第84回情報処理学会全国大会 第4回中高生情報学研究コンテスト
チーム名:UECスクールB-3
金丸知優さん(東京都立調布北高校 1年)、酒井理央さん(鷗友学園女子高校 1年)
(2022年3月取材)
近年、「地球温暖化の進行を遅らせる」ことが世界中で注目されており、省エネが呼びかけられている。そこで私たちは、長い時間のエネルギーの浪費につながる、外出時の電気の消し忘れに着目した。現存の節電システムの問題点として、家中の形状の違う電気機器を一度に管理することができないことが挙げられる。この課題を解決するため、光と音を利用してそれぞれの部屋に電気がついているかひと目で確認できる装置を製作した。
この装置では、玄関に親機のmicro:bitを1台、各部屋に子機のmicro:bitを1台ずつ設置することを想定して作成した。親機は、子機と無線で通信して、各部屋の明かりの状況を集め、光と音によって示し、子機は、各部屋の明かりの状況をセンサーで計測し、親機に数値として送信する。
作成にあたっては、実際に家庭で使う際の様々な問題点を想定し、改良を加えながら製作した。
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■今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。
研究を始めたのは、電気通信大学のUECスクールがきっかけです。今回の研究はUECスクールのグループワークで、「光と音を使った装置」というテーマで作製したものが元になっています。
私たちのグループでは、環境課題解決へのアプローチとして、エネルギーの浪費や事故につながる外出時の電気・こたつの消し忘れを減らそうと考えました。現状の節電装置では、形状の違う照明器具を一度に管理できないことに着目し、玄関で各部屋の電気・こたつの状態を一目で確認できる装置を作製しました。
その後、電通大の先生からコンテストについて教えていただき、出ることを決めました。
コンテストに出ることを決めてからは、グループのメンバーで集まったり、オンラインで相談しながらさらに装置の改良を行いました。(酒井さん)
今回の研究は、電気通信大学高大接続教室プログラミング入門の課題研究を発展させたものです。なので「光や音を用いた装置をmicro:bitで制作する」という大きなテーマがありました。
そこで、グループでJamboardを用いて案を出し合い、私達ができることで何か環境の課題に取り組めないかということで照明などの消し忘れを中心に研究を始めました。(金丸さん)
■今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。
3か月程です。電気通信大学の講座2回、またグループで集まったり、個人で進めたりしました。
■今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。
私は玄関に設置する親機を担当しました。
一番苦労したのは、受信しているか確認する機能の実装です。
これは、家の中で無線通信を行う際に通信が来ない場合を想定したものですが、親機で常に受信判定を行うことで、子機と通信した際にmicro:bitがおかしな挙動をするようになってしまい、プログラム全体の仕組みを見直して、試行錯誤しながら実装しました。(酒井さん)
具体的な数値を集めることが大変でした。
micro:bit同士の通信距離や明るさ数値など、それぞれ最終的なプログラムのコードにはあまり影響していないのですが、制作中のプログラムの考案にとても重要で、一つひとつ実験して確かめていきました。(金丸さん)
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。
電気がついている、ついていないの表示だけでなく、太陽光などの強い光が当たっていて測定できない場合や、部屋からの通信を受信できなかった場合も想定して、プログラムを作りました。
ソフト面では、親機が複数のmicro: bitと同時に通信するので、子機からの通信をずらすことや、子機の通信を子機が受け取ってループが発生しないように、親機からの通信に制限するなどの工夫をしました。
また、装置のケースは3Dプリンタで自作しました。装置がピッタリと収まるように、大きさや穴の位置を何度も測りながら作りました。(酒井さん)
micro:bitのプログラムを英語で組んだことです。私は、電気通信大学の講座で初めてプログラミングに取り組みました。そこで、開発言語と翻訳された日本語で相違がないようにしました。大変でしたが、思い通りに動かせたときは嬉しかったです。(金丸さん)
■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。
光と音で分かる節電装置は、温度を正しく測定できない可能性があることや、モーターのサイズ、部屋の自然光との関係など、改良点が多く残されているので、その改良を行いたいです。(酒井さん)
私は大学ではプログラミングではなく、建築を勉強したいと思っています。特に、古い建築を改築することに興味があります。例としては、大阪市立大学大学院の研究であるオープンナガヤ大阪があります。東京は建物の入れ替わりが激しいので、古い建物を活用する研究がしたいです。(金丸さん)
第84回情報処理学会全国大会中高生情報学研究コンテスト ポスター発表より
※UECスクールB-3の研究は、中高生研究賞奨励賞を受賞しました。