンドを充実させていきたいと考えています。(池上くん)

 

第84回情報処理学会全国大会中高生情報学研究コンテスト ポスター発表より

 

※千里放送録音班の研究は、中高生研究賞奨励賞初等中等教育委員会委員長賞を受賞しました。

 

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