第14回全日本高校模擬国連大会

MOGIMOGI実行委員インタビュー

(2020年11月取材)

全日本大会を主催するグローバル・クラスルームは、2018年の第12回大会から、全日本大会の開催期間中に、会場の1室を使って模擬国連に初めてチャレンジする人のための体験企画「MOGIMOGI 」を行ってきました。

 

しかし、今年は全日本大会自体がオンライン開催となり、実際の会議場を使っての開催ができなくなってしまいました。そこで、「MOGIMOGI 」もオンラインで、10月25日(日)と11月8日(日)の2つの日程で行われました。今回の議題は「核軍縮」。全国から75人の参加者が集まりました。

 

コロナ禍以前は、「模擬国連会議=対面」というのは前提となっており、オンラインでの会議の実施を考えている人はほとんどいなかったかもしれません。しかし、情勢が大きく変わってしまった時期にいるからこそ、オンライン会議ならではの良さに気づくきっかけを作ることができました。

 

何よりも地方からの参加のハードルを下げ、全国の仲間と「一堂に会する」新しい場ができることが示されました。参加回を重ねるごとに、そのメリットも広がっていくでしょう。

 

今回は、MOGIMOGI実行委員の渡邊玲央くんにお話を聞きました。

渡邊くんは、第11回の全日本大会で日本代表となり、ニューヨークの国連本部で開催される高校模擬国連の世界大会に出場しました。

https://www.milive.jp/live/171202/

 

地域という「壁」を超えて模擬国連のすばらしさを体験できる場を実現

渡邊玲央さん

東京大学教養学部2年生         

 

 

 

■今回の「MOGIMOGI」を実施することになった経緯を教えてください。

 

グローバル・クラスルーム日本委員会では、数年前より模擬国連の地方展開事業を行ってきており、2019年度には、実際に山形県に赴いて現地の高校生に模擬国連会議を提供したりしました。2020年度も、継続して地方展開事業を展開したかったのですが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大もあって、実際に地方に出向く形での従来型の地方展開は、断念せざるを得ませんでした。

 

そこで、グローバル・クラスルーム日本委員会では、オンライン形式の模擬国連会議を提供することを決定しました。2020年度の全日本高校模擬国連大会がオンライン開催に変更されたこともあり、こうした形での模擬国連会議もコロナ禍にあっては増えるだろうとの考えのもと、2回に分けて全国各地の高校生が参加できる形での「地方展開事業」を実施しました。

 

 

■今回の「MOGIMOGI2020」のルールはどのように決めたのか、手順を教えてください。また、進行やルールの参考にした会議やイベントがあれば教えてください。

 

ルールについては、グローバル・クラスルーム日本委員会が独自に策定しました。その際、できるだけ対面実施の会議とルールが近づくように、いくつかの工夫もしました。

 

例えば、アンモデ中にZoomのブレークアウトルームを自由に移動できるようにしたり、プラカードによる挙手を奨励したりすることです。オンラインという制約がある環境下でも、きちんと会議が進行するよう熟慮を重ね、グローバル・クラスルーム日本委員会のメンバーによるシミュレーションも行いました。

 

2020年度の全日本高校模擬国連大会が、国内初の公式なオンライン模擬国連大会であったこともあり、その準備と同時並行的に「地方展開事業」の会議のルール作りを進めました。主催者側の視点からすれば、今回の会議でしっかりオンライン形式での模擬国連会議が機能することがわかったため、全日本高校模擬国連大会の運営にも安心して臨むことができました。

 

 

■進行やルールを決めるにあたって、リアルの模擬国連と比較して残した点・思い切って変更した点をそれぞれ教えてください。

 

[オンラインでも残した点]

 

自由闊達な議論ができる場の提供というのは、できる限り残せるよう努めました。模擬国連会議に限らず、オンライン上での会話となると、どうしても一方通行になりがちですが、そうした制約下でもできるだけ多くの人が意見を言える環境作りを模索しました。

 

