みやぎ総文2017 自然科学部門

誰でも知っているけれど、実は不思議な「水円」のメカニズム

【物理】島根県立島根中央高校 自然科学部

(2017年8月取材)

左から、岩佳奈子さん(2年)、小笠原優里さん(3年)
左から、岩佳奈子さん(2年)、小笠原優里さん(3年)

■部員数 3年生1人、2年生1人

■答えてくれた人 小笠原優里さん(3年)

 

落下する水柱がつくる円の研究Part2

「動かない水」の秘密を探る!

水道の蛇口をひねってみてください。水道の蛇口から出る水がシンクの底面にぶつかるとき、シンクの底面に円形の輪郭が現れます。私たちは、これを「水円」と名づけました。 

この水円の様子を観察してその性質を調べようと思い、昨年度からこの研究を続けています。

 

昨年度の研究で、水円の縁には外向きの底面流と、水円の外側からかかる水圧のつり合いによって「動かない水」が存在すると考えました。

 

また、水円の縁に指を入れると、指よりも外側の領域では水深が水円の外側と等しくなりました。これは内向きに水圧がかかっている証拠ではないかと考えました

今年度はこれをより深く検証しようと研究を行いました。

 

きれいな水円の生成はなかなか難しい…

昨年はペットボトルを使って水円を作る装置を作りました。しかし、この装置は噴出口から出る水の制御が難しく、一人で操作するのが難しかったため、新しい装置を作りました。今回は水道の蛇口周りに木材とアクリル板を使って、写真のような装置を作成しました。

 

まずは内向きの水圧が存在すると推測するに至った実験をご覧ください。水円の形成を見るために、水を流した状態でアクリル板を立て、そこから水平に倒します。これが上から見た動画です。 

アクリル板を水平にすると、落下点の周りから水の層が形成され始めます。また、大きな水の円が形成され、それが少しずつ小さくなり、ある半径で安定しました。この様子から私たちは内向きの水圧が存在すると考えました。

 

そこで小さい円盤状のアクリル板で実験をすると、水円の周りの水は円盤から落ちて外側に引っ張られるので、内向きの水圧が弱まり、水円の直径が大きくなるのではないかと仮説を立てました。 

これを検証するために直径15cm、厚さ2mmの円盤に水柱を落下させてみました。すると、円盤の裏まで水が伝わり、滴として落ちるときに発生した波で水円が乱れてしまって、うまく観察することができませんでした。 

そこで次の実験では、アクリル円盤の下に大きなアクリル板を置き、余計な波紋が現れないようにしました。このとき内向きの水圧はアクリル円盤の上で弱まり、水円の直径が広がるか、あるいは形成されないのではないかと考えました。

 

まず大きなアクリル板の上に直径12cmの水円ができるように水量を調節し、そこに直径15cmのアクリル円盤を乗せました。 

結果、水円は形成されませんでした。写真に見えているのは水柱が作った波紋で、水円ではありません。したがって内向きの水圧がアクリル円盤にぶつかって弱まり、水円が形成されにくくなるという仮説は正しかったと結論付けました。

 

水円の直径と吐水量の関係は?

次に水円の直径と吐水量の間には何らかの関係があると仮説を立て、これを検証しました。まずアクリル板に直径が6.0cmから21.0cmまでの同心円を3cm幅で描きました。これを目印に、一定になったときの水円の直径を変化させ、それぞれについて、ビーカーに300mlの水が満たされるまでの時間をストップウォッチで10回ずつ計測しました。この平均時間から吐水量を求め、そのときの水円の直径の関係を求めました。

 

 

これが結果です。横軸を対数目盛のグラフにしてみると、ほぼ直線の関係にあることが分かりました。

 

今後の課題として、水円の直径と吐水量の関係についてさらに調べていきたいと思います。また、水円の断面構造がどのようになっているのか、可視化する方法も検討していきます。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

先輩が、日常的に見ているもので不思議に思ったものを研究したのが始まりでした。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

2015年9月から基本週4日、月・水・金は放課後3時間半程度、土曜は午前中3時間ほどしていましたが、今年は土曜日の活動はしていません。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

手作りの器具で実験をしたため、器具が正確であるか不安でした。

先輩が始めた最初の実験(Part1)から関わっているわけではないため、前回の研究から進めていく方向に迷いました。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

実験自体は誰でもできると思います。ぜひ、ためしてみてください!

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

「落下する水柱がつくる円の研究」島根県立中央高校(2016ひろしま総文自然科学部門論文集) 

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

私個人として研究を続けることはありませんが、2年生が続けてくれたらと思います。

 

■総文祭に参加して

 

質疑応答や発表後もたくさんの方に助言をいただき、とても良い経験になったと思います。他校の他の部門やポスター発表を見て聞いて、とても楽しかったです。知識の幅を広げることができたと思いました。

 

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