(2019年11月取材)
■担当国を希望した理由をお教えください。特に、今回の議題の「死刑モラトリアム」については、担当国のどのような点に注目されましたか。
公開されている情報が多いかつ、日本と同じ死刑存置国であり、意見の方向性がわかりやすく、議論しやすいと考えたからです。
■準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。
州レベルでの自治がとても高度で合衆国レベルの意見が少なく、各州の法律、立場を細かく調べることに苦労しました。(波多野くん)
政権によって死刑制度に対する意見が変化すること、現政権が死刑存置に対して積極的であったことを踏まえ、死刑の存置を行う理由や事情を詳しく調べ準備していました。(西村くん)
■大会当日は、どのようなことに気をつけながら会議に臨みましたか。特に、立場が異なる国と交渉する際に気をつけたことを教えてください。
大会当日は、日本や中国といった国々を中心に死刑存置国全体での決議案提出を目標にしていました。
立場の異なる国に対して、存置国側は自国の国益を最優先に行動するため、存置国同士の議論を重視していたので、他国との交渉は担当していません。(波多野くん)
他国との議論の際に落しどころを見つけること、議場全体の調和を重視していました。コンセンサスの難しい課題ではありましたが、反対の立場の国や、グループ同士で引き抜きのようなことを行っている立場のグループとの交渉の際は、あくまでも「議論のために参加しているのであって、敵対しているわけではない」という姿勢を見せるようにしていました。(西村くん)
■会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。
各国の国益を最優先としたため、それぞれの国の立場を考えながら決議案を作成した点です。存置国大使全員で決議案の草案を何回も読み直し、国益に反する点や追加したい点を共有して提出しました。(波多野くん)
互いに参加経験が少なく、議論の上で不明な点が多かったので、前日に会議の流れを復習したり、1日目が終わった後に明日の行動を再確認したりするなど、確実な会議行動ができるよう心掛けました。(西村くん)
■皆さん自身は、「死刑モラトリアム」についてどのような考えを持っていますか。また、それは今回の担当国の立場とどのような点が同じ(あるいは違う)でしたか。
自分自身は死刑モラトリアムについて明確な意見は持っていません。死刑というものは、囚人が命をもって償う刑罰と認識しています。死刑の不可逆性はほかのどの刑罰よりもはるかに高く、そのために死刑における冤罪は何があっても許されないと思っています。冤罪を回避するためには、刑事司法の改善、絶対的法定刑の減少が急務だと考えています。この考え方はアメリカの考え方と似ており、議場では議論しやすかったです。(波多野くん)
死刑モラトリアムはよい試みだと思っています。死刑を急に廃止することよりも、段階的に廃止に向かうというのは、国内世論の形成も楽ですし、行政的にも進めやすいことなのかなと思いました。アメリカ合衆国は存置の立場を示していますが、一部の州では段階的な死刑の廃止や執行方法についての議論が行われているので、そこについては同じだと考えています。
ただ、今回の会議を通して、死刑モラトリアムを導入していない国の中でも宗教上死刑を存置している国が、そこを覆すのがかなり難しい話だということを改めて理解させられました。(西村くん)
■最後に2日間の感想をお願いします。
いろいろな立場の方たちと積極的に議論ができ、自分の知見を増やすいい経験になりました。今後もこのような機会があるなら、ぜひとも参加したい。ところどころ反省すべき点が思い当たるので、次の会議では改善していきたいです。(波多野くん)
事前準備、当日含め大変なこともありましたが、とても楽しい2日間でした。バックグラウンドガイドを作成したり、当日の進行や議論の手助けや審査をしたりしている運営の方々はすごいなと、休憩時間やふとした時に感じていました。ありがとうございます。今回の会議での失敗や改善点を基に、次回の会議では、より自分たちの思い通りに楽しめるよう頑張りたいです。(西村くん)