2019さが総文

ミカン好きの大分県ならではの研究で、ミカンの酸度を簡単に測れるアプリを開発

【ポスター/化学】大分県立大分上野丘高校 化学部

(2019年7月取材)

左から 今川倭歌さん、刈屋夏明さん(2年)
左から 今川倭歌さん、刈屋夏明さん(2年)

■部員数 38人(うち1年生12人・2年生15人・3年生11人)

 

ミカンに含まれるクエン酸濃度測定の実用化

ミカンの味を決めるクエン酸の濃度の測定はとてもたいへん

 

大分県民の年間一人あたりのミカンの消費量は51個、全国2位を誇っています。このミカンの味は糖度と酸度のバランスで決まり、酸も重要な要素です。ミカンに含まれる酸はクエン酸で、このクエン酸濃度の管理のために、ミカンの成熟期である約半年間、定期的に水酸化ナトリウム溶液を用いた中和滴定で測定しなければならず、手間がかかっているのが現状です。そこで私たちは、現場でも簡単に測定できるよう、クエン酸測定に従来のRn法を適応させ、実用化を図ることを研究の目的に設定しました。

 

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私たちが開発してきた簡易測定法「Rn法」

Rn法とはこれまで私たちが開発してきた酸濃度の簡易測定法です。簡単に説明します。

 

塩基性酸化物を含むガラス繊維濾紙は、酸溶液と中和反応を起こします。指示薬を添加した酸溶液にガラス繊維濾紙をつけ展開させます。紫の層が、中和で生じた水の層です。

 

酸濃度が高いほど水の層Hは短くなります。Lに対するHの比をRnと定義すると、グラフのように酸濃度によってRnは変化します。Rnはこちらに示している関数で表せます。つまりこの分離比Rnから酸濃度が求められます。

 

今回私たちは、クエン酸濃度測定にRn法を適応させ実用化を図ることを目指しました。

 

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ミカンには、炭水化物などの不純物も含まれます。特に多量に含まれる糖の影響について調べると、糖の添加量にかかわらず、Rnは近い値を示し、Rn法は不純物の影響を受けずに、測定できることもわかりました。

 

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中和滴定法とRn法で酸濃度測定の精度を比較すると…

 

次に、中和滴定に対するRn法の測定精度について調べました。

 

分布図で示します。中和滴定で求めた酸濃度を理論値として、誤差をT分布という方法を用いて分析したところ、Rn法によるデータの平均値は理論値の平均分布の99.5%に収まりました。この値はT分布において2つの値がとても近いことを示しています。よってRn法は妥当なクエン酸濃度を算出できると言えます。

 

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写真画像の解析からクエン酸濃度を表示するアプリを作る

 

これをアプリとして使えるように実用化を図りました。

 

ガラス繊維濾紙の下端を原点として、鉛直方向に画像ピクセルからその座標と、RGB、光の三原色の値を抽出します。この関係をグラフに示します。二層の境界で、各値は急激に変化し、この2つの座標から、Rnを求めることができます。

 

さらにこの原理を応用したアプリを開発しました。こちらが私たちが開発したアプリ、「ろしよみ」です。起動したら、はじめに展開後の濾紙を撮影します。次に2つの色を認識させて、もう一度撮影します。中央にRGBの値を変換したHSVというものを用いた仮想バーが現れ、Rnと酸濃度の値が表示されます。

 

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今回構築したシステムはアプリとして機能し、現場で展開させたガラス繊維ろ紙の写真を撮るだけで、ミカンのクエン酸濃度を計測することができます。また、ミカン以外にも様々な分野の酸濃度測定に使える可能性も持っています。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

先輩方からの継続研究です。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

2014年秋からです。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

中和滴定と、Rn法での大量データ取りがたいへんでした。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

実際のアプリを見ていただきたいです!

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

先輩方の先行研究(酸濃度の簡易測定法)を参考にしました。

特許5947448号 大分上野丘高校

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

違うテーマの研究をします。ガラス繊維濾紙を使って、様々な溶液の濃度を測りたいです。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

実験やその準備、小学生を対象にした科学教室を行っています。

 

■総文祭に参加して

 

化学だけでなく、生物や物理、地学などの研究を見ることができ、知見を広げることができました。また、佐賀県の歴史や自然に触れられることができ、良い経験をなりました。

 

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