(2017年8月取材)
■部員数 部員数11人(1年生2人・2年生3人・3年生6人)
■答えてくれた人 米田幸誠くん(3年)
南西諸島と、なぜか大分県の一部のみに自生するカマエカズラ
カマエカズラという植物は、南西諸島を除くと大分県佐伯市蒲江地区の一部、それも南側の斜面にのみ生息しています。ご覧の通り、サヤがとても大きいのが特徴です。
私たちの高校は北限よりさらに30km離れていますが、そこでも育つかどうかを調べることを目的として、栽培しました。もともと暖かい地域の植物なので、冬には育たないのではないかと予想しました。
17か月後には校舎の4階まで伸びました。夏にはよく成長したものの、冬には成長しませんでした。冬には葉が一度落ちましたが、次の夏に再び生い茂りました。このことから、やはり温度が高い環境が適しており、温度が低いと成長しにくいことがわかりました。
次に、カマエカズラの葉の裏にはトライコームという小さな毛があることに着目しました。
トライコームは、カマエカズラ以外の植物も持っています。例えば、トマトだと害虫を寄せ付けない役割を担っており、ハスのトライコームは水を弾く性質があり、ヨーグルトの蓋の裏でヨーグルトがくっつかないようにするのに使われています。
カマエカズラのトライコームを調べたところ、柔らかい葉に多く、硬い葉には少ないことがわかりました。
甘い蜜で動物をおびき寄せ、花をこじ開けさせることで受粉する?!
さらに、カマエカズラの花の構造について調べました。
カマエカズラは、裂開と言われる複雑な過程を経て受粉できるようになります。これは、動物が花弁をこじ空けることによって雄しべと雌しべが飛び出し、他家受粉が可能になるという仕組みです。そして、カマエカズラの裂開を行うことができる動物は、ニホンテンとニホンザルの2種類のみ確認されています。
カマエカズラの花の蜜を調べたところ、非常に糖度が高く、また特有の匂いがしていたため、これらを使って動物をおびき寄せ、受粉しやすくしているのではないかと考えられます。
発芽率を下げるほど厚く固い皮に覆われた種子の謎
栽培のために、種子の発芽実験を行いました。左がカマエカズラの種子で中央が10円玉、右が比較のために用いたソラマメです。カマエカズラの種子を見せると、碁石みたいだとよく言われますが、大きさも形状も碁石によく似ています。そして、写真からわかるように、非常に厚い種子の皮を持っています。
ソラマメと発芽の比較対象実験を行ったところ、いずれも発芽する前に急激に質量が増加しており、発芽には多くの水を吸収する必要があることがわかりました。
大きな違いとして、ソラマメの発芽率が約90%と非常に高いのに対し、カマエカズラの発芽率は約20%と、かなり低いことがわかりました。
また、のこぎりで人工的に種子に傷をつけると、発芽率は70%まで上がりました。さらに、水につけてから90日経っても発芽しない種子に傷をつけると発芽率が85%まで上がり、長い期間おいても発芽する能力が保たれていることがわかりました。いずれの場合も、傷をつけることで、水を吸収しやすくなり発芽しやすくなったと考えられます。
しかし一方で、自然に傷がついた種子は人工的に傷をつけた種子よりも発芽率が低くなりました。これは、自然界で傷がつくと、傷によって種子に雑菌が入り、腐りやすくなったためだと考えました。
以上のことから、カマエカズラは温度の高いところで生育しやすいが、現在の生息域の北限よりも北である地域でも条件が整えば育つこと、非常に甘い蜜と特有の匂いを生かして、裂開を行う動物をおびき寄せることで他家受粉を行っていること、そして、種子は水を吸収することで発芽するようになるが、カマエカズラは固く厚い皮に覆われているために発芽率が低いことがわかりました。
今後の課題として、より詳細に生育条件を調べていくこと、葉の裏に生えているトライコームの役割を明らかにするとともに、発芽率を下げてでも種子の皮を厚くしている理由を明らかにすることが挙げられます。
■研究を始めた理由・経緯は?
私が高校1年生のとき、東九州自動車道が開通しました。その際、大分県の指定天然記念物であるカマエカズラの自生地は避けて、高速道路が通されたことを聞き、カマエカズラに興味を持ち、生育環境の保全を目的に研究を始めました。そのためには、カマエカズラの特徴をつかむのが不可欠だと思い、まず、カマエカズラの葉・花・種子の特徴を調べることをテーマにしました。
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
高校1年生のとき=月・水・金(1日あたり1時間半)
高校2年生のとき=毎日(1日あたり1時間半)
高校3年生のとき=月・水・金(1日あたり1時間半)
■今回の研究で苦労したことは?
種子の発芽実験のデータ集めです。約80個の種子の質量を毎日測定しました。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
工夫したのは、受粉過程である「裂開」の仕組みを理解するために、花の模型を作ったことです。発芽実験のデータの量はぜひ注目してください!
■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究
・「ノグチゲラSapheopipo noguchii(キツツキ科)によるウジルカンダMucuna macrocarpa(マメ科)の盗蜜」小林峻・傅田哲郎・伊澤雅子 (野外鳥類学論文集 30, 135-140, 2014 日本野鳥の会)
・「コウモリからニホンザルへ?変わるカマエカズラの送粉パートナー」小林峻 (「自然保護」No.548 2015年11-12月)
■今回の研究は今後も続けていきますか?
この研究は今後も続けていきたいです。まず、カマエカズラの種子の発芽傾向を調べ、カマエカズラの種子が発芽率を下げてまで種皮を厚くしている理由をみつけたいと思います。その他であれば、藻類の研究や、植物の成長と土壌のpHの関係などにも興味があります。
■ふだんの活動では何をしていますか?
ふだんはカマエカズラの種子の発芽実験のデータ集めや、学校で育てているカマエカズラの観察をしています。学校行事では、歓迎遠足で部活動紹介やペットボトルロケットの公開実験などもします。文化祭では、ポスター展示やポスターセッション、ステージでのプレゼンテーションを行います。また、大分サイエンスコンソーシアムへ参加したり、課題研究をしたりします。
■総文祭に参加して
他校の生徒や一般の方に自分たちの研究を発表したとき、研究の内容に対して興味を持ってくれることが嬉しく、今後もカマエカズラの研究を行いたいと強く感じました。また、他校の発表を聴き、ふだんの学校生活では学べないことが学べて、いい経験になりました。
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