灘高校(兵庫県) 会議監督
石川将くん(3年生:リアルの模擬国連の参加経験9回、フロントの経験1回
(2020年6月取材)
■今回の「Let’s Join MUN!初心者議場」を実施することになった経緯は
僕がLet’s MUN!(この会議を主催した団体です)を設立したのが、今年の4月でした。例年なら部活動として模擬国連に関わり始めるはずだった生徒たちが、コロナ禍による休校措置によって模擬国連に関われない事案が発生しており、大変もったいないと感じました。そこで、コロナ禍でも生徒たちが模擬国連に関われる手段は何かないかと模索した結果、このようなオンラインでの模擬国連開催に至りました。
特に、今回の会議は模擬国連初心者を対象としていました。模擬国連未経験の方々がどれだけ模擬国連に興味を持ってくれているのか、言い換えれば模擬国連という活動がどれほどの市場価値を持っているのか知りたいという部分もありました。
■今回のオンライン会議のルールを決めた手順は
今回の会議は、オンラインや初心者という制約を乗り越え、本物の会議の様子を味わって欲しいという思いから、初心者向けにルールを大幅に変更したということはありませんでした。
参考にしたのはグローバル・クラスルームさんが手がける全日(模擬国連全日本大会)のプロシージャですが、オンライン会議による目や体の疲労を考えて、モデ/アンモデの時間を少々短めにしたり、決議案を提出しやすいように、必要スポンサー数をやや少なめにする(※)などの工夫をしました。
※初心者会議ではWP(ワーキングペーパー)はスポンサー国1+4か国、DR(決議案)はスポンサー国1+4か国 など
■進行やルールを決めるにあたって、リアルの模擬国連と比較して残した点、思い切って変更・工夫した点は
[オンラインでも残した点]
前述の通り、オンラインであってもリアルの模擬国連の雰囲気を残したいということから、多くの部分をこの会議にも残しました。例えば、点呼を大使一人ひとり行なったり、プロジェクターを使用するのと同じように、スピーカーズリストやタイマーをスクリーン共有で表示したりするなど、なるべくリアルの会議に近い形式を採用しました。
[変更した点・工夫した点]
ビデオシステムの都合上、リアルの模擬国連のように点呼や動議の採択の際に実際に手を挙げるというのは不可能なように感じました。そのため、代替案としてZoomの挙手機能を使用することにしました。「Motion!」と叫ぶ模擬国連の名物(?)イベントは再現できなかったものの、投票の管理なども含めZoomの挙手機能の方が相応しかったと思います。
また、実際の会議ではアンモデに移行する際に、自然にグループが形成されていくものですが、オンライン会議ではそういうわけにもいきません。ということで、アンモデの前に5分間のモデを設け、グルーピングの方法と、それぞれの大使がどのグループに参加するかをあらかじめ決める時間を設定しました。
■事前準備で特に心配だったことは
一番心配だったのは、初心者が会議をうまく回してくれるかどうかでした。もちろん、参加された皆さんをみくびっているわけではないのですが、やはり「初めての会議だし、スピーチも緊張して誰も希望してくれなかったらどうしよう」とか、「アンモデでうまく議論できていなかったらどうしよう」だとか、様々な心配を抱えていました。
しかし、僕の予想をいい意味で裏切ってくれたのが、今回の会議の参加者の皆さんでした。スピーチも、全大使中3分の2以上が希望し、アンモデでも白熱した議論が展開されるなど、まさに経験者会議にも劣らないクオリティの会議が行われており、心配は杞憂に終わりました。
■準備にあたって、一番注意したこと、練習を重ねたことは
今回、僕は会議監督ということで議事進行、特にテクニカル全般を担当していました。オンライン模擬国連におけるテクニカルは、リアルの会議にはない役職です。今回の会議はオンライン会議アプリのZoomを使って行いましたが、投票機能の管理やアンモデ用のブレイクアウトルームの作成、ミュート/アンミュートの管理など、幅広い内容を管理しなくてはなりませんでした。本番の際に手間取って大使たちの議論できる時間を削ってしまわないよう、各種の行動をいかに早く、かつ正確に行うかを心がけ、テクニカル面での練習を積んでいました。
■当日の進行で心がけたことは
自分は会議監督ということで、議長提案や議事進行に間違いがあった際の訂正など、様々な議事信仰においても様々な役を担っていました。一番気をつけていたのは、初心者でも気持ちよく会議を行えるようにすることです。議長提案を積極的に提案したり、戸惑っている大使がいたらアドバイスしたり、大使の皆さんがスムーズに参加できるようにリードすることを大切にしていました。
■当日の進行で、一番大変だったことは
今回、Zoomの不手際で大使同士のチャットが使えないという問題が発生しました。オンライン会議におけるチャットは、リアルの会議におけるメモのようなもので、大使間のコミュニケーションを円滑にするために欠かせない機能です。それを会議中に使用することができず、また会議中に修正することができなかったのは致命的ではないにしろ、ミスだったと思います。結局は会議監督が中継するというアイデアで何とか乗り切りましたが、やはり大使の皆様には申し訳なかったです。
■オンライン会議にしてよかったと思うことは
オンライン会議の最大のメリットは、パソコン1台あれば日本の(なんなら世界の)どこからでも会議に参加できるということです。今回の会議では、北海道から九州まで、本当に全国各地から大使が集まってくれました。全日などの大規模な全国大会を除けば普段は味わうことができない、様々な地域から大使が集まるという状況を作り出せたのが良かったのかなと思います。
特に、普段模擬国連会議が行われるのが関東中心であり、他は関西や中部で少し会議が開かれているという高校模擬国連の現状を鑑みると、普段は模擬国連が開催されない地域からでもオンライン会議に参加できるというのは非常に大きな機会だったと自負しています。
また、オンライン会議の素晴らしい点はコストがかからないことです。実際に学校と言うバックボーンなしで会議を開催するとなると、会場費や印刷代など様々なコストがかかり、学生の身では開催が困難になってしまいます。オンラインの会議ではZoomさえあればそれ以外のコストは一切必要ありません。モチベーションと能力さえあれば誰でも模擬国連が開催できるというのもオンライン模擬国連の強みだと言えるでしょう。
■このオンライン会議を計画・実行した感想
会議終了後、参加者の皆様が「同年代でこんな会議を開けるのはすごい」だったり「自分の住んでいる地域では模擬国連が開かれないから、オンライン会議はとてもありがたい」だったり、様々なお褒めの言葉をいただきました。こういった言葉を聞くと、皆様のためにオンライン模擬国連を開催した甲斐があったなあと思います。