他の大使が発言しているときは発言をしないだとか(Zoomのミュート機能を用いることで再現)、発言の際は挙手をして議長の許可を得てから話し始めるとか(画面越しにプラカードを挙げるまたはZoomの挙手機能を使うことで再現)、議論における基本的な姿勢が守られるような規則は残し、かつそれが担保されるようなルールを作りました。

 

また、動議の際の独特の掛け声なども、対面の会議と同様のものを用いました。今回の会議に参加してくれた高校生が、いつの日か対面の模擬国連会議に参加するとなったときに、できるだけ今回の会議で習得したスキルを活かせるような試みもした次第です。

 

 

[変更した点・工夫した点]

 

文書作成の際のハードルというのは、対面実施の模擬国連会議に比べ、一定程度緩和させることができたのではないかと思います。

 

全日本高校模擬国連大会を対面で実施する際、GoogleDocumentのように同時に編集できる機能を用いての文書作成は禁止している年度が多かったのですが(議論に集中できなかったり勝手に文言が改変されたりするリスクがあるため)、今回の会議ではそうしたツールの使用も認めました。

 

オンラインという制約のある環境下であるからこそ、議論を主導する人が文言の意図等を説明しながら、全体で合意をとっていくということができていたように思います。対面の会議では導入しにくい手法ですが、オンラインだからこそ文言の共同編集も上手く機能し得たのではないかと思います。

 

 

■初めての経験で、事前準備にはいろいろな課題や心配があったと思います。特に心配だったことは何か、それをクリアするためにどのような準備や工夫をしたかを教えてください。

 

漠然と、会議が上手く機能するのかという点には不安がありました。オンラインでの開催では、どうしてもネット回線の都合により途中でいなくなってしまう人が生じてしまったり、発言機会がないまま会議が終わってしまう人がいたりといったことが想定されます。

 

前者については主催者側でバックアップをすることは困難ですが、後者については、しっかりとルールを定めるなどして対処できることのように思われたので、実際に細かく規則を定め、それを運用することに努めました。

 

 

■当日の進行で、いちばんたいへんだったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。

 

私は当日、議長の立場で会議に臨みました(今までに議長を務めた経験がなく緊張しました…!)。高校生の模擬国連の場合、モデが取られることは少ないですが、議長には議論が混線状態に陥ったときに適切な「介入」をして議論の道筋を立て直すという責任が生じます。

 

特に、オンライン実施の会議で対面のときよりも認識の齟齬が生まれやすい環境であっただけに、会議の中盤で一度モデを取り、今までの議論の流れの整理と今後の議論における論点の提示を行いましたが、中立的な観点から自分の言葉で議論の流れをまとめ、それを今後の話し合いに活かせるような形で議場に還元することには、少し苦労しました。

 

会議当日は、どこかのタイミングでモデをとることを想定はしていたので、議論の前半から各アンモデのグループで話している内容をメモに書き留め、その共通点・相違点について自分なりにまとめておくなど、いつモデがとられても円滑な進行ができるような準備に努めていました。

 

 

■オンラインにしてよかったと思うのはどんなことでしょうか。細かいことでもけっこうですので、教えてください。

 

地方展開事業に関して言えば、地域という「壁」がなくなったことです。今までの地方展開事業ですと、主催者側のキャパシティもあり、実際に赴ける地域とそうでない地域が生じてしまっていました。しかし、会議をオンラインで実施することで、全国のどこからでも高校生が会議に参加できるようになり、地理的な制約がなくなったように思います。

 

住んでいる場所に関係なく模擬国連会議に参加できる点は、オンラインならではの良い点なのではないかと感じています。

 

 

■最後に、MOGIMOGI2020を計画・実行した感想を教えてください。

 

画面越しではありましたが、地方の高校生が参加する会議を提供できて、とても嬉しかったです。オンライン開催という関係上、制約もあり、また事前に細かにルールを策定するなど難しいこともありましたが、会議後に高校生たちが「楽しかったです!」と言ってくれたこともあり、またぜひ実施してみたいと思いました。

 

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