micro:bitを使って、心の状態を「見える化」する
チーム名:UEC’s future creating
阿部龍之介くん(拓殖大学第一高校[東京都] 2年)
(2021年3月取材)
心の悩みを解決するためのプログラミング
私は、micro:bitを用いて心の状態を表示する装置の作成を試みた。
装置を作成する前に、心理的環境(生活・家庭環境)と心理的状態との関連を調べるアンケートを実施したが、その結果からは、心理的環境と心理的状態には関連性が低いことが分かった。
そこで、何が心理的状態と関連があるのかを調べたところ、自然環境と心理的状態との関連を示唆する論文を発見した。
この関係を利用して、二酸化炭素濃度と不快指数の算出用と、心理的状態調査用の2台のmicro:bitを使って、心の悩みを「見える化」する装置を開発した。この装置ではPCとのシリアル通信で状態の変化を記録することができるので、取得したデータは、専門家に送るなどして活用することができる。
今回作成した装置は、英語表示のみで日本語が表示できないという問題点はあるが、心の状態をデータとして表示するというアイデアを形にすることができた。将来は、他の外部装置を使って機能を充実させていきたい。
※クリックすると拡大します。
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■今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。
現在、コロナウィルス感染症の感染拡大の影響による社会不安が広がり、心や体に変調をきたす人が増えています。この影響は、特に女性や社会的弱者と呼ばれる方に広がっています。そこで私は、このような不安な状況において、いち早く自分自身の心の状態を客観的に「表示」することができれば、早い段階で,悩みを抱えた方々の心や体の問題に気づき、それに対する対策をすることができるようになるのではないかと考えました。
そこで、 micro:bit というマイクロコンピュータを使って、その人の心の状態を表示する装置を作成してみることにしました。
■今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。
去年の6月の電気通信大学で行われた高大接続教室からこのテーマについて調べていたので約10ヵ月といったところです。
■今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。
プログラムが大変でした。
全くの初心者だったもので、パソコンの操作も、Excelの使い方はもちろん、Wordの文章の保存の仕方が分からないほどでした。プログラムなんて分かりもしませんでした。
しかし、コンテストが行われる前の約6か月間の電気通信大学の高大接続教室の中で、「先生の話をしっかり聞く」「分からない事は素直に聞く」「決してあきらめない」の三点を守り続け、レポートの作成をしたり、高大接続教室の課題のプログラムを制作したりしました。
その結果、なんとかプログラム制作(まだJavaScript もpythonsも C++ もできないのですが) を行うことができました。
ちなみに私の扱ったプログラム言語は、ブロックを組み立てていくように制作していくもので、初心者の方でもすぐできます。それも功を奏しました。
私の制作したプログラムは、
https://makecode.microbit.org/_ez4dMbF07Rkg
https://makecode.microbit.org/_cHjKoVKMoher
で閲覧できます。
(とはいえ、私がこのプログラムを習得するのに3か月はかかったと思います)
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。
コンピュータのハードの面では、二酸化炭素センサーやOLED, 気象センサー(湿度と温度を測ることができる)のような外部装置を搭載しているので、なるべく配線がしやすいような配置を考えて制作しました。また、気象センサーとOLEDが同じmicro:bitの通信方式である ”I2C” 接続になっているので、micro:bitを1台にすると、パソコンに気象センサーから得られたデータを送るシリアル通信がOLEDの通信によって乱れてしまいます。そうならないために、micro:bitを2台用いました。
ソフトの面では、micro:bit が2台別々に動いてしまうと、OLEDが出す画面を上手くタイミングで映せなくなってしまうので、micro:bit同士で通信を行い、質問や説明などがうまく映し出せるようにしました。プログラムの組み方に関しては、アンケートの機能を加えるために「変数」をかなり多く用いました。しかし、あまりにも多用してしまったために、製作中にmicro:bitに書き込むことのできるプログラムの量を超えてしまい、制作にかなり試行錯誤をしました。
ポスターは残念ですが文字が多くなり、工夫ができませんでした。もっと見やすく改良しておくべきだったと反省しています。しかし動画に関しては、PowerPointのアニメーションや画面の切り替えなどの工夫を巧みにこなしたと自負しています。
2分間という短い動画の中で、いかに「飽きない」「わかりやすい」「充実した」内容を伝えられるかについては、かなりの時間がかかりましたが、上記の内容はある程度は達成したのかなと思いました。動画もぜひ見て頂きたいです。
https://www.ipsj.or.jp/event/taikai/83/83PosterSession/files/44.mp4
また、クラスで「アンケート」を実施し、その結果を精密に分析できたことも良かった点かなと思いました。
■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことを教えてください。
このプログラムのスマートフォンアプリ化です。スマートフォンのアプリにすれば、多くの人がこのプログラムを利用することができるようになり、心の悩みを持った方を救うことがより一層できると思います。
スマートフォンのアプリにするときは、そのアプリのホーム画面やレイアウト、細かいところですがアイコンなどを考えて制作しなければなりません。それがいつ完成するのかは現時点で分かりませんが、大学に行ってよりプログラムのことを学んでから制作したいと思っています。
もしかしたらその間に、スマートフォン以上のもっとすごいデバイスが出来上がって普及してるかもしれませんが(笑)、その時はその時で、「多くの人が持っているデバイスで使える」「使いやすい」「使ってみたいと思える」そんな心の悩みを解決できるアプリを作りたいと思っています。
また、勝手ながら最後にどうしても言いたいことがあります。
まず、旧2年11組のみんなに向けて、このプログラムを作成できたのは、アンケートの結果がうまく発表できたのは、クラスのみんなの協力があってでした。改めまして、旧2年11組のクラスのみんなに心からの感謝を申し上げます。
次に高大接続教室やその後の全国大会にて、ご指導、サポートをしてくださった電気通信大学 笹倉理子先生や赤澤紀子先生、拓殖大学第一高等学校 新田徹先生を始めとする多くの皆様、高大接続教室はもちろん、全国大会という人生に2度とないのではないかという大変貴重な機会を頂き、さらには皆様のご教授やサポートのおかげで、全国大会入選までさせて頂きました。本当にありがとうございました。この文面だけでは感謝を伝え切ることはできませんが、私の将来の活躍などで、何か少しでも言葉に表現することのできない「感謝」を伝えることができればと思います。
第83回情報処理学会全国大会中高生情報学研究コンテスト ポスター発表より