みやぎ総文2017 自然科学部門

都会の暑さをこれで解消! ~ヒートアイランド現象の原因を探る

【地学】千葉県立佐倉高校 天文気象部

(2017年8月取材)

■部員数 40人(1年生8人・2年生12人・3年生20人)

■答えてくれた人 市川玲輝くん、浅見陽くん(3年)

 

ヒートアイランドをクールに ~ヒートアイランド現象の原因と対策~

地表を熱くする原因を探って対策を立てる

今、世界の各都市では高層ビルが立ち並び、それに伴ってヒートアイランド現象が問題となっています。その原因として、地表が人工物で覆われていることや、人工排熱の増加、都市の高密度化が挙げられています。そこで僕たちは、身近なものでできる対策を考えてみました。

ヒートアイランド現象などの気象現象に関する研究方法には、主に実地調査とモデル実験があります。僕たちは地表が人工物で覆われているという点に着目してモデル実験を行いました。

 

ハロゲンライトと透明ドームで温室効果を再現

まず、路面の素材に注目して、路面・アスファルト・砂・ベニヤの4種類でどのように気温が変わるか実験してみました。太陽に変わる熱源として、500Wハロゲンライトを使用しました。

 

また、大気の温室効果に対応するものとして、写真のように透明のドームを用いました。

 

実験1・3・4・5では90分間ハロゲンライトを照射し、照射開始から120分間、5分ごとに温度を計測しました。実験2では180分間照射し、240分間温度を計測しました。

 

実験1では、ヒートアイランド現象の原因を検証するため、各素材を何も操作せず2時間、それぞれ10回ずつ計測しました。

 

温度計は素材そのものの温度ではなくドーム内の空気の温度を測るため、素材から5mmほど浮かせて計測しました。また、実験を行う教室内の温度は冷房によって24℃に保ちました。下のグラフが計測結果です。

 

ベニヤ板は急に温度上昇した後ほぼ一定になるのに対し、アスファルトはずっと温度上昇し続けることがわかります。また消灯後は、ベニヤ板がすぐに温度低下するのに対し、アスファルトは温度が比較的高いままであることもわかりました。また、消灯時点での最高温度はほぼ同じでした。

 

実験2では、同じ条件で計測時間を4時間に変更しました。下がそのグラフです。

 

実験の結果、90分時点で上昇温度が等しくなりましたが、ベニヤ板はその後横ばいになるのに対してアスファルトは温度が上昇し続けることがわかりました。

 

実験3では、ヒートアイランド現象への対策として有効と言われている打ち水を模して、各素材の上に60mlの水をまいて計測しました。また、屋上緑化も有効な対策とされているため、芝生でも同様に実験を行いました。

 

下がその結果です。比較のために、実験1の結果を点のない実線で示しました。このグラフから、打ち水をすると温度上昇・最高温度ともに実験1より低いことがわかります。芝生の結果も同様です。

 

ここまでの実験から、アスファルトがヒートアイランド現象の原因ではないかと予想できます。そこで対策として、アスファルトを白く塗ることを考えました。実験4では、白く塗ったアスファルトと塗っていないものを比較しました。

 

実験から、白く塗ったアスファルトでは最初は急に温度が上昇しましたが、後半からはゆるやかになるという、実験1のベニヤ板と似たような曲線を描くことがわかりました。また、最高温度は白く塗ったアスファルトの方が低いこともわかりました。一方で、消灯後の温度低下については、大きな差が見られませんでした。

 

最後に実験5として、コンクリートブロックと小型扇風機を利用し、都市の風通しがどの程度の影響を持つか調べました。風を通したほうが温度上昇・最高温度ともに低いことがわかりました。一方で、温度低下は同程度でした。

 

温暖化対策のヒントは「打ち水」「緑化」「風」

最後に考察です。

 

実験1、2より、アスファルトは最高温度が高く、低下も緩やかだったことから、気温上昇に大きく影響を与えていることがわかりました。これは比熱が大きいためだと考えられます。

また、打ち水は今回実験したどの素材においても温度上昇を抑えることができ、ヒートアイランド現象への有効な対策と言えます。これは気化熱が発生しているためだと考えられます。

 

緑化は、打ち水よりも大きな効果が得られました。芝生の根が水を蓄えるため、打ち水よりも長時間、気化熱による温度低下の効果を得られたためだと考えられます。

 

アスファルトを白く塗るのは、光を反射させて熱吸収を抑えることで温度上昇を抑えられましたが、温度低下には効果がなかったため、ヒートアイランド現象の予防にはなっても、解決にはつながらないと考えられます。

 

風の通り道を作ることは、ドーム内の空気が循環することで温度上昇を抑えられましたが、ドーム内外での空気の出入りがなかったため、温度低下にはあまり影響しませんでした。また、実験での風速を実際のスケールに換算すると台風以上となり、ヒートアイランド現象のシミュレーションとしてはあまり適さなかったと言えます。

 

以上のように、風の通り道以外に関してはシミュレーションを行うことができました。今後は、実験を重ねてデータの正確性を高めていきたいです。

 

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

元々、気象の分野に興味がありました。その中で、私たちに身近で問題となっているヒートアイランド現象に注目しました。それを自分たちで原因を検証して、高校生でもできる対策を考えることで、この問題が少しでも解決に近づければいいと思ったため、この研究を始めました。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

1日1回2時間を1か月に5、6回のペースで1年間行いました。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

1回の実験に2時間以上もかかり、その間5分ごとに温度計測を行わなければならなかったため、実験の回数を重ねるのがとても大変でした。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

実際の環境を縮小してモデル化するのは難しいのですが、縮小化して対照実験を可能にするモデルを作成することができたという点です。また、実験1のグラフの1時間半の時点ですべての線が重なっていてとても面白いです。これは偶然ではなく、実験2でも確認することができました。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

顧問の地学の先生の意見を聞きながら、独自に研究を行いました

気象庁のホームページ(ヒートアイランド現象)も参考にしました。

http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/himr_faq/index.html

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

続けていきたいと思っています。その際には、今回の総文祭までの内容では、一般に言われていることの検証が多くなってしまったので、当初の目的である身近なものでできる対策を考えていこうと思っています。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

ふだんはラジオを聞き天気図の作成をします。また、天体観測の計画を立て、計画が立ったら顧問の先生に許可を取り、学校に夜遅くまで残り天体観測を行ったり、長期休みには合宿をして観測を行ったりしています。

 

■総文祭に参加して

 

県の代表として総文祭に参加するという事にあまり実感が持てませんでしたが、今回参加できてとても勉強になりました。自分たちの研究を全国という舞台で発表する事に、当日はすごく緊張していましたが、他の研究発表も聞いて、今後の自分たちの発表の参考になる点もたくさんあり、とても充実した3日間でした。

 

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