(2017年8月取材)
■答えてくれた人 藤沼航人くん(2年)
■部員数 12人(1年生4人・2年生8人)
メニスカスというのは、メスシリンダーなどの容器に液体を入れた時に、容器と液体との界面にできる曲面のことを指し、ギリシア語で三日月を意味します。この研究では、容器に入れた液体の界面に働く力を観察や測定によって考察することで、メニスカスの大きさを計算する近似式を作ることを目的としています。
観察から、メスシリンダーに入れた液体の界面というのは、液体と空気の界面の接線と容器の壁のなす角度の変化によって、2つの部分に分かれるという仮説を立てました(スライド参照)。
部分(1)はガラス界面と液体が平行なところを指し、容器の壁にほぼ付着していることからこれは濡れ性によるものだと推測でします。部分(2)は比較的緩やかなところを指し、液体とガラスとの分子間力によるものであると推測しました。
使用した実験器具、薬品は以下の通りです。
実験器具、薬品
・純水
・ヘキサン
・シクロヘキサン
・ベンゼン
・トルエン
・サリチルアルデヒド
・メスシリンダー (100mL(内径27.6㎜)、20mL(内径13.7㎜))
・撮影機器
・定規
メスシリンダーに測定したい液体(ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、サリチルアルデヒド、純水から1つ)を入れ、水面の様子をカメラで水面と同じ高さから水平に撮影しました。撮影した画像からメスシリンダーのメモリを基準にして部分(1)と(2)それぞれの高さを測定しました。これを10回ずつ行いました。室温は25℃で統一しました。
実験結果は下表のようになりました。
壁面に付着する高さは表面張力だけでは決まらない
考察です。科学便覧によると、25℃での表面張力は、小さいものから順にヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、サリチルアルデヒド、水となっています。
部分(1)についての考察です。表面張力が小さいほど濡れ性が大きくなります。そのため、もし仮説通り濡れ性によるものであれば、ヘキサンでの部分(1)が一番大きく、水は一番小さくなるはずです。しかし、結果は逆を示しました。
表面張力に大きな差のないサリチルアルデヒド、シクロヘキサン、トルエンの3つの溶液を除けば、表面張力が大きい順に部分(1)が大きくなっています。しかし、表面張力は表面を小さくするように働く力なのでこのような見立ては矛盾しています。つまり、部分(1)の大きさは、表面張力だけで接触角や濡れ性を決定することはできないことがわかりました。
界面張力はどのように影響するか
次に界面張力を用いて結果について考えました。
濡れ性が大きいということは接触角が小さいということです。水は他の溶液に比べて濡れやすいという特徴があります。そのため、「接触角は固体・液体の表面張力によって決まる」というヤングの式から、水の界面張力が非常に小さいと言えます。
そのことから、今回の場合、界面張力は部分(1)が大きいほど小さいことがわかります。
部分(2)の大きさの順番は下表のようになっています。
部分(2)の大きさはなだらかに曲がっている部分なので、接触角が大きいほど部分(2)は小さくなるはずです。また、これは部分(1)の時の考察から、界面張力が大きいほど部分(2)が小さくなることと同義です。そのため、大きさの順番は部分(1)と同じになるはずですが、水以外はそうはなりませんでした。これは、界面張力だけでなく表面張力の影響も受けているからだと考えられます。
容器の内径による違いから、影響の大きさは界面張力>表面張力か
部分(2)では、液体の種類に関係なく20mlメスシリンダーで行った時の方が100mlメスシリンダーでの時よりも大きくなっています。これは、容器の内径が大きい方が液体の表面張力の影響が強く出ること、つまり表面を平面に近づけるように力が働くことを意味します。このことから表面自由エネルギーの大きさの合計が部分(2)の大きさを左右するのではないかと考えました。
また、水の部分(2)は、100mlと20mlのどちらのメスシリンダーの場合でも最大になっており、ベンゼンはどちらの場合でも最小になりました。これは、水が他の溶液に比べて表面張力がとても大きいという特徴と、容器との界面張力がとても小さいという特徴を持っていることから説明ができます。このことから界面張力が表面張力よりも大きく影響していることが伺えます。
部分(2)については、測定をさらに続けて、容器と液体の界面張力と液体の表面張力が大きさに与える影響力の違いを導くことで立式が可能であると考えています。
しかし、部分(1)、(2)の立式には、いずれの場合でも容器の接触角の測定が前提となっていますが、現時点ではそれができていません。そのため、今後は固体の接触角の測定法を考えることが課題です。
■研究を始めた理由・経緯は?
混ざらない2種の液体の界面に働く力を調べるための予備実験としてはじめたものです。
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
中2の冬ごろにはじめたものなので、2014年の冬からのものです。
■今回の研究で苦労したことは?
エクセルの使い方がわからなかったので、表やグラフがしっかり作れなかったことと、内容に具体的な成果がなかったので、上手くまとめられなかったことです。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
実験方法そのものです。
■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究
「化学便覧」日本化学会編(丸善書店)
■今回の研究は今後も続けていきますか?
続けます。発表でもお話しした立式を目標にします。
■ふだんの活動では何をしていますか?
文化祭での展示や、小学校へ行って実験教室を毎年何回か行っています。
■総文祭に参加して
ハイレベルな発表をたくさん聞くことができて、いい刺激になりました。ただ、書道や美術など他部門が見られなかったのが非常に残念でした。
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