2016ひろしま総文 自然科学部門

オーロラの光の謎に、流星から迫る! ―高感度デジタルカメラを用いた、流星痕の測定

【ポスター/地学】佐賀県立佐賀西高校サイエンス部

(2016年7月取材)

左から 吉弘有里さん(2年)、内田月読さん(2年)、大島知子さん(2年)
左から 吉弘有里さん(2年)、内田月読さん(2年)、大島知子さん(2年)

■部員数

26人(うち1年生13人・2年生6人・3年生7人)

■答えてくれた人

小栁伊央さん(3年)

 

流星が酸素を光らせる?~高感度撮影による流星痕の写真観測2

真夜中、夜空に現れる一筋の光。一瞬で消えてしまうはかない光に、願いを託したことのある人も多いのではないでしょうか。 そんな流星が通過したあとに、煙のようなものが尾を引いていることをご存知でしょうか。これは流星痕と呼ばれ、流星物質や大気内成分に由来する光だと言われています。

私たちはこの流星痕、特に数秒以内で消えてしまう短痕に注目し、研究を行ってきました。この短痕は緑色のものが特徴的で、酸素原子の禁制線 による発光だと言われています。実は、あのオーロラの緑色を生み出しているのも、この酸素原子の禁制線なのです。また短痕は発光時間が短いため詳しい観測があまり行われてきませんでしたが、最新の高感度デジタル一眼レフカメラを用いることによって簡単に観測することができるようになっています。オーロラの謎に、日本から自分のカメラで迫れるかもしれない!そんな期待を胸に、私たちは研究をスタートさせました。

実は、先輩から引き継いだこの研究も2年目。昨年度までの研究で、流星がより明るく、速く地球に突入する方が、酸素禁制線発光が現れる可能性が高いとわかりました。そこで今年は、明るさ(最大光度)と速さ(対地速度)のどちらがより大きな影響を与えるか、検証しました。

 

観測は市販の一眼レフを使って行い、1秒間シャッターを開けっ放しにして夜空を撮り続けました。普通の撮影よりあえて短くしたのは、短い光をうまく捉えるためです。毎回数万枚の写真を撮影し、その中から流星が写っているものをひとつひとつ手作業で選びました。そしてさらに酸素禁制線発光が写っているものをピックアップ。最終的には数枚の写真が残りました。表中の群流星数のカッコ内が、酸素禁制線発光が確認された流星数です。

今回は、観測できた流星の中から3等以上の明るさのものを選び、以下のように明るさと酸素禁制線発光の関係をグラフにしました。

 

この結果からは、2014年オリオン群・2014年ペルセウス群・2015年ペルセウス群の3等以上の明るい流星では、半数近くの場合で酸素禁制線の発光が観測できたことがわかります。しかし、最も多くの明るい流星が観測できた2014年ふたご群では、酸素禁制線の発光を1例も確認できませんでした。これは、すべての等級で酸素禁制線の発光が観測できた2014年オリオン群とは対照的な結果です。

それでは、この結果は何を意味しているのでしょうか。他の流星群では酸素禁制線発光が見られた明るさでも、ふたご群の場合は見られませんでした。つまり、最大光度以外の条件が強い影響を及ぼしていると考えられます。そこで、私たちは酸素禁制線の発光に影響しているもう1つの条件である、対地速度に注目しました。調べてみると、オリオン群の対地速度は66.53km/sと最も大きく、ふたご群の対地速度は38.58km/sと最も小さかったのです。つまり、地球に突入するスピードが遅いことが、酸素禁制線発光に影響をもたらしていると考えました。

 

実際、このことは科学的にも証明することができます。酸素禁制線が光るまでにかかる時間は、酸素原子が励起してから約0.7秒と非常に長く、その間に他の物質と衝突してしまうとエネルギーが失われるため光らないこともあります。エネルギーを保つためには、もともとのエネルギーが大きく、より衝突が少なければ良い。つまり、対地速度が大きい流星の方が運動エネルギーが大きく、大気の密度が小さいより上層の大気中を通過できるため、より酸素禁制線の発光が見られると考えられます。

 

以上の考察により、対地速度の方が最大光度よりも酸素禁制線発光の出現率に大きく影響していることがわかりました。ただ、デジタルカメラで短痕の謎に迫る研究は、まだまだ続きます。今後は、より対地速度が小さい流星群の観測や、短痕の成分を特定するための分光観測にも挑戦したいと考えています。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

先輩からの継続研究で、緑色の短痕が発光する原理がオーロラが発光する原理と同じということを知り、佐賀の空でオーロラと同じ現象を見ることができるということで、おもしろいなと思って研究を始めました。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

1日3時間程度で、2年間です。2014年4月に開始しました。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

夜中に観測することや、大量に取った写真から1枚1枚流星や短痕が写っているものを探すことです。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

カメラの露出時間を1秒としたところです。このようにすることで、発光継続時間の短い短痕と流星本体を分けて撮影することができ、短痕の有無、色などを判断できるようになりました。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

『オーロラの科学』、流星観測の教科書

 

■今回の研究は今後も続けていきますか? 

 

流星(流星体)の成分同定のための分光観測に挑戦したいです。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

中学校に出前実験授業に行っています。また、文化祭で展示をしたり、体育祭で部活動対抗リレーに出たり、佐賀県立宇宙科学館の春の企画展(ビーコロ制作)に参加したりしています。

 

■総文祭に参加して

 

全国高等学校総合文化祭には今回初めて参加しました。全国の高校生が行っている研究はとてもレベルが高くて、驚きました。また、発表の方法などを学ぶことができました。

 

佐賀県立佐賀西高校サイエンス部の発表は、奨励賞を受賞しました。

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