しゃぼん玉で子どもの飛び出しを予防?! 楽しさと安全をカタチにしてみた
[チーム名] 甘口がいいです。
[メンバー] 東京都立日比谷高等学校(1年)
日下寧生さん、野畑琴音さん、岸本葵さん、内田圭亮さん
(2020年11月取材)
■皆さんが作成したプランの内容を教えてください。
私たちが考えた案は「ADHDの中でも多動の特性を持つ子どもの、飛び出しによる事故を防ぐ」案です。子どもの靴の中敷き部分のセンサーが子どもの突発的な動きを感知し、それに対応して子どもの腰につけた装置からシャボン玉がでて子どもの気を逸らす、という仕組みで子どもの安全を守ります。
現在、「迷子紐」という子どもの飛び出しを防ぐためのグッズはあるのですが、感覚過敏などの理由で使えていない人が多くいるのが現状です。実際にSNSを用いたアンケートでは多くの親御さんが私たちの案を支持してくださっていることからも、それだけのニーズがあるということがわかっています。
■このブランはどのようなきっかけで出てきましたか。
この案が出るまでに、既にある解決策の「迷子紐」に改良を加えたものから、VRの技術を使用した「眼鏡型ゲーム装置」、「パラシュート付きリュック」や「バック型迷子防止装置」など10を超える案を、試行錯誤の末に考えました。それでも課題にまっすぐ向き合えば向き合うほど、案の欠点が見つかり、何度も白紙に戻さざるを得ませんでした。
そんな中、数ある条件をクリアしたのが今回の案「しゃぼん。」でした。子どもの注意をそらすための道具としてシャボン玉を用いたのは、子どもの興味を引くもので、かつ何度も起こる飛び出しに対応が可能だったからです。
■このプランを作るにあたって、どのような調査やインタビューをしましたか。 調査やインタビューを通してわかったこと、あるいは当初の予定とは違った点を教えてください。
調査は主に発達障害の子どもを育てる親御さんや当事者会などへのヒアリングやSNSを活用したアンケートを行いました。また、課題の確実性を上げるため、発達障害に関する論文や当事者の方が書いた本などを読み情報収集を行いました。
調査を進めるうちに、自分たちがいかに課題を表面的に捉えていたのかを痛感しました。特に、最終発表のギリギリになって、多動の子どもは肌に触れるものや、体を拘束するようなものは使用できない、ということが明らかになった時は本当に焦り、チームみんなで悩みました。
■具体的なサービスやアプリを作るにあたって、どのような団体や機関に協力を依頼しましたか。それを通してプラン作りで得たことを教えてください。
三起商工株式会社様をはじめとする、子ども用のグッズを取り扱うメーカーから技術開発に長けている株式会社RDS様など、様々な分野の方に依頼しました。
実際にお話しをさせていただくに至ったのは株式会社RDS様でしたが、株式会社RDSの社長、杉原様とのミーティングでは自分たちの案へのフィードバックをいただくだけでなく、私たちの知らない技術の情報や案を出す上での方向性、考え方など、案を一から考える上で大切なことを沢山教えていただきました。
■全体を通していちばんたいへんだったことは何でしたか。また、その克服のために頑張ったこと、工夫したことを教えてください。
・何度も案を出しては考え直しになったこと。よりニーズに合った解決策にするために、ヒアリングやアンケートを繰り返しチームで何度も話し合いました。(日下さん)
・自分たちで考えた案の課題がフィードバックの度に増えていくこと。その課題の解決の糸口が見えないのも辛かったです…。チームでのミーティングはもちろんしたが、限界も感じたので積極的に大学生を頼りました。(野畑さん)
・自分たちの案がより直接的に困っている方々を助けられるよう、課題を中心に解決策を何度も考えたことです。自分たちの課題や解決策に、より需要性を見出すため、有力なデータをたくさん集めました。困った時には一から考え、大学生を含めた話し合いをたくさん行いました。(内田くん)
・ 課題を解決できて実現性があり面白い、という解決策を求めた結果、十数個案を考えたにも関わらず最終選考会前日になるまで解決策が決まらなかったことです。色々な視点から考え、課題を見直し突き詰め、みんなで話し合いに話し合いを重ねました。(岸本さん)
■このプランでいちばん頑張ったこと、見てほしいことを教えてください。
・シャボン玉という、一見耳を疑うようなものがしっかりと子どもに作用するところです(まだ検証途中ではありますが)。(日下さん)
