第14回全日本高校模擬国連大会

「目立つ交渉」よりも「柔軟な交渉」を目指し、コミュニケーションの輪を広げて各国の意見を調整

根岸里帆さん(2年)、蜷川和夏さん(2年)

大妻高校(東京都)  担当国:大韓民国  

(2020年11月取材)

 

■担当国を希望した理由を教えてください。

 

宇宙利用は、宇宙進出をするために必要な技術を有するか有さないかという両極端の立場が注目されやすい議題だと解釈しました。先進国か途上国かという二項対立を避けたうえで、柔軟な交渉と政策立案によって議場に貢献できる新興国という立場に目をつけました。

 

議題解説書が公開され、論点に想定していなかった「宇宙資源」があったため、資源に関し極端なスタンスを持つアルテミス協定国や月協定批准国を避けたうえでの新興国として韓国を希望しました。

 

 

■準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

 

議題に関する準備

 

宇宙利用に関してネットで調べた際に、関連事項としていろいろな情報が出てくるため、そちらに足を取られて、本来調べなければならないことを見失いかけることもありました。また、「すべての国の利益のための宇宙利用」とは何であるのか、すべての国が宇宙開発を可能とする能力を持ち自給自足できるような状態が理想であるのか、悩むことがありました。また、宇宙資源に関しては各国のスタンスが両極端の国もあれば全くの無関心なのではと思える国もあり、対立軸や論点の核心部分を探すのにとても苦労しました。

 

リサーチは、ペア間で宇宙資源とデブリのリサーチを分担していました。韓国はキャパシティビルディングに関しては人材育成に積極的である以外には特筆するほどの政策は持っていなかったためこの二つを中心に調べていました。(根岸さん)

 

オンライン会議に関する準備

 

全日本大会までに何度かオンライン会議には参加していたので、流れや所作は把握していましたが、ブレークアウトルームや画面共有を効率的に行うためにもペア間での共同作業などはZoomで行うようにしていました。

 

 

■大会当日は、どのようなことに気を付けながら会議に臨みましたか。

 

まずは、どの大使にもフラットに、そして広くコミュニケーションをとるように心がけていました。また、会議行動にしっかりと目的と自分の行動の意義を伴わせるように意識していました。(根岸さん)

 

全日本という舞台だからこそ、賞を意識した強引な行動に出てしまうのではなく、初心に帰って国連とはどのような目的のもと設立されたのか、その形はどうあるべきなのかを常に念頭に置きながら行動するようにしていました。

 

また、今回はオンラインということもあり、いつも以上に議論や流れについていけていない大使を作らないことが大切だと思い、積極的にメモを利用したりアンモデ中にできるだけ多くの部屋に行ったりして、多くの人に話しかけるよう心がけていました。(蜷川さん)

 

 

■あなたが感じた、オンラインの模擬国連とリアルの模擬国連の、それぞれの長所・短所を教えてください。

 

オンライン模擬国連

[長所]

決議案などの作成を数カ国のみが行うのではなく、いろいろな国が共有できている状態で進められることだと思います。(根岸さん)

 

全員が平等に画面に写るため、通常よりは比較的発言しやすい環境だったのかなと思います。また、全国津々浦々の学生がより簡単に参加できる点は、模擬国連を全国規模で活性化していけるという意味でもオンラインの方が圧倒的に優れていると思います。(蜷川さん)

 

[短所]

一度に複数国が話すことができないので、特定の国が話しがちになる点や、アンモデレートコーカスでのグルーピングの自由さが、リアルの模擬国連よりも損なわれてしまう点が短所だと思います。(根岸さん)

 

誰かが話しているときに意見を言いづらいため、一歩間違えれば、国連という場であってはならないはずの「一大使の独断場」という状況を作り上げてしまいやすいと感じました。また、各グループへの出入りが目立ってしまうため、ちょっとした交渉や相談を行いにくく、外交として動く際に苦労しました。(蜷川さん)

 

 

リアルの模擬国連

[長所]

議場の様子を一目で見やすいことや、身振り手振りを使ったコミュニケーションが活きます。また、同時に複数国が話すことや個別交渉がしやすいので、オンライン会議よりも行動に選択肢があるように思います。(根岸さん)

 

オフラインとオンラインの最も大きな差は、当日に感じる「熱気」だと思います。DR提出間際の議場全体に広がる高揚感だったり、会議が終わった後皆の緊張感が和らぐ瞬間だったりと、現地会議ならではの「模擬国連の雰囲気」が感じられる点が長所だったなと、オンラインで会議参加するようになってから気付きました。(蜷川さん)

 

[短所]

決議案を作る大使が限られてしまう点や、話す国が限られてしまいやすい点が短所だと思います。(根岸さん)

 

オンラインでは、決議案等も全てデータで配信されますが、現地開催だと紙媒体で配られることが多いです。ペーパーレスという観点からは、オンラインの方が模擬国連においても優れていると思います。逆にそれ以外は、オフラインに対するデメリットはあまりないかなとも思います。(蜷川さん)

 

 

■2日間の感想を教えてください。

 

宇宙利用という議題で会議に参加するのはちょうど2年ぶりで、2年前の会議が自分にとって初めて出た会議であったので、議題自体にもとても思い入れがあるものでした。今回の予選を含め全日本大会に向けて自分の中で掲げていた満足のいく準備と行動を目指し、また同校でともに頑張ってきた仲間達や先輩方、後輩たちの応援に応えたいという良いプレッシャーが自分とペアを奮い立たせてくれました。

 

会議中は大会という勝ち負けよりも、韓国大使としてどうこの会議を作っていくかというところに集中していました。もちろん一大使として緊張や焦りはありましたが、常に最適解を考えながらも、会議を率直に楽しむことができていたと思います。

 

ペアである蜷川さんと二人一組で大使として会議に出たのは、この全日本大会が最初で最後でした。リサーチや準備の時も、大変さや苦労を2人で共有しながら協力し信頼し合えるペアであったからこそ、1日目が苦しい展開であった時も乗り越え、結果として2人で優秀賞を受賞するところまで来ることができたのだと振り返っています。 (根岸さん)

 

 

大袈裟な表現に聞こえてしまうかもわかりませんが、これからの自分の人生を大きく変えてくれたような会議だったのではないかなと思います。

 

私は1日目に上手く議論の中心に立つことができず、とても悔しい思いをしました。しかし、こなしてきたリサーチ量と自分が持っていた模擬国連に対するポリシーを信じ、今までの自分とペアを裏切らないためにも歯を食いしばって2日目に挑みました。

 

その結果、個人的な反省点は依然として多いながらも今回のような素晴らしい賞を頂くことができました。

 

自分は他の大使の方のように素晴らしいカリスマ性やディベート力は持ち合わせていませんでしたが、今大会を通し、地道な努力と諦めない心はそれらと同等に戦える程のものであるということを実感できました。

 

いつもいつもネガティブ思考で生きてきた自分にとって、今大会でそのように思えたことはこれからの人生において大きな意味を持ってくると思います。(蜷川さん)

 

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