・「迷子紐が使いたくても使えない」という課題に着目している点です。
迷子紐はペットのような見た目から賛否両論あります。大学の論文にも当事者の迷子紐の使用率が高くないのはそのせいだと書かれていました。しかし、私たちはインタビューの中で「そもそも迷子紐は使えない」という声が多数あることに気づきました。それは当事者の声に寄り添い続けた私たちならではの課題設定だと思います。(野畑さん)
・今までに誰も見たことのない解決策であるということ。これは迷子紐が使えていない事実を知っていて、何度も話し合わなければ出てこなかったと思います。このチームだからこそ作り出すことができました。(内田くん)
・あまり思い付かないような面白い解決策にしたところです。(岸本さん)
■大学生メンターとの交流から学んだことを教えてください。
・自分たち高校生だけの視野では考えられないような部分からのアプローチの仕方があるのだなあと、何度も思いました。また、案を練り直す段階では本来の目的を見失いそうになる場面が多くあり、そういう時の大学生からのアドバイスがいつも救いになりました。(日下さん)
・ブレインストーミングというものを学校の授業でやったことはありましたが、大学生が入ってくださるとスピード感が違うし、テンションも上がり気味でやるのが一番良い意見が出ることに気付かされました。今まで自分で創造力はないと思い続けてきましたが、「面白い意見」を出すコツが分かったように思います。(野畑さん)
・何事にも諦めずに取り組むということです。どんな時にも私たちの前で、冷静に最善の行動をしてくれました。課題に対する良い解決策が見つからず落ち込んでいた私たちに、大学生がやる気と元気を与えてくれて、チーム一丸となって最後まで諦めずに取り組めました。(内田くん)
・自分が考えてもいなかった視点から指摘してくださることが多くて視野が広がりました。また、自分がキャパオーバーしかけている時に順序立ててやることを教えてくださり、見守ってくれる人がいるありがたさを感じました。(岸本さん)
■今回の「inochi Gakusei Innovators’Program」に参加した感想を教えてください。
率直に、学校もある中での活動はとても大変でしたが、その分楽しくいい経験ができたと思います。当事者の人へ自分たちでアポを取ってヒアリングしたり、企業にメ-ルを書いたり…ただ学生生活をしているだけではまず経験できないようなことを経験できたと思います。このプロジェクトで4ヶ月間一緒に走ってきた仲間には心から感謝しているし、このプロジェクトで得た知識や経験はこれから生きていく上で大切なものになっていくと思います。今後も活動を続けていく上で、はじめてのヒアリング後に感じた事や、課題解決に対する情熱を失わないようにしていきたいと思います。(日下さん)
・当事者の方と連絡をとったり、大学生にアドバイスを求めたりしながら、コミュニケーション能力と、誰かに助けを求める力がつきました。これは将来どの職種についても必要になる力ではないでしょうか。特に私は人に助けを求めることが苦手だったのですが、チーム内で抱え込むことに限界を感じ、大学生をかなり頼りました。悪いことではないのにヘルプを上手く求められない人はかなり多くいると思うので良い経験になると思います。(野畑さん)
・学校が始まると、勉強や部活(大会等)、習い事など様々なことがあり、正直活動自体辛いこともありました。しかし、発達障害のお子さんを持つ親御さん達にインタビューやアンケートをしていく中で、実際にこの課題を解決して、困っている人たちを助けたいと思い始めるようになっていました。それだけインタビューが大切であること、人は人を動かせることを同時に学びました。このプロジェクトで、明らかに自分の能力は高まります。全体を見通した計画を立てる能力、協調性など、社会に出て必要な力を身につけることができたと思います。また、この期間中に同じチームの仲間と共に一つの目標に向かって取り組んできたこと、周りのチームと切磋琢磨できたことは、なによりも大切な経験だったのではないかと思います。(内田くん)
・大変なことも多く色々なことに対してネガティブな感情を抱いてしまうこともありましたが、本当に貴重な体験ができました。普通の高校生活を送っているだけでは得られない経験、特に様々な視点から解決策を考える、という過程が将来の為になると思いました。(岸本さん)